「ちくしょう、俺をこんな風に産んだのはてめえだろうが!」
などとショッキングな前置き。
壁井ユカコさんの作品、「カスタムチャイルド-罪と罰-」を読んだのでこれまた感想をつらつらと。
これと同じ世界観で書かれた「カスタムチャイルド」(壁井さん曰く「無印」)も読了済みだったので、ゲスト的に出演する無印キャラクターににやにやしつつ読み進めました。とは言っても続刊というわけではないので単体でも十分読めるはずです。
簡単にあらすじを紹介すると、遺伝子操作で産まれてくる前の赤ちゃんの形質が設定できるようになった仮想現代のお話。金髪碧眼の日本人は当たり前。そういう世界で、遺伝子操作の結果が思い通りでなかったと実親に放棄されて育った男の子と、遺伝子操作せずに産まれて育った男の子と、遺伝子操作通りに産まれ親の奴隷と化している女の子が、すったもんだ絡み合いながら歪んだ青春を過ごすストーリー。
キャラクターの内面がすごくよく伝わってきます。しかもエグイ。ストーリー展開も容赦がないです。
で、ちょっと感想書いていたら以下ネタバレちっくになってしまったので、ぼかしてはありますが嫌な方はバックプリーズ。お付き合い頂けるなら追記よりどうぞ。
冒頭の部分を忘れたごろになって舞い戻りやがって、ここでこれがきてしまうのか、と凹まされました。いや、悪い意味ではなくて、この、結局、歪んだ人間はそれを捨てきれないんだよなあという絶望が容赦なく降ってきました。
元々この作家さんのファンだからというのもあるとは思うんですが、やっぱり文体がものすごく好みです。あと心理描写。この、薄暗い考え方しかできなくって、どうしてもそこから逃れられないタイプの人間の鬱屈が嫌ってほど伝わってきます。
純な考えをできる人間と、したくてもできない人間の対比が凄い。
あと、こういう対比は何かと純が良いだのそれは偽善だのという話になりがちですが、この話はそういう二元論ではなくただ両者の魅力についてのみにとどめている気がしました。もちろん純であることは良いことだと思うのですが、それだからといって純でいられない人間を無理やり引きずりだすのではなくて、ふきだまらせるまんまにしておく、というのがすごく気にいりました。
だって純になりたくともできないんだもの。どうしようもない。
とはいっても、作中には諦め悪い人間がいるのでその後どうなるかはわかりませんが。この諦め悪いってのも良いキーワード。抗うだけ抗って、さんざん頑張っておいて、できない部分を強調させるこの感じがたまらないです。これこそ鬱展開たる所以でもありますけども。
壁井ユカコさんの作品に、結構な頻度で出てくる「面倒くさい女の子」と「どうしようもない男の子」の鬱々とした関係が実はかなり好きです。はい。もちろんキャラクターによってどう面倒くさくてどうやりようがないのかは変わってきますが、はい、かなり好きです。 大事なことなので2回言っています。
まあとにかく、まとまりありませんが、以上のようなことを思いました。
いやあホントあの方の文体好きだわ。
色々と考えさせられつつ、つい一気読みしてしまった良作でした。