●静観塾?/一日目・3

【気功を如何に捉えているか】

  「静観塾を始めるに当たって、まず最初にあなた方の気功観というか、気功というものをどのように考えているか、聞かせて下さい。」
  私は二人が気功に対してどの程度の理解を持っているかを知っておきたかったのだ。
  そして、まず、京に手を伸ばし、発言を促した。
  「僕はですね…。」
 そう言って、京は視線を上に向け、少し間をおいてから口を開いた。
  「ホリスティック医学の勉強会に行った時に学んだんですが、疾病の治療の為には、医者や鍼医者さんに診てもらうといった受け身的な対処だけでなく、患者自らも体力をつけていこうとか免疫力を高めていこうといったような積極的な取り組みが大切で、その柱が食事と運動と心の安定だそうで、そこに含まれている要素を気功はみんな含んでいるんじゃないのかなぁと思うんです。」
  「なるほど…。
  ということは、気功には病気を克服していくための条件である体力の回復や心の安定をもたらす効力があるってことですね?」
  私が念を押すように尋ねると、京は、
「はい、僕は健康の為の柱は気功だと考えているんです」
と言った。
  「香奈さんはどうでしょうか?」
と、私は香奈に顔を向けた。
  「私は、何て言うのかなぁ、この宇宙と一つになって、心も体も解き放って自由になるというか、本来の自分に戻るというか、とにかく、あらゆるものに拘束されない自由な精神や生き方を教えてくれるもの、それが気功なんだと思うんです。
  ヨガもそうなんですけどね…。」
  「じゃぁ、ヨガと気功の違いは何だと考えているんですか?」
  私は少し意地悪な質問をしてみた。
  「私、ヨガも気功も、呼吸や内観などによって体を動かしていくことで、体の中から体を変えていくという点では共通していると思うんですが、ヨガでは、肉体の感覚はあるんですが、気の感覚というのか、よくわかりませんが、そういうものは無いと思うんです。」
  「なるほどね。
  よくわかりました。
 お二人の気功への理解が、視点はちがっても、それぞれにしっかりしていることに感心しましたよ」
と、私が彼らにそう告げると、二人は嬉しそうに顔を見合わせた。
  「では、まず初めに、京君の話を深めていきましょうか。」
  私が言うと、京は、
「健康に果たす気功の役割についてですね?」
と確かめるように言った。