人生の色んな始まりに寄り添う物

わたしは大学生だった19歳の時に印鑑屋さんでアルバイトをしていました。
わたしの中で印鑑というと、100円均一でも買える三文判のイメージ。印鑑屋さんとは、苗字が変わっていて100円均一で三文判が買えない人が行くところだと思っていたのです。ちなみに、わたしは全国でも多い苗字ランキングで20位以内には入る苗字です。当然、アルバイトを始めるまで印鑑屋さんへ足を踏み入れたことはありませんでした。

そんな、わたしがショッピングセンターにテナントとして入っている印鑑屋さんのアルバイト募集を見つけて、暇そうだからいいかな?と応募し採用されたのです。

働き始めると、まずは研修がありました。そこで、初めて三文判以外の印鑑を知ることになります。
実印、銀行印、角印、代表者印など様々な印鑑がある中で、用途に合わせておすすめする印鑑は違います。印鑑の素材も象牙、黒水牛、柘植やチタンなどの印鑑。プラスチックで出来た可愛らしいデザインの物まで…本当にたくさんの物がありました。

素材が決まればあとは書体です。印鑑で使う専用の書体がいくつかあり、その説明もしなければなりません。
奥の深さに驚きました!三文判しか知らなかったのですから当然です。

2週間程度の研修で知識をたたきこみ、いざ売り場へ。
最初はうまく説明すること、商品に興味を持ってもらうことに必死でした。しばらく経ってようやく余裕が出てきた頃に気付いたことがあります。
それは、印鑑を買いに来られるお客様は何かスタートされる時なんだと。

会社を作られる方、結婚されて苗字が変わられる方、子供さんが生まれ家族が増えた方、親元を離れ社会人になられた方…などそれぞれの色んな始まりに寄り添う物。
それが印鑑なのだと思います。