L'affection devient bientot heureuse. 2







水谷はクリスマスとか、そういうイベントが大好きだ。とくに凝ったことをするわけではなくても数日前からそわそわしている。

朝は晴れているように見えたのに、時間がたつにつれてどんどん暗くなり、空の色では時間がわからなくなっていた。水谷の言ったとおり雪が近づいていているみたいだ。

買出しのために二人で夕方に家を出た。買出しと言っても食べ物だけなので近所のスーパーまで自転車で向かう。
プレゼントを選ばなくていいのは、正直すごく気が楽だ。

数日前に「今年はツリー買ったからプレゼントはなし」ということでお互い納得した。
オレはいっしょに暮らしはじめたらクリスマスは二人で祝うだけで十分な気がしていた。いわゆる同じ財布なのにそこから持ち出してプレゼントを贈りあうというのが奇妙な感じがするからだ。

来年からもプレゼントはなくてもいいと思うけれど、水谷はプレゼントするのもされるのも好きだからすねてしまうかもしれない。たぶん水谷にとってはお互いのことを考えながらプレゼントを選ぶという行為が大切なのであって、お金の出所だのそんなことは関係ないのだと思う。

オレはプレゼントなら今年のツリーみたいに二人のほしいものをいっしょに買うほうがいい。共有できるものの方がいい。
そんなのはロマンティックじゃない!と水谷は言うだろうか。想像するとその光景が目に浮かんで思わず笑ってしまう。
オレは水谷みたいに楽しそうなことをたくさん思いつくのは得意じゃないから、水谷のそういうところが羨ましくて、そして、好き。





一緒に買い物をするとき、カートを押すのはいつも水谷だ。
高校生のときから水谷はキャスターのついたものをごろごろ転がすのが好きだった。
その横を歩きながら、「なに食べたい?」「クリスマスだったらとりあえずチキンは買っとく?」みたいな話になった。

「だったらねぇ、オレは栄口の作ったから揚げのほうがいいな」
「えぇ?から揚げ…?」
「うん。栄口の作ったやつ」
「オレが作ったっても、あれはから揚げ粉の味じゃんか。誰が作ってもおんなじだよ」
「そうなの?んー…でも栄口のが一番おいしいよ」
と、当たり前のことみたいに言う。まるで「赤信号は止まれです」とでも言っているように。
そんなことをさらっと言ってしまう水谷が恥ずかしいけれど、内心ものすごく喜んでる自分のほうが恥ずかしい。

「ね、から揚げにしようよ〜」
「…それでいいんなら、いいけど」
「やったー」と水谷は嬉しそうに精肉コーナーに向かって行った。
オレは少し遅れてついていきながら、今にも飛び跳ねそうに歩く水谷の後姿を見ていた。
オレの作るから揚げなんて手抜き料理の代表みたいなのに。
水谷の価値観はいまだによくわからない。




買い物を終えて、外に出ると小さな雪がちらちらと降り始めていた。
「水谷の天気予報はよく当たるよね」
「そうかな」
買ったものは全部オレの自転車のカゴに入れた。水谷のにはもうひとつ重要なものを乗せなければならないからだ。

「あのお店のホールケーキが食べれるなんて…」
あのお店というのは、ここに引っ越してきてから水谷が近所で見つけたケーキ屋さんのことだ。こじんまりとした目立たない店なのだけれどケーキは美味しかった。とても水谷の好みの味らしくて、よく買ってきて食べている。
買ってくるのはタルトだったりシュークリームだったりミルフィーユだったりするのだけれど、今日は当然のように生クリームのデコレーションケーキ。もちろん水谷が予約してきた。

「大きいケーキ…幸せ…」と、さっきから自転車をこぎながらにへらっと笑っている。
ケーキだけでここまで幸せそうにしてくれるのなら安いものだ。
毎日買ってもいいんじゃないかと思えるくらいに。









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まだつづく……orz
どうでもいいこと書きすぎだ…




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