Green days 3





そうこうする内にあらかた雑草を取り終わった。次になにをするのか見ていたら、どうやら土の中の石を取るらしい。
水谷がスコップで庭の土を掘り返して、出てくる石をオレが取り除いた。
50cmくらいの深さを掘ると、びっくりするくらい石が出てきた。こんなごろごろの上に住んでいると思うと、ひどく不安定な気がして心なしか不安になった。

「暑い……」と水谷がスコップを持つ手を止めた。
まだ肌寒いのに土を耕していると暑くなるのか、水谷は着ていたチェックの長袖シャツを脱ぐと、ぽいっとそのあたりに投げた。

半袖のTシャツ姿を見てオレはちょっと身震いしてしまったけれど、水谷の額には汗が浮かんでいる。
落ちてくる汗をTシャツの肩で拭っていたので「タオル、持ってこようか?」と声をかけた。

「うん、ありがとー」
オレは立ち上がり、さっき水谷が脱ぎ捨てた長袖のシャツを拾った。それを縁側に置きタオルを取りに家の中に入った。

タオルを持って庭に戻ってみると、水谷はスコップを鍬に持ち替えていた。
水谷が鍬を持っているというのは、なんとも不思議な光景だ。様になっているような、不自然なような。

「オレ、くわって使うの生まれて初めてだよー」
けっこう重い、と水谷は苦笑いを浮かべた。

最初はオレが見ても頼りない手つきだったけれど、そのうちコツがつかめたのか力まず作業できるようになったみたいだ。
鍬は1本しかなかったので、オレは水谷が土を耕しているの側に立って見ていた。

「あのね、ここにね、トマトとピーマンとラディッシュとネギ植えるんだ〜」
「ふーん」と言ってはみたけど、オレはラディッシュがなんなのか思い出せなかった。聞いたことはある。でも思い出せない。とりあえず名前のちょっとかっこよさげな感じが水谷に似合いそうだと思った。

ラディッシュとネギは今から種を蒔いて、トマトとピーマンはもうちょっと暖かくなってから苗を植えるのだそうだ。

「ネギはね、栄口が好きだから選んだんだよ」
「え?オレ、ネギが好きなんて言ったっけ?」
「あれ?言ってなかったっけ? 」
「別に好きじゃないよ…?まぁ嫌いでもないけど…」

「えー。でも、いろいろいっぱいネギ入ってるじゃん」
「それは1回買うといっぱいあるから、なんとなく入れてるだけだよ」
「そうなの?なんだー。栄口がネギ好きだからいっぱい入ってるのかと思ってたー……でもなんか栄口ってネギみたいだよね」

「……は?なんで?」
「ん?なんとなく」
「なにそれ、オマケっぽいってこと?バカにしてんの?もう……」
「えーっ!バカにしてないよー!ねぎ超大事じゃん!あるとないとじゃ味の深さが違うでしょ!?」

水谷は必死な様子でそんなことを言っているけれど、今まで水谷がネギをそれほど重要と思っていたようには見えなかった。やっぱり、存在が地味なところが似てると感じていたに違いない。否定はしないけど失礼なやつだ。






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