無自覚ルチ→プラ。
イリアステルの3人が半人半機械みたいな設定です。
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無自覚ルチ→プラ。
ドアが開くと、大きな画面の人工的な光が、暗い室内を照らしているのが見えた。
画面に映るのは、Dホイーラーと呼ばれるデュエリスト達だ。
ソファに深く腰かけた男が、その映像を興味深そうに見つめている。
ルチアーノは、投げやりに男の名を呼んだ。
「プラシド」
プラシドと呼ばれた男は時々切り替わる映像に集中しているらしく、返事どころか振り返りすらしない。
ルチアーノは小さく舌打ちをした。
これだからこいつは嫌なのだ。何かに熱中したらそればかりで、自分勝手で気分屋、ついでに周囲の迷惑も考えない。自分よりも遥かに子供だ。
「プラシド!」
少し声を荒げると、ようやくプラシドが振り返る。
「ルチアーノか」
まるで気づいていないようだった。そんなにこの映像が興味を引くというのだろうか。
「……ホセが呼んでるよ」
「待たせておけ」
そう言って、また画面に向き直る。
ルチアーノはその態度に辟易した。
ここのところ、プラシドはずっとこの調子なのだ。
「こいつらの何がそんなに面白い訳ェ?僕、理解できないんだけど」
人間は考える葦と比喩されるだけあって知能はあるし、感覚も優れいているが、自分達に比べたら脆弱で感情に左右される。
機械は丈夫だけれど命令されたことしかこなさず応用がきかない馬鹿で、そのうえ鈍感だ。
少なくともルチアーノはそう認識している。
モーメントの力を動力とし、感覚と感情を行動の妨げにならないように組み込まれ、自分で考えられる回路と、それを遂行できる頑丈な体。
それぞれの長所を併せ持つ身からすれば、どちらも歯牙にもかけない存在なのだ。
プラシドはちらりとルチアーノを振り返り、
「お前にはわからないか」
と呟く。
「わかんないね。わかりたくもないけどー」
シグナーの少女に近づくために、人間の集まる学校とやらに行ったかこともあったが、丈夫さどころか知能すら自分に劣る生き物ではないかとすら思った程だ。
「人間なんて取るに足らない生き物じゃん」
画面が再び切り替わり、赤いDホイールを操縦する男が映る。
プラシドは画面に向かって僅かに身を乗り出す。
(ああ、こいつ確か……)
シグナーのリーダー格の男。プラシドの一番の執着の対象だ。
プラシドが操るゴーストがこの男に負けたのがよほど気に入らなかったらしい。
「……子供にはわからんか」
プラシドは、映像から視線を反らさずに、そう呟いた。
この男に執着するプラシドが理解できないと同時に、面白くない気持ちがルチアーノの中に込み上げてくる。
人間も機械も自分達と比べたら、どちらも大したことのないモノだ。それこそ、どっちだって変わりはしない。
ルチアーノから見れば今のプラシドは、電子レンジや冷蔵庫に執着しているのと何ら変わりがなかった。
ここに来てからのプラシドは、本当にどこかおかしい。
再び小さく舌打ちをして、プラシドに背を向ける。
「僕、先行くから早く来なよ」
返事が聞こえる前にドアが閉まる。
(シグナーより僕の方が強いのに)
ルチアーノは、龍を捕まえ損ねはしたものの、実際にシグナーの少女とその兄、二人まとめて相手にして勝ったのだ。
自分はシグナーより優れてるはずだ、そう自負できた。
それなのにプラシドはシグナーなんかに興味を持つのだ。
(なんか、つまんねーの)
end