フリーゲーム「ビューティフル・コックローチ」感想

「どこまで逃げても追ってくる、あなたが振り向かない限り」
やめられない止まらない前置き。



えー、今回はさんところのフリーゲーム「ビューティフル・コックローチ」の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。

個人的に公式サイトの紹介文がものすごく秀逸だと思うので、引用させて頂きますが……

「どん底から這い上がりRPG」
「7割方、下ネタとアクの強いキャラクターで出来ています。」

いやあ、まさにこの通り。でもバカゲーではないんです。この作品の真の魅力は、エンディングまで物語を見届けてこそ伝わると言っても過言ではありません。


ぐだぐだ書き連ねるのも何なので、ある程度項目分けしてこの魅力について語っていくとしましょう。




・とにかく濃くて濃くて濃いキャラクター

主人公:アル中 
相棒:下ネタイケメン
楽しい仲間達:スケベ爺、娼婦、失脚官僚、金好きショタ、その他たくさん。

もうこうやって書いただけでヤバイ人達がそろい踏みなのがよくよくわかります。いやーでも悔しいことに、良いキャラしてるんですよねぇこれが!
不良が河原で猫を拾うと二割増しで素敵に見える法則がありますが、終盤はまさにこれに似た現象が起こりまくります。けれど、この法則に甘えるわけではありません。忘れず下ネタを持ってきて見直しかけたところをもう一度蹴落としておくのも流石の構成です。

全く仕方ない奴らだなあ、でも憎めないんだよなあ。あるいは、私と似ててやんなっちゃうなあ、でもわかっちゃうんだよなあ。みたいに感じることもしばしばでした。
それぞれのキャラクターの大事なものやテーマが最後まで一貫しているのも気持ち良かったです。




・意外にも王道で緻密なストーリー

さて、アウトロー系の個性豊かなキャラクターが集まったのなら、話もドカンと暴れまくる話になりそうなものですが……濃いキャラや熱い下ネタに反して、ストーリーはとても王道です。
勇者が世界を救いに行く。言ってしまえばたったこれだけのこと。
けれども、この王道展開のストーリーに濃いキャラ達が絡み合うことで、他では決して見られないオリジナリティの高いドラマが楽しめるのです。ろくでなしだからこそぶつかる多くの挫折、数多の後悔、そしてそれらを時に茶化して軽く思わせてくれる下ネタの数々――。
馬鹿馬鹿しいと一笑に付すのは簡単ですが、そこを突き詰めて、笑いながらも問題に向き合っていく真摯さが感じられる一作です。

また、キャラクターがたくさん出てきて混乱しかけたところにレブロッカvsチンドラーの説明を加えたり、勢力に疑問が出てきたところで世界地図を見るギミックを入れたりと、世界情勢の説明を入れるタイミングがとても上手だと感じました。
出てくるキャラクターはかなり多く、途中までは群像劇の様相を成していますが、それがどんどんミケーレという主人公に集まって最終的に一本筋になるのも素敵です。





・容赦なく叩きこまれる下ネタ

忘れちゃいけないのは下ネタの存在ですね!!
真面目な方向に行きかけたところで、ここがチャンスと言わんばかりにすかさず飛んでくる下ネタにはもはや笑いを通り越して拍手したくなります。街の人との会話も遠慮なくそっち系ばかり、というかほとんどの街に娼館がある時点でお察しです。個人的には初めの街の、会話後に超ダッシュするお姉さんとの話が好き。

ただ、まあこれはクリアしたから思うのかもしれませんが、この作品の下ネタはほとんどが茶化しのために盛り込まれている気もします。暗い話を落ち込みすぎないように、自己嫌悪に塗れた主人公を突っ込みで動かすために、真剣な話が嘘くさくならないように――考えれば効果は色々ありますが、とにかく何か凄まじい計算によって下ネタが組み込まれているように思えます。
……なんて、そんなことを実際に言うと作中の彼らは嬉々としておバカな下ネタを連発してくることと思いますがw





・ツクールならではの演出と意外なミニゲーム

ファンタジーならではの魔法シーンなどはツクールのドットを使って上手に演出してくれていて、ダンジョンの仕掛けやお城の間取りの広さなどでもしっかりと世界観が表されています。
後述するバトル面に難点があってもやっぱりツクール製で正解だと感じるのは、こういうところからなんですよねぇ。言葉で語り過ぎない、ドットでの演出が見ていて楽しいんです。
監視を逃れるミニゲームやパズルなどもなかなかの手ごたえでした。特にミケーレの床色合わせのところが好き。一方でアクション能力を要求されるミニゲームもあって、アクション苦手な自分には辛いところもありました……。ピンクの獅子が憎らしいです。
とはいっても、やっぱり全体的にストーリーにあった仕掛けが多くて物語としても楽しめましたし、詰みそうなところでは作者様の攻略ページを大いに活用させて頂いたので、なんだかんだと面白かったです。




さて、最後にちょっと惜しかった面にも触れますが……


・高難易度のバトルとリターンの低いレベル上げ

アドベンチャー面が中心と思いきや、とあるダンジョンからバトルの難易度が跳ねあがります。
パーティメンバーは大抵低レベル+高レベルの編成になっていて、その高レベル1人に合わせた敵の強さになっていることがほとんどなので、レベル上げは必須です。
まあ、レベリング自体は良いんですが……ラスボス戦では固定メンバー4人なのに対して、それとは別に中ボスを倒すためにある程度レベル上げをしないといけないメンバーが6人いるというのがどうにも。もちろん、中ボスまでと割り切ってさくさく作業すれば良い話ではあるのですが、手間とリターンが合わない感じはしました。

きっぱりバトルの難易度を下げる、または道中の固定メンバー戦を省略することが出来てさえいれば、ストーリー面のみならずRPGとしても大絶賛できたんだけどなあと、少し惜しく感じます。

ただ、呼術の設定や、酒切れという独特のステータス異常、そして何よりそれらを使ったストーリー上での演出には目を見張るものがあるので、やはりツクール製の良さを生かしている作品であるとは思います。






とまあ、こんな感じで。
バトルに難あり、メインキャラも人を選ぶ輩ばっかり、けれども全体としてはかなり良質で、合う人にはもう忘れられないくらいしっくりくるであろう一作でした。ストーリー重視の方や、公式サイトを見て少しでもピンときた方なら、試しにDLしてみることをオススメします。

私がうだうだ書かずとも、タイトルが全てを表してくれている気もします。素直な奇跡は信じにくい、青臭い展開も嫌いじゃないけど気恥しい、そんなひねくれた私にぴったりで、とても楽しめた一作でした。




追記では遠慮なくネタバレ感想です。









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フリーゲーム「X5 しあわせ粗製濫造装置」「sad but mad」感想

「突っ込めば世界は救われる」
どこに突っ込むかが問題な前置き。



えー、今回は、ロメゾン(naught.ari-jigoku.com)さんところのフリーゲーム「X5 しあわせ粗製濫造装置」(naught.ari-jigoku.com)と「sad but mad」(naught.ari-jigoku.com)の感想をつらつら書きますね。一部レビューっぽいかも。






『X5 しあわせ粗製濫造装置』

タイトルからしてパンチの効いたこの一作、巷でタイトルだけ目にして気になってはいたのですが、このたびようやくプレイすることができました。もちろんタイトルのみならず、キャラクターも展開もなかなかにアクが強いです。

ツクール製ではありますが、ジャンルとしてはADV。……でいいのかな。基本的にはテキストを読みつつ、時々ミニゲームを楽しみつつで進んでいきます。群像劇でSFな人生録といった感じ。というわけでさっそく魅力的な点をば。




・生き生き動くキャラクター

キャラクターがとにかくリアルです。個性付けもとんでもないです。売れない芸人、ハイジャック犯、殺人鬼、暴言娘などなど。話が進むにつれてどんどん暴走し激昂し思い悩み突き進むキャラクター達にこちらも身につまされる想いがしてしまいます。
やっぱり何と言ってもイタガキの存在が大きい。かつて全裸をここまで感動的にした男がいただろうか。寒いギャグをばんばん飛ばし、無神経に人を巻き込んでと、序盤はそれこそ「なんだこいつは」と引いていたのですが……彼の良さは後半で輝いてきます。一貫した動きは気持ち良いものです。ボケ役の彼の最高な突っ込みにはたまらなくなりました。本当、救われた想いです。

群像劇なストーリーなので、登場人物もけっこう多いです。でも困ることはありません。皆が皆濃いキャラをしているので、「この人誰だっけ」となることはまずないです。全員に見せ場のシーンがあるのも良いですねぇ。
皆が輝いていたのでキャラクター全員好きなんですが、萌えたのは不憫な方の刑事さんです。信仰系のキャラ本当萌えます。




・絶望と笑いと再生の物語

↑は公式サイトより引用。
ざっくり書くと旧型の宇宙船に乗りこんだ駄目人間たちがやけくそになりつつダストボックスを出入りする話です。どうですとんでもないでしょうこのアングラ感。

だからこそ終盤の展開は予想外でした。詳しく書きすぎるとよくないので是非プレイしてみてほしいのですが……とりあえず、あの勢いを上手いこと収束させたのはすごいです。どのキャラも魂の底から叫び、どうせ報われないんだと拗ねながら、それでも目の前にある希望を掴みたくなる――ちょっと抽象的な書き方をしてしまっていますが。とにかく、辛く、馬鹿馬鹿しく、清々しい一作です。
結局根本の問題は解決していないんだけど、だからこそ現実的にありそうな、信じられる救いの話だったなーと思います。




・手に汗にぎるミニゲーム

ストーリーを追うだけと油断しているとあっさりやられます。
アクション要素多めだったので、なかなかクリアできないこともしばしば。でも、ミニゲームを諦める選択肢もあるのでアクション苦手な方も安心です。私は馬に負けました……。
定番の追いかけっこものから、透明人間になったりタイミング重視だったり、ミニゲームの幅が広くて面白かったです。何より、ストーリーに合った流れで出てくるのが良い。双子のところは演出も相まって良い意味でぞくぞくっとしました。ついセーブデータ取って置いてます。



・さりげなく面白い演出

ストーリーが良いと言ってはいますが、それでもノベルゲーとしてでなくツクールゲーらしい作品だと思います。というのも、視覚的な演出が多くて見飽きないというのが理由です。
美麗な一枚絵がどどーん、とかいう方向性ではなくて。
さりげないところにSFらしさを出すオブジェクトがあるんですよね。トイレとか。で、調べるとそれに気づけるという。ステータス画面の状態がちょくちょく変わるのも細かくて好きです。
死神ゲームのシーンでがっつり心を掴まれました。





続いて『sad but mad』について。

X5の後日談、1時間かからないくらいの短編ものです。フレイザーや刑事組が中心なので、前作をやって彼らを気に行った方はやってみると良いかと。
ウィンドウの色変えは雰囲気が出てすごく良いんですが、真っ赤なのはちょっと目につらかったかな……。
バトルシーンの『自殺』コマンドが印象的でした。まあ、選択するよね。
最後の呼びかけがミスターだったのは、ああいう形で彼が解放されたからだと解釈したんですが……どうなんでしょうね?他の方の考えも気になるところです。






とまあ、こんな感じで。
キャラクターやストーリー重視の方、アクの強い作品をお求めの方にオススメします。

フリーゲーム「コモンセンス」「アンバランス」感想

「人にも自分にも期待できない時がある」
やさぐれてるとさらに気を逃していく前置き。



えー、今回は三尺寝(sanjyakune.ninja-web.net)さんところのフリーゲーム「コモンセンス」「アンバランス」の感想をつらつら書きますね。
二作一気にプレイしましたが相互の関係性はありません。
どちらも30分かからない短編ノベルゲー。ダウナーというか、鬱展開ではないんだけど、良い感じにけだるい雰囲気です。




まずは、「コモンセンス」(www.vector.co.jp)から。

ついうっかり飛び降りてみたくなる。いやしないけどね。あのちょっと引いてある椅子の背景が好きです。
立ち絵の種類があって、しかも表情がけっこう変わるっていうのが豊富だなあと。
虚しいと言うか切ないと言うか。暗黙の一体感みたいなものと会話が好きです。読み終わった後もなんだか余韻を噛み締めたくて、サウンドルームを楽しみました。



続いて「アンバランス」(www.vector.co.jp)。

なんというか、やけ酒した後にやりたい感じのゲームでした。わりと自分は「俺」側の人間だったりするので、自己嫌悪だったりやるせなかったり。
システム面では、起動画面無しに始まって、ぶっつりと終わるのが新鮮でした。



どちらのゲームもなんというかこう、説明とか感想とかおいといて、「考えるな感じろ」系のゲームではあります。けど、世界観がすごくて、没入して頭に麻薬をぶちこまれているみたいでした。

フリーゲーム「落日」「雨」「燈火」「小夜曲」「Taupe」感想

「もの悲しさは慰めに繋がってくれるのです」
そう嫌わないであげてほしい前置き。



えー、今回は、Lapree(lapree.dou-jin.com)さんところのフリーゲームをいくつか取り上げて、感想をつらつら書こうと思います。
取り上げるのは、「落日」「雨」「燈火」「小夜曲」「Taupe」です。どれも関連性はなく、単品で楽しめます。また、それぞれ30分もかからない短編の恋愛ノベルゲームです。




・落日

国と愛する人、どっちを選ぶかの話。初めはキャラや国々が多数出てきて、慣れていないせいか戸惑いましたが、最終的にはわかりやすくまとまっている印象でした。
立ち絵が可愛いのも魅力です。そして、どの展開も大団円とはいかず、必ず何かを失わなければいけません。この具合が切なく、もっと言うと鬱展開で、非常に好みです。
狂王のエンドがお気に入りでした。



・雨

タイトル通り、ほの暗くメランコリーな話。
キャラの設定が色々と唐突だった感じではありましたが、雰囲気は良いです。
友達との会話のシーンがかなり心にぐさっときました。本当、ぎこちない空気の時って、お互いいくじなしで嫌になっちゃいますね。



・燈火

異端の娘が軟禁から一歩踏み出す話。ヒロインこと蛍火の心情が痛いほど伝わってくるので、感情移入もしやすかったです。
一緒にいてエンドが好きです。後悔しつつ二人でいるっていうのが、切ないながらも萌えるんです。とはいえもう一方のエンドも、美しい展開でした。蛍火の表情が増えていくのがまた、ぐっときます。
色々と設定があったのですが、短編だったためなぞる程度に収められてしまったのがもったいないかなと思いはしました。公式のブログを拝見したところ、設定もしっかり練られているようで、これは続編に期待せざるをえませんね。




・小夜曲

女学生の悩みの話。
前3作と比べるとこれが一番ハッピーな展開、のはずなのですが。泣いてしまいました。共感できるエピソードが多々あるせいですかね。親にはちょっと冷たい態度を取ってしまうとか、友人の会話に入れない微妙な空気とか。主人公もその友達も、互いに悪いところがあるのもまた、やるせない感じでした。女学生あるあるってやつですね。
私も愛音みたいに、例えやつ当たりちっくでも本音をぶつけていれば、友人関係が違っていたのかなあなんて。大学生の視点があるのもまた、共感でした。果たしてこうフリゲーにふける私はどう見られているのやら。
主人公の今後をこちらの想像に任せてくれているのも個人的にはちょうど良い具合だと思いました。あれで、何もかも上手く行きましたとなると、それはそれでちょっと都合が良いなあなんて考えてしまうややこしい人間なので……。どう転ぶかわからないくらいが好きです。




・Taupe

吸血鬼と死にかけ少女の話。
トゥルーエンドっぽいルートだとちょっと色んな面で心変りが急すぎてついていけなかったかな……。展開は鬱で好きですが。最短ルートの殺戮エンドのあっけなさがツボでした。あの墓にはああいう形で終わった子達もいるんだろうなあ。




とまあ、こんな感じで。
どれもさくっとプレイできるので、ちょっとでも気になった作品があれば、DLをオススメします。心にじんわりと残る作品が多いと思います。




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・「Cordis」(mblg.tv
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