「すげぇ」

上空は風が強いのか、雲がざわざわと流されていく。

雲の濃淡の陰から、輝きをのぞかせる月。

(ああ、三橋と見てえな)

なぜか、そう思った。

雲の後ろに消えては現れ。
雲の後ろから光を透かす。

どんなに雲に隠されようとも、
そこに、ある。

「あいつも、これ、見てっかな…」

隆也はガラにもなく、熱っぽい声でつぶやいてみた。