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雪沼

雪沼とその周辺/堀江敏幸

読書は、心のゆとりを実感する為の生活動作です。だから、無理せずゆっくり読むのが好きです。

さて、もののはずみより気になったので購入した一冊。
架空の過疎地、山あいの雪沼で慎ましく生活を送る職業人達の連作。
小川洋子に似たノスタルジーを醸し出し、リアリティある描写で登場人物の半生、交流した記憶の流れが丁寧に描かれています。
作者が文学者という事もあり、言葉の綴りにこだわった箇所や古い道具に対する確かな知識が見受けられます。
寂れてしまった故に活力が失ったかのように見える人物達の心を灯す光と過去に落とした影、一つ一つの細かい所作、人物の短所も長所もひっくるめて、綺麗に愛ある文体にとても心打たれました。
大切にしたい一冊。
この作者さんの感性、大好きです。

ドクトル

ドクトル・ビュルゲルの運命/カロッサ
日記形式で進んでいく死期の近い結核患者に献身的に尽くす老医者の話。
…なんとも感想を述べるのが難しい一冊です。
二十世紀の若きウェルテルの悩みと対照されている著書。恋情中心のそれよりかは、幾分読みやすく。ビュルゲル自身の良心の呵責。愛する人、死を待つだけの患者に対する慰めには、心打たれるものがありました。
キリスト教国の著書で多く見られる、「癒やしの奇跡」に対する羨望も作者の人間賛美も鮮明に表してありました。

とは言っても、やはり古書で買った醍醐味の古い文体を読むのが難儀ながらも楽しかったです。

trip

ようやく、身体が空いたので1日色んな所を闊歩しました。

薬院でいくつかアンティーク屋さんを巡り、紺屋町を闊歩していると、入江書店の古書が目に入ったのでぶらり。
ジュリアン・グリーン/運命(モイラ)の初版とドクトル・ビュルゲルの運命/カロッサ…どちらも初期の新潮文庫本を入手。
お店によっては、お洒落で古い読めもしない洋書を手に取る事もあるのですが…やはり、本屋で巡り逢えた事もあり、内容も文章深く掘り下げて読み込めそうです。
…翻訳本は、不思議と昔の物が読みやすいです。
それから、(当初の目的だった)今月で定年退職される方へのプレゼント探しに。敬老の日とずらりと並ぶギフトセットや棚にあるお勧めの商品を順繰りに悩みながら睨みつけ、思いを馳せながら、ようやく純日本製の品々をこさえる事が出来ました。
それに、+αあるのですが…ひとまず、喜んで下さると嬉しいです!
そんなこんなで、空腹と共に帰宅。
なんとも充実した1日でした。

民王

ストレス発散は読書で。
民王/池井戸潤
首相・武藤泰山(遠藤憲一)とその息子・翔(菅田将暉)でドラマ放映中の原作本になります。
半沢直樹やルーズヴェルト・ゲームから硬派なイメージでしたが、文体はそんな事なく、民王は入れ替わり活劇&喜劇要素が強くてスラスラ読めました。
巻末の解説が一部始終網羅してあり語る所ないですが…、お色気騒動でマスコミに取り立たされたり、支持率に右往左往する諷刺はクスリと笑って読みました。
また、泰山自身が根から悪い奴ではないので息子の就活に奮闘したり、面接官に真偽を問い、それから変わっていく部分は、痛快です。
そして、公安が入ったり、対立政党やキャンパスの人間と様々な人物が入り組んで来る展開の中で、政治家云々関係なく人としてどうあるかが一本筋に描写されていて、最後は綺麗にまとまり、ハマってしまいました。
ドラマと設定が少し変わるので、そちらもどうフィニッシュするのか楽しんで見たいと思います。

「早う死にたか」

スクラップ・アンド・ビルド/羽田圭介
アウト・デラックスでの原作者登場より気になっていた今作。
あらすじ
「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗はある計画を思いつく。
日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。閉塞感の中に可笑しみ漂う新しい家族小説の誕生!

本当に、商売文句通り、面白可笑しくて一気読みしました。
介護を生業にしていてる為か、登場する祖父の口振りが勝手にありありと再生されました。姿形や言動もなんだか目に浮かびます。
…読む所違うかもしれませんが、祖父が認知症なのかそうじゃないのか、また語る過去は真実なのか嘘なのか、そこを考えて読むとミステリー?な感じになります。
主人公は、著者自身じゃないかと思う位、とっても合理的な生活を途中からし始めて、性根が腐らないように衰退しないように男性ならではの方法で頑張る部分が、意図して文章にメリハリがあって良かったです。
更に、「家族の介護」で辛辣な態度になるのは、やっぱり近親者なんだよな〜と主人公の母親、祖父の娘の描写で、かなり痛感しました。
これは、上手いと読書しながら何度も唸り。かなり取材したのではないか、町内のどこかにこんな家庭があるのではないかと思わせる「とても現実的な」小説です。

早く読まなかった事に後悔。続編希望な一冊です。
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