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結果的には良かったのかも

先ずは何から話せば良いのか。


僕の仕事がお姉さんにばれてしまった事は先に少し触れたと思う。


あれはいつもの様にお姉さんの家に遊びに行った時のこと。


僕はいつもの様にリビングで、お姉さんはいつもの様にキッチンでそれぞれに時間を過ごしていた。


何気なく、本当にそんな事も予期せずに僕がお姉さんに近寄って行こうとした視線の先に凝固した。



紛れもなく、いや、誰があんな雑誌を見間違えるものか。





お姉さんがさっきから無心で読んでいた雑誌が僕の出ている雑誌だった。




もう、ね、頭の中が真っ白になるってこう言うことだった、なんてその時初めて体験したよ。



足もすくんで動かないんだ。


自分の身体が自分のものじゃない感じだった。





消えたい。





兎に角、その場から自分と言うものの存在ごと消してしまいたかった。




でも、後の祭りだよね。



恐かった。


お姉さんに何て話し掛けて良いのか、全然考えられないんだよ。




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お久しぶりです

ずっと音信不通でごめんなさい。

一杯話さなきゃいけない事があるよ。

お姉さんの事、成人の事、仕事の事、いっぱい、いっぱい。








ちょっとづつ、話していけたら良いな。


少し、整理が出来たら、また日記をつけようと思います。



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壊滅の音が聞こえる

お姉さんに会うのが怖くてあれ以来全く会いに行くことを拒んでます。

僕だってばれたかな?

多少メイクや衣裳で普段と違って見えたとしても、やっぱり分かっちゃうよね。

はぁ、憂鬱だ。

何度かあれ以降もお姉さんから遊びに来るようにってメールが届いていたけど、雑誌の事に触れるような文面はどこにもなかった。

ないのは単に気付いてないだけなのか、それとも平静を装っているのか。気を遣って触れないだけなのか、全く気にならないのか...

一人悶々と視野を巡らす怒濤の日々。

こんな事になるならさっさと辞めてしまえば、なんて出来もしない事を考えて自分を罵って苛立ちが募っていく。

これが僕に与えられた試練なら、それを乗り越えた先に一体何があるんだろう。








ああ、海が見たい。

何も考えず、あの大きな海原に身も心も委ねて凪がされてしまいたい。








バカな僕。


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不具合

海辺で撮影会…の筈が機械の故障とかで一時待機となって移動用のワゴン車の中に僕を含む10人ばかりの男ばかりが暇を弄んでいた。

退屈な時間をどう過ごそうと別に自由で、例えそれが男ばかり故の発禁映像の鑑賞会となっても文句は言えない。

ただ、僕は興味がないだけ。








座席の前列では誰かが持ち込んだアダルトDVDが耳障りな雑音を遠慮なく漏らしていた。

女性に興味がないと言えば語弊が生じると思う。

ただ、今はそういう事には興味を持てないだけ。

異様な興奮を押さえきれない奇声が飛びかう車中に居たたまれない。

退屈な時間はこうも長く感じるものか、と僕はこの空気から抜け出す事を決め、寄り掛かっていた肘掛に手を掛けてゆっくりと体を押し出すように立ち上がった。

不意に視界に入ってきた静かに佇む成人に思わず首をかしげてしまう。

てっきりこういう物には先陣切って飛び付く人だと思っていた成人が、今日は自棄に物静かな様相で車中の後部座席で雑誌を眺めながら微睡んでいる。








意外……そう思うのは失礼だろうか。








『…成人…は、皆と一緒に見ないの?』

つい、聞いてしまった。



『あ?…別に興味ねぇな。創られた情事なんてそそられもしねぇ』

ああ、そういう事…

『出るのか?』

『え?あ、ああ。喉が乾いたから何か買ってこようかと…』

『んじゃ、俺も』

あからさまに拒絶反応を示してしまう。

すかさず、声を掛けてしまったことに後悔する僕を成人は冷ややかに笑った。

『そんな露骨に警戒すんじゃねえよ。俺も煙草を切らしちまったから買い出しに行きてぇだけだ』

するりと僕の前を通り抜けてタラップを降りていく成人を茫然と見送りながら、自分の余りの小心さにべそを掻きそうになった。

苦手意識がどうしても拭えない。

成人にまるで僕の心を見透かされているような気がする所為か…



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どうして貴女がそんなところに

ヤバイ。

本当にヤバい。









偶々通りかかった書店の片隅でお姉さんを見掛けた。

嬉しくて、声を掛けようと店内に足を踏み入れて心臓が止まるかと思った。









お姉さんが手にしていた雑誌……








僕が出ている雑誌だよ。









ばれた……









ばれちゃったよ!!

何で?何でそんな雑誌を貴女のような人が見てるの?









最悪だ・・・・


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