20/03/03 00:04 (:貝木泥舟)
  不毛な会話831〈魔界篇〉
話題:妄想を語ろう

湯気は もうもうと立ちこめ

水蒸気、粒 そのひとつぶが
肌にじわりと広がり

薄く 彼女の唇が動く

何かを唱える 見覚えのある唇の動き。

その直後、女は頷き目を瞑る

重さが腕に伝わる‥

存在がふたつ重なり
彼女の重さに響く様な‥なんとも妙な感覚

「おい‥大丈夫か」

頬を軽く叩き
彼女の安否を確認するカルエゴ

「‥はい‥」

彼の手を握り返し 見つめる。

僅かな違和感が確信へと変化する瞬間

「さ、此方へ」

カルエゴがエスコートする

と。

ツルッ

長時間湯気の中に居て濡れた肌に

滑る指先

「あっ」 「む‥!」

くるっ ストン

「カルエゴ君!?どうしたの」

2人を探していたバラム

「‥えっ、まさか君たち‥」

震えるバラム

彼が目にした信じがたい光景

悪魔 カルエゴが跪き

彼女の手にキスを

「か、カルエゴ君‥覚悟が出来たんだね」

人間が悪魔と契約した

と、言うより

「‥ん?なんだシチロウ」

「僕、初めてプロポーズみたよ‥!」

は!?

単に滑って転んだ拍子になっただけで

彼女が滑ってその手を引っ張り
そのままカルエゴがしゃがみ込む、と

引いた手に額を寄せるポーズ

つまり背後から見ると手の甲にキス

立て膝ついて 手の甲にキス

「ち、ちょっと待て!誤解‥」

「カルエゴ君の覚悟‥協力するよ」

静かに、力強く頷くバラム

「ちが‥おい‥!」

バタン

「頑張って、じゃない!シチロウ‥」

深い溜め息

ああ よりによって‥

佇んだ女は二重に見える

カルエゴの目は正しく女を見ていた。

入り込んだ意識は男のもの

(彼女と繋がりのある人間か‥)

道案内をする良き魂か

それとも 招くは混乱か?












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