12/09/10 23:16 (:(SS天獄))
  行き先変更(天獄)
短文劇場 (天獄)

いろいろゆるいぶん。


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鬼男くんは、本当に真面目で誠実な青年だった。
見た目がヤンキーなのは彼の生まれ育った環境のせいだったけれど、彼は本当に根は素直で優しい青年だった。
閻魔大王というめんどくさいオッサンのもとで、彼はそれでも精一杯仕事をし続けた。

そして彼もとうとう天に召される日がやってきた。

「え〜っと、鬼男くんは天国と地獄、どっちかな〜」

ゆるい感じの上司は、最後までゆるい声と態度で彼の裁きをおこなった。
パラパラと閻魔帳をめくる。

「早くしろこのイカ男」
「イカ男!? 君、上司に向かってその態度はなんだよ?!!」
「いーから、早くしてください、割きますよ」
「割くってどうするの!? どこ割くの!!?」
「いーから!」

すでに300年は生きたが、鬼男の外見は20才の頃とちっとも変わっていない。
鬼とは得なものだ。

それをいったら閻魔だって何億年生きてるんだか知らないがいつまでたっても初々しいオッサンだった。

「部下が最後までひどい…。えーっと、鬼男くんは…」

ハッと、閻魔の顔が引きつる。

閻魔帳には『天国』と記されていた。


「ダメだよ鬼男くーーーーーん!!!!」

バリン! と閻魔が手帳をやぶく。

「なにやってんだこの極道イカー!!!!」
「こんなの嘘だ。そっちにいっちゃダメだ」
「どっちだったんだよ!?」
「そっちにいったら、俺、あんまり鬼男くんに会いにいけない!!!」
「ってことは、モラル的にいいほうだったんだな!?」
「なんですぐバレんの?! いやだ、俺、いい影響力もってないからあんまりそっちに行くなっていわれてんのに!!!」
「自分のせいじゃねーか。なに大王のくせして天国の住民にいい影響力、持ってないんだよ」
「ようし、こうなったらいまからでも鬼男くんに違法セーラー服通販させよう」
「違法ってなんだよ、盗んだセーラー売ってんのか??」
「それからイカスミパスタと銘打って墨汁かけただけのパスタ屋さんで商売させよう」
「詐欺じゃねーかよ。そんなことしてたのか? それして誰が得すんだよ」
「トドメに鬼男くんのベッドとシャワールームに盗聴器と盗撮カメラつけたのと同じようなことをさせよう」
「ストーカーじゃねーかよ、いつ頃から俺の部屋にそんなもの仕組んでたんだよ!!!?」
「これで鬼男くんは立派に地獄行きだ。俺、地獄なら遊びにいっても文句いわれないんだもんね。ふう、よかった」
「キラキラしながら額の汗、ぬぐってんじゃねーよ、さっさと天国に俺を送りやがれ!!!」

それから一週間後。

「やあ、また遊びにきちゃった。最近、閻魔庁の休み時間長くなってさ〜」
「お前が勝手に休み時間伸ばしたんだろ、俺のことはいいからさっさと仕事してこいよ!!」

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こののち、天国にはほぼ毎日閻魔の姿があったという。
よくわかんないまま終わる。







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