回想7




1月21日


面会時間を迎えて
男はやって来た


男を見るなり
詰め寄って
引きずり
奴に会わせた


兄貴が胸ぐらを
掴んで泣きながら…
男に言った…


「コイツ頑張ってんのに
アンタはなんなの?」


ボコAにしたい
気分だったに違い無い


続いて母殿も…


「アンタの玩具にする為に
この子を
産んだ訳じゃ無い」


母殿が言い出してから…
目から涙が
止まらなくなってた…


「自殺させるくらいなら…
アンタを私が殺してやる」


母殿は言った


この時初めて思った


オマエ…愛されてたゃん…



って…


男はうんとも
すんとも言わず
ベッドの傍らに
へたり込んだ
無言のまま
奴を見つめてた


状況は変わらず
時間だけが過ぎてった


上がり下がりの
心拍数を
食い入る様に
見てた…


夕方


猫君を気にして
家に帰って欲しいと
母殿


兄貴と一緒に家に帰った


兄貴の携帯がなった…


18:46分


一つの命が亡くなりました…


ボク等は急いで病院へ


母殿も父殿も男も
泣いてた…


昨日のままの
奴の姿で
ベッドに寝て居た
変わったのは
管やらなんやら
体についてたもんが
無くなっただけだった


不思議な気分で
奴をボクは見つめてた…


もぅ…
動かないんだと…


まだこんなに
温かいのに…


って…


死因は心筋梗塞との事
しかし
極めて異例だったとかで
医者より
今後の参考にと…・・・


奴はドナー登録を
していたらしかった


「中身を抜いて…・・・」
と言った途端に
男は泣きながら
止めてくれと
言った
父殿も
彼がこうだから…
と拒否をした


ボクは衝撃を
喰らってた
怒りを覚えてた
拳…握ってた…


葬儀屋を呼び
奴を病院より移動
男の家へ運び
葬儀の話し合い…
折り合いがつかず
男に任せる事になり
翌日また来るからと
ボク等は家に帰った…


永いA
時間を費やして
気が抜けた様な
何かがゴッソリと
抜け落ちてしまった様な
気分だった…


皆でそそくさと
寝たのを覚えてる…