スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

ハローオレンジサンシャイン

persona3 (主人公と真田)

「初日の出を見に行こう」
思えば、彼から誘われるのは初めてではないか。いや、一緒にトレーニングに行こうと誘われたこともあったが、今回は少し違う。
1月1日の朝。僕たちはムーンライトブリッジに立っていた。まだ辺りは暗い。いつもの僕ならまだ寝ている時間だ。僕たちは昨日、とても大事な決断をした。
それは、僕たちの影時間にまつわる記憶を無くすことにもなる。それは、今の僕たちの繋がりを断つということ。もう、二度と思い出せないかもしれなかった。いや、思い出したとして、僕はそこにいないような気がしたのだ。
どうせ忘れてしまうかもしれない。でも、僕は今のこの瞬間が幸せだった。今がよければ何もいらないと思った。ただ、あなたを守ることが、僕の全てだったのかもしれない。あなたを忘れてしまったら、きっと生きる意味を失ってしまうのだろう。
「寒いですね」
「そうか?いつもと変わらん」
あの人はまだ前をじっと見ながら歩いていた。その横顔が綺麗で、僕は何も言えなかった。きっと今、荒垣先輩のこと考えてるんだろうな、なんて嫉妬してから苦笑いをして。
どうした、なんて先輩が立ち止まったとき、水面に光が走った。夜明けだ。
「わ」
手すりから身を乗り出して、僕はただ光に目を奪われていた。夜明けは、こんなにも美しかったのだ。
「俺は毎朝、トレーニングの途中にここで夜明けを見る。俺は、お前にも見せてやりたかった」
僕は微笑んでから、ありがとうございますと言った。先輩は顔を歪めた。
「礼は勝った後だろう?」
「ふふ、そうですね」
僕、本当は先輩のために生まれてきたんじゃないかと思うんです。だって、僕はあなたの行動にこんなにも喜ぶことができる。あなたの言葉に落ち込んだり元気が出たり。僕はあなたに振り回されっぱなしなんだ。
僕があなたを守ってみせます、と目の眩むようなお天道さまに誓って。だからその時まで。

落日

persona3 (主人公と天田)

それはとても暑い日だった。夕日が部屋の中を真っ赤に染めて、僕はそれが真田先輩のようだと思った。
「ちょっといいですか」
滅多に部屋に来ない天田は、ドアを開けた僕が真っ赤で驚いていた。
「なんの用だ、珍しいな」
特に何かあった訳じゃないんですけどね、と天田が含みを見せる。今日の天田は年相応の無邪気な顔だと思った。
「実はですね、夜に寮の前で花火をやるそうなんですよ!リーダーも、やりますよね?」
「そうだな、ロケット花火がいい」
一度やってみたかったんだあれ、と言う僕の意見に天田は反論する。
「僕は、情緒豊かな線香花火がいいです」
お前は幾つだ。そんな老けた小学生を初めて見た。口には出さずに苦笑いをしたら、意図を汲み取って天田はロケット花火が子供っぽいと言った。
「お前も子供だろう」
ぐ、と詰まる天田の背中を押して、部屋を出る。今日ぐらいはしゃげばいいのに、と素直じゃない小学生を振り返る。
「我慢することが大人じゃない。それくらい、大人な天田は分かるだろう?」逆光で浮き出る天田の影が長く伸びて、自分の足と重なっていた。日も、そろそろ落ちる。
「それくらい、あなたに言われなくたって分かっています!」
怒りながら横をすり抜ける天田を見て、あいつはまだまだ大人にはなれないな、とくすりと笑う。僕は花火の計画をしに順平の部屋のドアをノックした。
前の記事へ 次の記事へ