ぴいぽう 「ぴいぽう」と、東の向きからこたつに入っていた弟は唐突に呟いた。 南の向きから同じこたつに入っているわたしは、蜜柑の皮をむきながら「ぴいぽう」と反復する。 弟の丸い目が、じっとこちらを見た。 「それ、何の真似?」 「弟の真似」 「真似っ子」 「むけたよ」 スジまできっちり取ってつるつるになった蜜柑の実を、口を開けた弟の頭に乗せた。弟は、顎を撫でられた犬みたいに目を細めて笑って、わたしはしあわせな気持ちになった。 091222