プリンス・シェイドは本当にエクリプスとは別人なの?
エクリプスは本当に、プリンス・シェイドの変装をしているだけの別人なの?
確かに、二人はとても似ているようで、どこか雰囲気が違う。
プリンス・シェイドは気難しくて生真面目。愛想笑いが上手かと思うと、驚くほどそっけなくて、どうも遠くに感じる存在だ。
一方、エクリプスはぶっきらぼうで、荒っぽい。言葉もキツイくて、いちいち人の心を傷つけてくるが、反面、感情がわかりやすくて、優しい面もある。
ファインはもちろんエクリプスと話す方が好きだ。
ふと、ファインの中に突拍子もない考えが浮かんだ。
エクリプスとシェイドは、実はふたごなんじゃないかしら。
私とレインがそうであるように。
よく似てるけれど、やっぱり違うと言われる私達。
同じ瞬間に生まれたふたごが、なにかの事情で別々になって。
1人は王子様。もう1人はさすらいのならず者として生きる運命になった。
「なわけない、よね?」
ファインは一瞬で頭の中を駆け巡った想像に、自分で乾いた笑いを見せた。
そんなおとぎ話を聞いたことはあったけど。まさか、そんな、ね。
「でもでも、ホンットによく似てるんだもん」
ファインは大げさに頭を抱えた。
「はあ…考えてたってわからないや」
しばらくして、そう言いながらファインは頭に乗せていた手をおろした。
そうして、チラと隣のベッドを見た。そこにはまだスヤスヤと眠る青い髪をしたレインの姿がある。その近くには、木でできたカゴの中に、居心地良さそうな寝床を作って丸まっているプーモの姿もあった。
ファインは二人の寝顔を見ながら、なぜか神妙な心持ちになったくる。
(レイン、今日はきっといろんなことが起こるね)
ファインは心の中でそう呟いた。
(だけど私、どんなことが待っていても、受けとめようと思うんだ)
プリンス・シェイドはどんなことを言ってくるだろう。
エクリプスはこれから、どんな扱いをされていくんだろう。
そしてなにより、あの怖い二人の男達のことを、自分は上手にシェイドに伝えられるだろうか。
(伝えなきゃ)
そう思ったとたん、あの男、月の国の服を着た髭の男の言葉が蘇った。
男はプリンス・シェイドとエクリプスを並べてこう言ったのだ。
ーーこの二人は私にとって、手ばかり焼かせるめんどうなふたごのような存在ですよーー
「言おう」
ファインは、はっきりした声で呟いた。
あの怖い男は、シェイドなことも、エクリプスのことも憎んでいる。
シェイドだって、狙われているんだ。
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