花柄



 滑稽というのはどんなもののことを言うんだっけと彼女がきくので、こういうものじゃないかなと僕が名前もわからない踊りを披露してやれば、彼女は「思い出した!」と叫んで腹を抱えて笑った。僕はといえば、慣れない踊りにつまづいてすっころんで頭を強打して死にかけていた。それを見ていた彼女はさらに笑いころげて、「おかしくておかしくて死んじゃいそう!」と言った。僕はというと彼女が楽しそうに笑うのが嬉しくて、さらに頭を床に壁に打ちつけた。そのうちにくらくらしてどうにも立てなくなったので寝転んだまま彼女を見上げたら、彼女はおかしくておかしくて笑いすぎたために窒息して死んでいた。笑顔だった。僕はそのうち目の前が真っ白になって、嬉しくて嬉しくて頭を打ちつけすぎたために死んでしまった。死ぬまぎわ、彼女が昨日着ていたワンピースの毒々しい花柄をぼんやりと思い出したりなんかして、ああ、僕の彼女は本当にかわいいなあと思いながら死んだ。笑顔だった。



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-エムブロ-