先ずは何から話せば良いのか。
僕の仕事がお姉さんにばれてしまった事は先に少し触れたと思う。
あれはいつもの様にお姉さんの家に遊びに行った時のこと。
僕はいつもの様にリビングで、お姉さんはいつもの様にキッチンでそれぞれに時間を過ごしていた。
何気なく、本当にそんな事も予期せずに僕がお姉さんに近寄って行こうとした視線の先に凝固した。
紛れもなく、いや、誰があんな雑誌を見間違えるものか。
お姉さんがさっきから無心で読んでいた雑誌が僕の出ている雑誌だった。
もう、ね、頭の中が真っ白になるってこう言うことだった、なんてその時初めて体験したよ。
足もすくんで動かないんだ。
自分の身体が自分のものじゃない感じだった。
消えたい。
兎に角、その場から自分と言うものの存在ごと消してしまいたかった。
でも、後の祭りだよね。
恐かった。
お姉さんに何て話し掛けて良いのか、全然考えられないんだよ。
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ずっと音信不通でごめんなさい。
一杯話さなきゃいけない事があるよ。
お姉さんの事、成人の事、仕事の事、いっぱい、いっぱい。
ちょっとづつ、話していけたら良いな。
少し、整理が出来たら、また日記をつけようと思います。
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お姉さんに会うのが怖くてあれ以来全く会いに行くことを拒んでます。
僕だってばれたかな?
多少メイクや衣裳で普段と違って見えたとしても、やっぱり分かっちゃうよね。
はぁ、憂鬱だ。
何度かあれ以降もお姉さんから遊びに来るようにってメールが届いていたけど、雑誌の事に触れるような文面はどこにもなかった。
ないのは単に気付いてないだけなのか、それとも平静を装っているのか。気を遣って触れないだけなのか、全く気にならないのか...
一人悶々と視野を巡らす怒濤の日々。
こんな事になるならさっさと辞めてしまえば、なんて出来もしない事を考えて自分を罵って苛立ちが募っていく。
これが僕に与えられた試練なら、それを乗り越えた先に一体何があるんだろう。
ああ、海が見たい。
何も考えず、あの大きな海原に身も心も委ねて凪がされてしまいたい。
バカな僕。
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