笑いとばせばいい



 うるせえな。いいよ、全部、教えてやるよ。もうすぐバカみたいな死に方をするあんたとあたしのこと。
 なにもかもくだらないと思ってたんだ。雨が降ったとか雪が降ったとかではしゃぐあんたも、恋だの愛だのに一々夢中になるあんたも、ばからしくて意味がないと思ってた。この世のなにもかもに意味なんてないと思ってた。だってみんなバカなんだよ。クソみたいに意味ない。
 ああ、バカだなあ、バカだなあって、だけど気付いたらずっと見てた。あたしはあんたを見ていた。わかったとたんに、今まで抑えてきたものが爆発して一気に耐えられなくなった。あんたに逢いたくて逢いたくて、それだけで死にそうなくらい切なくなった。そうしてやっと気付いた。あたしは恋をしたんだ。だからここへ来たんだ。それなのに、あんたは?いいよ、いいよ。それがあんたなんだ。あたしが好きになったのは、あたしなんて見向きもしないあんたなんだ。
 …なあ、たとえばだけど今このナイフであんたを刺したら、少しはあんたの記憶にあたしが残るか?あんたの頭んなかに、あたしが小指の爪ほどは刻み込まれるのかよ。おい。答えろ。黙ってないで。血なんか吐いてないで。でっけえ目ぇ見開いて、あたしを真っ直ぐに見ろ。あたしが間違ってること全部教えてよ。好きなんだよ。クソが!その口であたしを笑いとばせばいい。



090331



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