●静観塾?/一日目・4

  「健康の回復には精神的な働きが大きく作用しているんですが、その辺りのことについて、京君はどんな風に捉えていますか?」
  こう私が訊ねると、京君は、
「先ほど少しお話しましたホリスティック医学の勉強会で教えて頂いたんですが、物事をネガティブに考える人は免疫力が落ちて、ポジティブに考える人は免疫力が上がるんだそうで、お医者さんや鍼医者3に診て貰うと同時に、自分で食事や運動に気をつけている人でも、この精神的な作用が効果の有無に影響を与えるということでした。」
と応えた。
  「マイナス思考じゃ病気も良くならないってことですね?」
と、香奈が京に向かって丸い目を向けた。
  「だと言うことですよ。」
  京が私を向いて何か付け加えてほしそうに助けを求めるような顔をした。
  「ポジティブとかネガティブとか、或いは、プラス思考とかマイナス思考とかという言い方をしても良いんですが、少し視点を変えると、心の動揺が激しい人やストレスを抱え込んでいる人は健康を損ないやすく、病気も治りづらいんだと思うんですよね」
と私は言った。
  「それはよくわかります。
  でも、それって性格的な問題じゃないんでしょうか?」
  香奈は良い点を突いてきた。
  その点を解決しないと健康に対する心の作用の問題は解決しないのだ。
  「気功は、それを克服する手立てを持っているんですよね?」
  今度は京が私に答えを求めてきた。
  私は考えながら口を開いた。
  「例えば、他人からイヤなことを言われたとか、何かイヤなことがあったとかという場合、それは精神的なストレスを与える条件ではあってもストレスそのものではありませんよね?」

  香奈が頭に「?マーク」を浮かべて首を傾げた。
  「そんな条件にぶつかった時に、あれこれと思い悩んでしまった時、それが精神的なストレスになってくるんです。」
  私が言うと、香奈も京も納得したように頷いた。
  「その精神的な動揺が免疫力を下げるんですね?」
と、香奈が言った。
  「免疫力を下げるだけでなく、呼吸を荒くし、心拍数を上げ、血圧や血糖値も上げてしまうんですよ。」
  「すると、生活習慣病と言われるものも、生活リズムや運動不足、糖や塩分、油物の取り過ぎなどという以外に、心の動揺というのも関係しているんですね。」
  香奈が言うと、
「そうかぁ、だからホリスティック医学では「『心』の状態も重視しているんだ!」
と、京は叫び、続いて言った。
  「その心の動揺を如何に静めるか、それが大切で、気功にはそれを可能にする技があるんですよね。」
  私は語り始めた。