宇宙に夢中



「わかった、糸子がそんなに言うなら、もう宇宙のことはあんまり考えないようにするよ」
 昨日そう言ったばかりのくせに、ケンちゃんは今日もわたしをほっといて、宇宙のことばかり考えている。だからわたしは拗ねるんだけど、宇宙に夢中なケンちゃんは、わたしの膨らんだ頬に気付かない。そんなにわたしがどうでもいいなら、自分の家に帰ればいいのに。うちになんてこなければいいのに。だけどわたしがそう言うとケンちゃんはおこる。
「糸子がいてくれるから、ぼくは宇宙のことを考えていられるんだよ」
 それをやめろと言っているのに、なぜ分からないのか。拗ねたままのわたしに、「むなしいなあ」って言うから「なんで」ってきいたら、「糸子が笑ってないから」って言うケンちゃんはかわいい。思わず頬がゆるんで、ケンちゃんもにっこりと笑う。宇宙のことを考えていないケンちゃんは眩しくて、わたしは何だか照れちゃって、うまく目が合わせられないから、やっぱりケンちゃんは、宇宙のことばっかり考えててもいいことにしてあげる。



101015



-エムブロ-