取り扱う商品の多様な100均には度々お世話になっていて、目的以外のものでも店内をくるくると見て回るのは楽しい。きのうは帰りがけに、大きな商店街の中にある100均へ自転車の荷台に使うゴムロープを買いに行った。
入口に置いてあるバスケットスタンドからカゴをひとつ手に取り、店内に入ろうとした。すると通りから電動車椅子に乗った男性が、顎で、すぐ下にあるスイッチを器用に操りながらこの店に入ろうとしているのが分かった。

狭い間口に入り口が二つあって、片方は買い物カゴと商品を吊るしたポールが置いてあって車椅子は入れない。彼はもうひとつの入り口から入ろうとしたけれど、入ってすぐにフックに掛けられた商品が通路にはみ出していて通りづらい状態だった。そう広くはないこの店の内の通路は人がやっとすれ違うことができる程度。でも車椅子一台が通れる幅としては十分だ。確かに車椅子が入れば通路を塞ぐような形になる。でも、あなたは車椅子だから邪魔だから、入るなとか、諦めろとは言いたくない。何時間も居座るわけではないだろう。彼にも自由に買い物を楽しむ権利はあるでしょ。


私は「入りますか?」と声をかけ、こちら側にあったバスケットスタンドと商品が吊り下げられたポールをずらした。30代と見える彼に「すみません」と、はっきりした口調で言われた。私はずらしたものを元に戻してからゴムロープを手にしてレジへ。精算しながら店員に事情を話して、彼が店から出るときに気をつけてあげてほしい旨を頼んで帰ってきた。

きっと彼のような人は、普通に歩ける者には分からない不便さ配慮のなさを数多感じながら生活しているのだろう。遠慮せず「ちょっと手伝ってもらえますか」って頼めばいいさ。冷ややかな反応の人もいるだろうけれど、時間と気持ちのゆとりが幾ばくかでもある人にとっては、お安い御用じゃないのかな。

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子供のころ住んでいた家の、小さな庭の日当たりの悪い場所にクチナシが植えられていた。今時分になると、しけた我が家にゆかしい風を運んでくれるような、真っ白な花びらを八重に広げて甘く香る様に心を奪われていたのを思い出す。

純白の八重の梔子(くちなし)夏の日の薄暗がりの狭庭(さにわ)の女神