海辺で撮影会…の筈が機械の故障とかで一時待機となって移動用のワゴン車の中に僕を含む10人ばかりの男ばかりが暇を弄んでいた。
退屈な時間をどう過ごそうと別に自由で、例えそれが男ばかり故の発禁映像の鑑賞会となっても文句は言えない。
ただ、僕は興味がないだけ。
座席の前列では誰かが持ち込んだアダルトDVDが耳障りな雑音を遠慮なく漏らしていた。
女性に興味がないと言えば語弊が生じると思う。
ただ、今はそういう事には興味を持てないだけ。
異様な興奮を押さえきれない奇声が飛びかう車中に居たたまれない。
退屈な時間はこうも長く感じるものか、と僕はこの空気から抜け出す事を決め、寄り掛かっていた肘掛に手を掛けてゆっくりと体を押し出すように立ち上がった。
不意に視界に入ってきた静かに佇む成人に思わず首をかしげてしまう。
てっきりこういう物には先陣切って飛び付く人だと思っていた成人が、今日は自棄に物静かな様相で車中の後部座席で雑誌を眺めながら微睡んでいる。
意外……そう思うのは失礼だろうか。
『…成人…は、皆と一緒に見ないの?』
つい、聞いてしまった。
『あ?…別に興味ねぇな。創られた情事なんてそそられもしねぇ』
ああ、そういう事…
『出るのか?』
『え?あ、ああ。喉が乾いたから何か買ってこようかと…』
『んじゃ、俺も』
あからさまに拒絶反応を示してしまう。
すかさず、声を掛けてしまったことに後悔する僕を成人は冷ややかに笑った。
『そんな露骨に警戒すんじゃねえよ。俺も煙草を切らしちまったから買い出しに行きてぇだけだ』
するりと僕の前を通り抜けてタラップを降りていく成人を茫然と見送りながら、自分の余りの小心さにべそを掻きそうになった。
苦手意識がどうしても拭えない。
成人にまるで僕の心を見透かされているような気がする所為か…
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重ね重ねありがとうございました。
以下拍手レス
>>北條さま
ブログに僕の紹介をしてくれたなんてちょっとびっくりだよ。
却って僕の方が迷惑掛けちゃうんじゃないかって心配になるくらいだよ?
でも本当に嬉しいよ。
ありがとうございます!
それから読者登録して下さった方。
ありがとうございます。
常々、誰なのかちょっとでも知りえたらもっとちゃんとお礼を言えるのにって残念に思う。
良かったらお声を聞かせてください!
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ヤバイ。
本当にヤバい。
偶々通りかかった書店の片隅でお姉さんを見掛けた。
嬉しくて、声を掛けようと店内に足を踏み入れて心臓が止まるかと思った。
お姉さんが手にしていた雑誌……
僕が出ている雑誌だよ。
ばれた……
ばれちゃったよ!!
何で?何でそんな雑誌を貴女のような人が見てるの?
最悪だ・・・・
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こんばんわ。
放置してごめんなさい。
実は…。
お姉さんと少しづつ仲良くなって浮かれてました。
お姉さんに、仕事を辞めたいと思ってることとかも相談したり。
お姉さんにね、自分を認めてくれる人がいるって事の大切さを教えて貰って、僅かにもう少し続けてみようかって気持ちになれて、僕なりにちょっとだけ前向きな考えをするようになった。
けど…
お姉さんに何の仕事をしてるの?って聞かれて答えられないんだ。
やっぱり、まだ無理だ。
言えない。
僕がどんな仕事をしてるのかなんて、絶対に言えない。
どうしよう。
凄く後ろめたいよ…
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成人の事があって益々仕事に行くのが億劫になった。
せめてもの救いは所属する事務所が違うって事だけ。
それでも契約している雑誌が幾つか被ってるから嫌でも顔を合わせる事になってしまう。
撮影で絡みがないだけましかな?
あれから成人も僕も互いに少し距離を置くような態度を取ってしまい、何度か礼二くんに問われた。
何もない。
そう言うしかない。
実際、キスをされたことは事実だけど、それ以外はなにもないんだし。
話ってなんだったんだろう。
気になるけど、聞き出す勇気は僕には、ない。
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