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バレンタインから始まる恋4(ZA)

こうしてアメリアはリナと友達になった。




「リナさんって素敵な人ですね」
「ぐふっ!!!」

翌日の昼休み。一人弁当をつついていたゼルガディスをみつけてかけよって来たアメリアがそういって笑った。
ゼルは盛大にお茶でむせかえる。

「え!?大丈夫ですかゼルガディスさん…!」
「ケホ…くっ、気管に…はいっ…ゲホゲホゲホッ」
「待ってください、まだ死なないでください!」
「誰が…こんな青臭い年齢で…死ぬか…ゲホ!!!」


しばらくアメリアがその背中をさすり、ようやく息を吹き返すゼル。

「みえた…いま、青い川の向こうに彼岸花が群生しているのがみえた…」
「かなり危なかったじゃないですか」
「いや…だが、まだ落命するわけにはいかない、こんな…こんなところで…」
「そうですよ!まだ私とデートもしてくれてないし、キスもしてないし、結婚の誓もしてないのに」
「…………」

じとっ

「な、なんですかその目は」
「……お前、寝ぼけてんのか?」
「寝てないですよ」
「じゃあ、気がおかしいんだな。まったく…近頃はよく訳のわからん奴が多いから困る」
「そんなっ…た、確かに今ちょっと変なことをいってしまいましたけど、それはそのっ……勢い余ってというか…だってゼルガディスさんが本当に死んじゃうかと思ったから!」
「死なん!」
「よかった!」
「そうじゃない!!」

まあ、とにかくもういい、とゼルガディスはため息をつきながら、再び右手に箸、左手に弁当を持って食べ始めた。
それをしばらくみていたアメリアは、手に下げていた自分のお弁当を膝にのせて、ちょこんとゼルガディスの隣りに座り込む。無言で弁当を広げるが、ゼルはそれをちらとみただけで、なにもいわなかった。

「いただきまーす」
「…………」
「あ、今日は唐揚げだ、ラッキー」
「…………」
「んー、お肉って好きー」
「…………」
「へへっ、おいしー」
「…………………で、どこでリナと出会ったんだ?」
「ゼルガディスさんを追いかけていたとき、偶然、ぶつかったんです」


想像以上の出会い方だったらしい。

「はぁ……しかし、あのリナが突然ボディアタックをかまされても許し、なおかつ友達になったなんて奇跡としかいいようがないな…」
「え?そんなことありませんよ、リナさんってとっても気さくで親切な方でしたよ?」

ゼルガディスはまじまじとアメリアの顔をみた。きゅるんとした屈託のない顔がそこにはある。


「…確かに、昔からあいつ、この手のタイプには弱かったな…」

「え?なんのことですか?」
「いや、なんでもない」


とにかく、リナとアメリアは仲良くなれそうだ。
ということは俺の気苦労は倍増、いやいや雪だるま式に膨れあがるのだろう。

ゼルガディスは青い空を見上げて本日二度目のため息をついたのだった。

バレンタインから始まる恋3(ZA)

リナはパンパンと制服の裾を手ではたいて身を起こす。ここスレイヤーズ学園の制服は、セーラー服であり、紺色のスカートにえんじ色のスカーフがつく。そしてそのスカーフには、この学園の紋章がプリントされているのだ。
「あーもー、痛かった!…ところであたな誰?」
キョトンとしてながらまだ地面に座り込んでいる黒髪の少女をみおろしてリナが聞いた。しかし、一方的に聞くのはマナーに反すると気がついたのだろう、彼女は「私はリナ=インバース。中等部の2年生よ」とつけくわえた。
「私はアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンといいます。二週間ほどまえに転校してきました。1年生です」
「……はあ」
リナは無意識に腕を組んで相手をしげしげとながめる。
「んで?転校早々にしてゼルのことが気にいったの?」
「えっ」
アメリアがまた顔を赤らめる。なんて表情にでやすい子だろうとリナはある意味感心をした。と、アメリアという子は急にうつむいた。そしてその姿勢でしばしとどまる。それからやおら顔を上げると苦しそうな表情をしながらもリナをまっすぐにみつめてきた。
「あのっ……あなた、ゼルガディスさんの彼女さんですか!?」


ずごっっっ


見事なすっ転びようだった。アメリアは慌てて立ちあがると、地面とおでこをくっつけているリナを抱え込んで起こした。
「どうしたんですか!?大丈夫ですか!!!」
耳元で大声をだされて、リナはうるさそうに眉をしかめる。そして「だいじょぶだから」というとやれやれといった風にアメリアの手から抜け出した。
「…あたしがゼルの彼女なわけないじゃない〜!どこをどうみたらそう思うのよ」
「え、いあ、そのだって、ずいぶんと親しそうにゼルガディスさんのことをいうから」
「そりゃ、まあねぇ。ご近所さんだったから、いわゆる幼馴染なのよ……」
リナの父、そして母が働く外資系の会社は社宅を持っていた。そこに同じ会社の同僚としてゼルガディスの父の居を構えていたのである。それゆえリナとゼルガディスは必然的に顔なじみになったのだった。
「ね、だから私は彼女じゃないの」
そうはいってもまだアメリアは納得しかねる、といった表情だ。どうしたのよ、とリナが聞けば、
「でも…幼馴染だってことイコール彼女じゃない、なんて限りません。リナさんは本当に好きじゃないんですか…?」

っじぃ

おっきな青い瞳が上目使いで心配そうにチロンとみあげてくる。リナはため息をつきながら、ロングの髪を一度ばさりと片手でなびかせた。
「あっのねー!そりゃ、ゼルのことけっこう好きよ。なんでも話せるもの。大事な友達。でも、あんたがゼルのこと好きなんだったら、快くそれを応援してあげましょうって、そう思ってんのよ」
「えっ…いや、私は別にそんな好きとか…」ごにょごにょと言葉を濁らせて視線をうろうろと走らせるアメリア。それをみて短気なリナはちょっとイラっときた。

「こらそこ!これだけ私に疑いと嫉妬をむけといてそんな風に逃げない!」
「嫉妬なんてしてませんっ」
「じゃあ、なんなのよ」
どーみてもそう思えたけど、とリナはいって、それからフッと笑った。
「あなた、あいつのどこが気に入ったの?」
「……どこって、そんなのわかりません…」
またもやぽうっと赤くなる。この子、どこまで顔を赤く出来るんだろうとリナは実験したい欲求にかられたが、今回はやめておくことにした。それよりも彼女の答えを聞く方がおもしろそうだ。
「……なんでって……ただ、好きになったんです…」
「あのね、ひとつだけいっておきたいことがあるんだけど、もしかしてよ?もしかしてあなたゼルのこと理想化してたりしない?」
「理想化…」
アメリアが繰り返す。
「そ、ゼルガディスは頭がいいとか、顔がいいとか、ミステリアスでいいとか、大人びてる感じがしていいとか…そういったことよ。あいつを好きになる子は多いのよ。でも大概美化してるのよね。もちろん、あの人が頭が切れて、そして面白い人間だってことは私、十分知ってるわ。でもね、あいつあれで結構こどもっぽいし、変わりもんよ。あなたそういうことちゃんとわかってる?」
そういわれてアメリアは大事に抱えていたチョコレートを強く胸に押し当てて考えだした。そして思いつくままにこういった。
「ゼルガディスさんのことは私、たしかにまだ二週間しか知りません。自分だってバカだなぁって思ってます、でも…あの人をみていると勝手に胸とか頭が熱くなってきちゃうんです。自分でもどうしたらいいかわからないんです。ゼルガディスさんのこどもっぽいところですか?えと、それに当てはまるかわからないんですけど、お弁当のほうれん草のおひたしをお箸でよけてたから、それをみていたら、私のことに気がついて急におひたしを全部一度に食べた、とか?ほうれん草好きじゃないんですね。それから他には…あ、私の携帯にストラップが三つついているんですけど、それが変な風にからんじゃって、困ってたらたまたまゼルガディスさんが近くにいて、彼がとってあげるっていったんです。それで私、渡したんですけと、やっぱりなかなかとれなくて。そしたらゼルガディスさんだんだんむきになってきて、私がもうやめましょうっていってもヤダっていって、お昼休みが終わる鐘が鳴ってもまだで…私たちこの中庭にいたんですけど、もう先生が教室に来るから帰りましょうってい
ってもひたすらストラップをガチャガチャやっていたんですよ。そしたらついにとれたんです。私がお礼をいおうと思ったら、彼、すくっと立ち上がって、


どうだぁ!この俺にとけんストラップはない!はっはぁ!!


って高笑いをし始めました」



「………すごいわね、アメリア。あんたこの短期間のあいだにそこまでゼルの性格に向き合ったの………ねぇ、そんなのみてても好きなの?」
「はい、だから好きなんですvvv」


世の中広い、とリナはこの時、それを深く、強く実感したのだった。

バレンタインから始まる恋2(ZA)

校舎の南側には、構内にしては意外なくらいこんもりとした中庭がある。夏になると、ひんやりとした木陰に集まる生徒も多いのだが、2月の今は人気もなく、木々は静かにたたずんでいる。そうした木の一本にゼルガディスは近寄ってゆくと、ちょっと地面の様子をみてから腰をおろした。そうして手に持っていた詩集を開く。どこを読もうかとさまようようにパラパラとめくっているうちに、ふと人の気配を感じた。
「はぁい、ゼルガディス」
「リナ」
彼は顔をあげる。そこにはアカネ色の緩やかなロングパーマを腰のあたりまで垂らした可愛らしい少女が立っていた。
「……久し振り、だな」
「ほーんとね!一年ぶりくらい?私、一昨日日本に帰ってきたのよ」
「ああ、知ってる、うちの親がそういってたからな」
「あら、ゼルんちのご両親、私のこと話してくれてたの?」
少女が嬉々とした声をあげる。
「そりゃ、職場の同僚が帰ってくりゃ、夕食の席で話題にもするさ。転勤先のベルギーでも騒動を起こし続けたインバースが、またも本社に帰ってきた。奥さんも娘さんたちも相変わらずお元気らしい」
「相変わらずってなによ」
「ま、とにかくな、近いうちに俺も学校でおまえに会うとは思ってたんだ」
そういうとゼルガディスは軽くほほ笑んだ。リナもそれに笑顔で返す。
「それにしてもこんなところで再会になるとはね。…ねえ、今日はバレンタインよ、わかってる?」
リナの質問にゼルガディスは首をちょっと傾げただけでたいしてとりあう気はないようだった。
「クールで素敵な王子様が、こーんなところにいちゃ、女子生徒が泣くわよ」
「バカいえ、俺に渡したいなんて思うヤツもそうはいないだろうが」
「……あたしの記憶がたしかなら、『そうはいない』っていうのは20人くらいを指すのかしら?」
ここでちょっとだけゼルガディスの頬が赤らんだ。しかし、それには答えず彼は盛大な溜息をひとつつく。
「どうしたのよ、今日はなんかナーバスね」
「べつに………あー、もしかしたらなんだが、もう少ししたらうるさいのが一人やってくるかも知れんが、気にするな」
「うるさいの?」
「とにかく気にするな……それよりおまえこそ、こんなところでのんびりしていていいのか?高等部に行かないと、休み時間が終わっちまうぜ?」
チロリ、とゼルが流し眼をした。それをみてリナが慌てながらひきつりだす。
「な、な、なんのことよ!!なんで高等部なんかにいかなきゃなんないのよ!!!!」
「いわせんでも、わかるだろう」
「わかんないっ!」
外国暮らしをしても、相変わらずってとこか…とごしょごしょ独り言をゼルはつぶやいたあと、人指し指を軽くあげてリナを指した。
「ベルギー土産の立派なチョコレートを携えて、ガウリイのところへ行かなくていいのかって聞いてるんだよ」

ぽむっ

と、実に可愛い音をたてて、なんとリナが全身赤に染まった。頭からは湯気までが立ち上っている。しかし、顔は眉を寄せ、唇をゆがめて閉じ、目だけがじとっとゼルをにらんでいる。

「い、か、ない、わよ。なんで…」
「ガウリイは、おまえが一年間海外にいってるあいだ、ずっとおまえのこと待ってたんだぞ」
「た、頼んで、ないもん!」
「…………ま、どっちでもいーや。どうせ近いうちにあいつにも帰国の挨拶にいくんだろ。そのときは、ガウリイのほうがおまえさんを迎えるさ。ベルギー人より盛大にハグをされるぜ」
にやり、とゼルガディスが笑った。

と、ここに思わぬ珍客が。

「ゼールーガーディーースさ〜ん!!!」

「げっ」
「なに?!」

空の上から甘く澄んだ声が降ってくる。
リナが不思議そうにキョロキョロと首をめぐらせると、隣にいたはずのゼルガディスが突然かけだした。
「え、ゼル?」
普段はみられないような彼の全速力にリナはただ呆然とする。みるみると小さくなってゆく彼の後姿をみつめていると、とたんに背中にドーンと衝撃が来た。

「いったぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁ、ごめんなさいーー。ちょっと着陸寸前でバランスを壊しましたー」

地面にかぶさるように倒れこんだリナの上に、なにかが乗っかっている。リナは自身を起こそうと腕に力を入れながら、それが温かくてやわらかい塊であることに気がついた。

「ね、ちょっと、誰か私の上に乗っかってんの?!」

後でわかったことだが、少女の名はアメリア。
リナがこの学校を休学したのと入れ違いで転校してきたそうだ。
彼女は登校日に、思いもかけずに目が合ったゼルガディスにフォーリンラブ。以来、彼女と彼の追いかけっこはかなり有名になっているらしい。

「ひざをすりむいちゃいました」
「あーもう、保健室に行きましょ」
「えっ、でもゼルガディスさんが…」
「あ?あなたあいつに用があるの?……あ、さてはバレンタインチョコを渡しにきたとか?」

ボンッッ

少女の白い肌が一挙にトマト色になった。

リナとアメリア。
これが二人の出会いのワンシーンである。

バレンタインから始まる恋1(ZA)

キーンコーンカーンコーン

と、平和でけだるい午後を告げるチャイムがなって、さあ昼休み。

ガクランに身を包んだ容姿端麗頭脳明晰、ちょっと皮肉屋な生徒会書記ゼルガディス=グレイワーズがすっと席を立つ。
そして小脇にランボーの詩集「イリュミナシヨン」を抱えると静かに教室を出て行った。
その一分後。


バーーーーーーーン

「ゼッルガディスさーーん、あ、はっぴー、ばれんたいーーん!!!」

教室の後ろのドアが吹き飛んで、ミニスカセーラー服をはためかせた黒髪の少女が突入してくる。

「はーい、これがアメリア印、愛と勇気と友情と、根性と努力と限界を超えた、愛の結晶チョコレートです!!」

ぽふん、と少女のまわりにはなぜかピンク色のスターダストが飛んでいる。

「ああ、ゼルガディスさん、本日は大変お日柄もよく、絶好の告白日和!私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンの渾身の愛をどうぞ受けとってくださいvvv」

ぽすっ、とアメリアは恥ずかしそうに小さな箱を前に差し出した。それは白地に金色のリボンがかかっていて、チョコレート色をした文字が優雅にプリントされている。にぎやかにとりだしたにしては、落ち着いた上品なチョコレートだった。

「……あれ……ゼルガディスさん…?」

キョロキョロキョロ

ここで初めてアメリアは愛しの彼がこの場にいないことに気がつく。とたんに片方の手を胸にあて、不安げな表情になるアメリア。そして可憐にうつむく。

「……どうして……どうしてあなたはいつも、私に寂しい思いをさせるの?」

赤い唇が震え、青い瞳から涙がこぼれてきた。
だが、健気にもその涙を手でぬぐうと、少女はため息をひとつつき、チョコをそっとその胸に押し当てる……

そんな彼女のふるまいをみて、数人の男子が駆け寄ろうとした。意外や意外、アメリアはモテるのである。
だが、本人があまりにもゼルガディスさんラブオーラを出すために、ほとんどの男子が手を出せないだけなのだ。

「ア、アメリアさん!」
「泣かないで、これくらいのことで」
「もう、あきらめてオレとどこかに行こうよ」
「僕ならあなたのことを悲しませたりしない!!!」
「アメリアちゃん…!」




「わっかりました!そっちがその気ならこっちもこの気です。このアメリア、これしきの試練でくじけるわけがありません!!!!」

ずごっ

あわれ、十四人ほどの男子がその場に崩れる。


「きっとあの人のことだから、中庭の隅の大きな木の下で本でも読んでるんです。いってみましょう。とうっ」

そういうと開け放されている窓に駆け寄りそのままそこを飛び越える。

「レビテーション!」

ふわっ、と逆光を浴びて少女は大空へ舞った。


教室のカーテンが緩やかにゆれる。

…いまさらバレンタイン…

以前途中で止まっていて、今度こそ書き終えるといったかつてのバレンタインゼルアメネタ。

……を、復活させたいと思います。


この季節にバレンタイン。。。


これがぐだぐだサイトのクオリティです。すみませんm(>_<)m

かつての再録プラス一話。次の更新からアップ致します。
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