腕を上げてみる。
届かない。
腕を伸ばしてみる。
届かない。
指の先まで伸ばしてみる。
届かない。
上半身を少し倒してみる。
届かない。
何かに掴まりギリギリまで伸ばしてみる。
届かない。
手が滑った。
バランスを崩した。
転んでしまうと思った。
ケガをしてしまうと目を瞑った。
その瞬間、手に確かな感触。
引っ張られたと思えば暖かさに包まれた。
目を開けば君が目の前にいて
背後で何かが倒れる音。
その音に少し眉をひそめるが
それでも欲しいものが手に入った。
「手を伸ばすより、一歩踏み出したほうが早いみたいだね」
そう言って君が笑った。