ふみちゃんは嘘を吐いていた
久しぶりに見た彼女はずいぶん大きくなっていた。それでも一目で分かったよ。久しぶりだねって笑う。昔からちっとも変わらない彼女は、わたしが大事にしてたものをたくさん壊した。それでもまだ好きだった。
“ふーみーちゃん、あーそーぼ”
“いーやーだ”
好きだと言ったわたしを気持ち悪いかと問うたら彼女はそんなことはないと笑ったけれど、あれは優しい嘘だったんだね。今なら分かるよ。
“ふみちゃあん”
返事してくれなくたって、目も合わせてくれなくたって、わたしの大事をぜんぶ壊したっていいよ。好きだよ。
“あそぼうよう”
いーやーだ、って笑う彼女の声、今もまだ耳にこびりついている。まるで蝉みたいに笑う子だったなあと思い出して、ふと彼女に会いたくなった。そして昨日、わたしは彼女がもう誰からも手の届かないところにいるのだと知った。
彼女はいつも気まぐれだし唐突で単純で容赦ない。そして今、棺桶の中の彼女はまるで死んでいるように白色だ。その頬を撫でれば涙がこぼれた。長い間忘れていたくせに、今さらまた好きだと言わせてね。冷たく固い彼女の肌。これが今の真実。久しぶりに顔を合わせたわたしの前で、彼女はどこまでも死体なのであった。
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