亡父が危篤状態にあったとき、長男の立会いのもとで主治医たちが危急時遺言を作成しました。ところが、亡父は奇跡的に回復し、すっかり意識を取り戻したのです。
危篤状態での遺言状
弁護士: 病院内で遺言がつくられたわけですね?
相談人: はい。父が遺言内容を話し、それを主治医が書き取って、居合わせた看護師2人が署名押印をしたというのです。
弁護士: それは、民法976条にある危急時遺言がつくられたわけです。
相談人: ええ、そういう説明を後で聞きました。
弁護士: その遺言内容に不満があるわけですね。
相談人: ええ、ひどいんです。長男が不動産を全部もらうことになっています。
弁護士: なるほど。それでお父様は、やがて亡くなられたのでしょうか?
相談人: いえ。いったん見事に回復しました。まさに奇跡が起こったのです。そのとき改めて遺言書をつくり直せばよかったのですが…。
弁護士: そのまま亡くなられたのですね?
相談人: はい。すごく元気になりましたので、つい言いそびれているうちに突然亡くなってしまいました。
弁護士: 亡くなられたのは、先ほどの遺言書ができてから、どれほどたっていたのですか?
相談人: 1年以上たっていました。半年たってまだ生きていたら特別な遺言は無効になるって聞きましたが、どうなんですか?
弁護士: 民法983条によって、普通の方式で遺言できるようになって6ヶ月生存していると、失効することになっています。
相談人: 途中で正常な意識を回復したことは主治医も認めています。
弁護士: 6ヶ月以上たってしまえば、その間ずっと正常な状態が継続することを要しないという判決が最近でています。
相談人: そうですよね。特別な状況でつくられた遺言が、いつまでも有効だというのは 私にはとても納得できません。
弁護士: お父様の遺言は無効になる可能性は十分にあると思いますよ。
相談人: はい。ありがとうございました。