青年と少年



 世界は平等じゃない、と彼は言った。
「平等なんてどこにもないんだ。僕はそんなもの見たことがないし多分これからも一生見ることはない。僕は頂上にいる。何も見えない頂上にいる。おまえらが知らない恍惚を僕は知っている」と容姿端麗で頭が良く運動もできてお金も持っている青年は、目の前の薄汚れた少年に言った。ソファでくつろぐ青年に相づちを打つこともなく、少年はただそのそばで、飲み物を持って立っていた。長い時間を立ち続けた足がどんなに辛かろうが、自分の足など相手にしている余裕はなかった。価値もなければお金もなかった。
 青年は興味もないテレビを眺めて、反応しない少年を話し相手に毎日を過ごす。今日が二十四時間なら明日も変わらず二十四時間、少年は立ち続ける。
 平等はどこにもなかった。



-エムブロ-