気紛れ子猫の戯れ

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「夢、じゃないかって思ってない?」

こましゃくれた少年の言い方一つ一つに、ヒクヒクと反応するセツナのこめかみに浮き出た青白い血管。

その反応をまるで楽しむように少年は煽り立ててきた。

「思ってない!でも、今はそういうことにしておきたい気分なの!」

「ふ〜ん。何それ?」

時折、少年の頭上辺りで上下運動をする非常識な耳の動きがやたらと不謹慎に思えてならなかった。

こいつ!馬鹿にしてるのか?
どう見ても自分より一回りは年下であろう、所謂、お子様にマジ切れそうになっている自分に、イラつくセツナはこれ見よがしの少年の言葉にこの後絶句した。

「あんたには悪いけど、今起こってるのは夢じゃなく現実。そして、喜ばしいことに、此処は夢の世界なんだけど?
どう?安心した??
…それと、自己紹介がまだだったな。俺の名前は『ナイン』
この世界の9番目の番人だ。まあ〜、ざっと500年はこの仕事をやってるんだけど、仲間うちじゃ俺が一番の若造だから、今回の仕事を命じられてやってきたってわけさ」

『宜しく』
そう差し出された手に愛想よく応えられるほどセツナは冷静ではなかった。

「ご、ごひゃくねん〜!?」

それが、精一杯の答えだった。


美佐
2007/10/25 Thu 13:20


それにしても。

セツナはまだ回転しない頭の中で必死に状況を探る。

これは夢、なのだろうか?

尋常ではない目覚めの元、まず浮かぶのはそんな疑問。

どうせ夢ならば、こんなクソ生意気なお子様ではなくて、もっと大人で素敵な男性に優しく起こしてもらいたい。

などとくだらない事を考える頃にはだいぶ脳が働きだしてきたようで、これが夢などではない事にも気付いてはいたのだが、セツナは敢えて夢であると思い込もうとしていた。
だって、ありえない。

目の前にあるのは見間違えるはずもない、いつも通りの自分の部屋で、そこにいるのはいるはずのない少年。

柔らかそうな栗毛はまだ理解出来るが、ぱっちり開く瞳は銀色。

その上耳は。

「何これっ!ナマモノ?」

思わず無遠慮に、普通よりは長いぴんと立った耳介に手を延ばしてしまう。

だが、途端に少年はセツナの手をピシャリとたたき落とした。

「何をしてるんだっ!あんた痴女か!?」

…張り倒してやりたい。

今の異常な状況も、さっき少年が話していた内容も、何もかもが飛んでいって、今セツナの頭にあるのは生意気な小僧への制裁方法だけだった。

亜香里
2007/10/16 Tue 12:46


《プロローグ》

けたたましい目覚まし時計が鳴り響く。
朝の静寂な装いも台無しにひと頻り鳴り渡ると、諦めたかの様に騒々しい機械音が口を閉ざし、再び、辺りに静けさが戻っていく。

「こらっ!起きろ!悠長に寝てる場合じゃないんだぞ!」

取り戻し損ねた静けさは甲高い少年の声によって二度と戻らぬものとなっていった。

「な、何?何事?」

寝呆けた儘、飛び起きたセツナはこれ以上無いほどに目を見開き、目の前の少年に思わず尋ねると言った非常な行動を取ってしまう。
でなければ、一人暮らしのセツナの部屋に自分以外の気配があること自体、そもそも問題視しなければいけないのだから。

「寝呆けてんじゃねぇよ!あんたの世界に俺たちの世界が繋がっちまったんだ!」

「はぁ?」

突然世界単位の話に、寝呆けた頭のセツナは困惑するどころか、受け入れる隙間もなかった。

「とにかく一緒に来てくれ!原因を突き止めないとあんただって困んだろ!」

まるで機関銃のようにまくしたてる少年の細い腕が、有無を言わさず強引に腕を引く。

その行動の一部始終に、寝呆けていたセツナが唯一悟った。

こいつ、年上に対する口の聞き方を知らないらしいな。

美佐
2007/10/9 Tue 13:04

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