【腕の中で気が動く感覚】

  気のボールを作る取り組みは、言わば、脳波をα波にし、自律神経を副交感神経優位に導く為の訓練であり、邪気を洗い流すとか気を補うとか、丹田の気を強くするとかと言った気功の本来の取り組みではなく、そのための準備に過ぎない。
  数回の拉気で気のボールが作れるようになっていた僕の次の課題は「腕の中で気を巡らせる練習(腕での貫気法)になっていた。
  この訓練法を教えてくれたのは林茂美先生の姪(だったと思うが)、黄花さんという若い女性と湯偉忠さんだった。
 だだ、それも「こういう風にするんだ」という具合に動きについての頭の中での理解だけで、気が動いているという感覚はなく、結局は自分で感覚をつかむ訓練によって身につけていったのである。
  その訓練というのは、造った気のボールを片手に乗せ、反対の手で気のボールを動かすようにして誘導に用い、手首、前腕、肘、上腕、肩関節、大胸筋、胸板と、それぞれの部分で皮膚から皮下の感覚を体感し、それをつなぐように掌から胸に吸い上げ、胸から掌に吐き降ろすという練習で、それも最初から全部を通すのではなく、掌と肘の間で、肘と肩の間で、掌から肩の間でという具合に短い距離での練習をしながら全ルートに延ばしていったのである。
  その練習を左右の手で行なった後、左掌から胸の中まで吸い入れ、その気を右掌に吐き出し、それを繰り返すことで気を腕の中で回すという練習をした(これを腕周天と言う)。
  その腕周天によって少しなりとも気を巡らせるようになった後、次に練習したのが、そのルートを陰陽に分けて行なう練習だった。
  即ち、掌側と手の甲側に分けての練習だ。
  掌側で言えば、掌、前腕前面、肘窩、上腕二頭筋、肩関節前面、大胸筋、胸板の皮膚や皮下の感覚を用い、手の甲側で言えば、手の甲、前腕後面、肘頭、上腕三頭筋、肩関節後面、肩甲骨、背骨の皮膚と皮下の感覚を用いて練習するのだ。
  腕での貫気、周天の練習の場合、最低はここまですべきだろうと考えている。
  そして、その練習は、鳥の舞のような動きのある功法の時に取り入れて練習することをお奨めする。