紅茶一杯。



傷の舐め合いしようぜ律霊
2017年5月21日 23:37


話題:二次創作文

※モブサイコ100
※それほど律霊じゃないかも注意


「兄さんに頼まれたので、代わりに来ました。」
相談所に入りながら言った律に、自分のデスクに居た霊幻はにこやかに迎え、笑顔で
「そうか、じゃあ帰っていいぞ。」
と解散を下した。律は顔色を変えず涼しげなまま、新聞を手にしている霊幻のもとへ進む。
「やっぱり兄さんが良かったですか。」
別に構わない。律だって兄に頼まれなければ進んで会いたい人物ではないのだ。
「そうじゃなくてな。依頼が無くなっただけだ。自己解決したから、もういいそうだ。」
10分前にそう連絡が来た。営業終了まであと2時間、来るかも解らない飛び込みの客をひたすら待つだけだから時間が勿体無いだろ、と。
「律君は忙しいもんな。」
霊幻はにこやかなままだった。茂夫ならばバイト時間なのだから居て当たり前だが、律は臨時だ。わざわざ付き合わせるのも悪いと思ったのだ。
「……僕に八つ当たりするのは止めてください。」
律が呟くが、霊幻は聞いてなかった。
茂夫は今、友達と、または恋人と、青春を謳歌中だろう。霊幻もそっちを優先するように茂夫を誘導した。
それが大人の、師としての務めだからだ。
自分の選択は間違ってないし、後悔もない。ただ、たまに酷く寂しさを感じるだけだ。弟子が眩しくて、羨ましくて。
自分の後を付いて回ってた時間が恋しい。しかしそんな時間には限りがあると霊幻は自覚していた。していたのに。
思いにふける霊幻に声が降る。
「正直、こんなに弱ってるとは思いませんでした。」
顔を上げると、デスクの前で律が困ったような顔をしている。
「ちゃんと、解っていると思ってたのに。」
霊幻が笑った。
「年を取ると感傷にひたりやすくなっちまうんだよ。特に思春期真っ盛りとかな。目の当たりにすると結構くるぞ。」
お前もいつか味わうからな、覚悟しとけ。と茶化すと、意外にも律は顎に手をやり
「……そうですね。僕も霊幻さんタイプかも知れません。」
と頷いた。
「どういう意味だそれは。」
霊幻が律を訝しげに見る。
「僕もあまり、充実した青春ではないので。」
おいおい、と霊幻が困惑する。
「なんだよ、なんか抱えてんのか?相談のってやろうか。」
「霊幻さん……否定しないんですね。」
青春謳歌について。と、律もまた困惑する。謳歌してたわ、とか突っ込みが入ると思っていたのに。
「まあ、モブみたいな青春では無かったな。アイツは恵まれてるよ。本人の魅力なんだろうな。」
優しい目をして茂夫を語る霊幻。
「否定はしません………………でも、そうなれたのも、多少は影響を受けているからでしょう。」
あなたの。と呟き、きびすを返した。
「律?」
「帰ります。」
歩き出した律は、頬が熱かった。
「待て律!ちょっと待てって!」
椅子から立ち上がる。ドアノブに手をかけ扉を開けた律の背中に手を伸ばす。
「飯!!行こう!」
「は?」
思わず振り返ってしまった。霊幻は律に片手を伸ばしたままのポーズで
「傷の舐め合いしようぜ。」
と、ニヤリ、いつもの笑顔に戻って言った。





※このあと飯友になったら良いのになぁ。『傷の舐め合い』は青春謳歌について。




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