「そうだ、温泉へ行こう」

全てはリボーンの(いつもの理不尽な)一言から始まった。





「・・・温泉旅行は良いけど、なんでこのメンツなんだよ・・・」

ぼやきながら綱吉は後ろを振り返る。
そこには自分の荷物は肩にかけ、綱吉の荷物を大事そうに両手に抱えている(自称)右腕と、なぜか旅行にも関わらず竹刀を持参している腹黒い親友と、並盛の風紀に人より千倍以上うるさかったはずの風紀委員長様と、座右の銘は「極限」な初恋の女の子とは似ても似つかないその子の兄と、見た目は麗しいがクフフな輪廻の電波が入ってる中身の残念な脱獄囚がいた。

「ってか骸また脱獄しちゃったの!?」
「君の為ならあんなもの、3秒で脱獄できますよ」

バチコンと骸が綱吉に向ってウインクを飛ばしてきた。
それを綱吉は無表情でしっしっと手で払う動作をする。

「なぁ、リボーン。これって守護者を集めたんだよな?なんでランボがいないんだ?」

オレの問いにリボーンはそのくりっとしたまんまるの瞳でオレを見上げると、

「だってアイツうざいんだもん★」

とのたまった。
オレはがっくりと肩を落としてため息をつく。

(・・・ランボ、お土産買って来るからな)

今頃家で騒いでいるであろうもう一人の守護者を思い浮かべてまたため息をついた。





「ここが今日泊まる宿かぁ。けっこう大きいな〜」

フロントでリボーンが手続きをしている間、フロント前にあるソファに座りながらきょろきょろと建物内を見回す。
純和風の建物は温かみがあり、少しかさついていた心を穏やかにしてくれる気がした。
・・・・・・したのだが。

「この10代目の右腕であるオレが10代目をお守りするためにも部屋が同室なのが妥当だ!」
「まだツナの右腕は決まってないのな。それに獄寺よりもツナの親友であるオレの方が適任じゃね?」
「何言ってるの君たち。並盛は僕のもの。ということは並盛に住んでる綱吉も僕のものだ。だから僕のものである綱吉と同室なのは所持者である僕であるべきだ」
「極限にけしからーん!!沢田はオレと朝までボクシングについて語りあうのだ!だから沢田はオレと同室になるのだ!」
「クフフ・・・君たち、寝言は寝てから言うべきですよ。ボンゴレの心も体もいずれ僕のモノになるのですから、彼は僕と同室であるべきでしょう」

いつのまにか守護者たちが言い争いをしていた。
しかも誰が綱吉と同室になるかについてた。

・・・果てしなくどうでもいい。

「いや・・・」

待てよ。
もし雲雀さんや骸と同室になったらどうなるのだろう。
脳内でシュミレーションしてみると、徐々に自分の顔が血の気を引いていく気がした。

(死ぬ気で雲雀さんや骸と同室になるのを阻止しなくては!!)

フロントから戻ってくるリボーンを視界に入れ、綱吉はぐっと拳を握った。