ずるずると伸びた川に沿って歩いておりますと私以外の者が足元の砂利を踏む音が致しましたので目をふいとやりまして、そこにはお坊様がしゃがみこんでおりまして、何やら川の中へ手を差し込み口を動かしていらっしゃる。何をなさっていらっしゃるのかと私が足をそちらへ向けますとお坊様も私に気づいたようで俯きがちの頭を持ち上げまして、なんとまあその口には生きたままの魚がはみ出てびちびちと身体を波立たせていた。私は何と申して良いのやらただぽつりと独り言のように、
「お坊様は殺生をなさってはならぬのではございませぬか。」と申し上げた。

するとお坊様がその小さくも無い魚を丸呑みして大きなげっぷをしたのちにようやく、
「これは天命である。」とおっしゃった。続けて、
「この魚は喰われて死ぬ天命であったので、我が喰らうてやった。」
とおっしゃったきり沈黙するのだから私もどうにも居心地が悪い。

「さすれば私の天命もおわかりになられますか。」
かろうじて場を繋ぐ質問をしたもののお坊様は私を眺めることも無く、
「我に他者の天命なぞわかるはずも無し。さらば。」とのたまって砂利を踏みしめあちらへと行ってしまわれた。
残された私は一人、あの魚より遅くここを訪れたことに感謝致しました。よいよい。