スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

幸せのかたち








彼女の世界は俺が壊した

彼女の全てを俺が奪った

ならば、俺が君の世界になる








「ルドガー」

ミラの優しい声。朝食ができたと、伝えにきた。
あぁ、もうこんな時間か。

「ほんとあなたってねぼすけね、エルがお待ちかねよ?ほら、早く起きて」
「ミラ」
「え…っ、きゃっ」

ミラが俺の髪に触れたことをいいことに、そのまま彼女の手を引いて、抱き寄せた。

「ちょっと、ルドガー!?」
「いいから、」
「…っ…」

ミラの腰に手を回し、そのまま薄桃色の唇に口付けた。

「エルが…待ってるのに」

息が掛かるほどの間近でミラが呟く。
彼女は普通に話しているのだろうが、この甘い表情を見ていると、キスをして、と請われている気がする。

「…ごめん、でも。もう少しだけ」

俺は再びその甘美な唇を味わった。ミラの拳が軽く俺の胸を叩く。
そんな抵抗が、いとおしい。離したくなくなる。

「……バカ」
「ごめん。好きだよ」
「…バカ、……私も、好き」

彼女の額に、もう一度キスを落とし、強く抱き締めた。






俺の選んだ答えは間違っているかもしれない。
だけど、これが、俺の望んだ世界。

君の世界は俺が奪った。

だから、




俺が君だけの世界になろう。










.
続きを読む

link








「やぎゅ、今日ちょっと顔貸しんしゃい」
「…いいですよ」

仁王くんからの呼び出しはいつだって唐突で、私の都合などお構い無し。
だからといって無理強いするわけではない。
強引に見えて、いつだって私の顔色を伺っている。
まるで子供のようだ。




皆は彼を「詐欺師」と呼ぶ。
気紛れで、掴み所がない。故に、誰もが彼に惹き付けられる。
彼に泣かされた女性が何人もいるとか、いないとか。





「お待たせしました」
「おう、こっち」
「今日はどうしました?」
「お前、俺の主治医なん?顔会わせる度に診察されてる気分じゃ」

仁王くんの発言に、思わず顔が緩む。
あぁ、確かに。
笑みを含んでそう答える。

「───仁王くんが、私を呼び出す時はあなたが弱ってる時でしょうから」
「……」
「違いますか?」
「…わかっとーなら、さっさとせんかい」

顔色ひとつ変えずに私を見つめるその瞳が訴えている。
「キスしろ」と

彼の前で“言葉”は、なんの意味も持たない。
それは理解している。
理解してはいるんです。けど

「…仁王くん」
「……ん」
「…あの、」
「……だまりんしゃい」

私の言葉を遮って、口づけを一回。
たった二秒ほどの時間。
まるで、時が止まったかのようだった。

「お前の考えなんぞ顔見りゃわかるんよ。今さらなに躊躇っとんじゃ」
「え…」
「…お前もそうじゃろーが」
「──!」

私と仁王くんは同じ人間ではない。
顔が似ているわけでもない。
性格だって共通する部分など皆無だろう。
だけど繋がっていると、彼が、今そう“言った“のだ。

私を、求めている。

「──仁王くん」
「なんじゃい」
「今日は優しくできそうにありません」
「…そりゃ、楽しみかね」

仁王くんの合図で、もう一度口づけた。

彼が詐欺師など、誰が言ったんだろうか。

(私にはこんなに可愛いのに)

彼にこう言ったらどんな顔をするのか、想像しながら何度も何度も彼にキスをした。











.
続きを読む
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2024年03月 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
最近の記事一覧
アーカイブ