注意※フローリングという名の学パロ。ぼかした感じでハナタジ描写ありの後半R18タジハナです。精神的描写はタジハナそのものですが苦手な方、許せない方はブラウザバック願います。
「逆でやってみる?」
何でもないことのように言い放つ田島を
一度だけ、抱いた。
―怖くて出来ない?可愛いね、花井―
不敵な笑みを浮かべ挑発的に誘う田島は、俺が相当な負けず嫌いであることを十二分に理解していた。
意図的な挑発で頭に血を登らせていなければ、勢いで田島を組み伏すことなんて出来るわけがなかった。
自分より少しだけ小柄な男を抱きしめ、俺は情けない程震えた。
怒りと、未知なる好奇心で。
【好奇心と向上心は愛の名を呼ぶ】
「はーないっ」
部活もバイトもなく、何の予定を詰め込まずに贅沢に過ごすつもりでアパートの自室に籠っていると、アポなしで田島が訪れた。今日は自分の為だけにだらだらと過ごすのだと決めていた俺は、緊急以外のメールや電話を一切無視し続けていた。もちろん今部屋の前にいる男の連絡も、だ。
それを快く思わなかったのであろう男は、今日も相手の都合など華麗に無視して我が城、ハイツ志賀203号室へと強行軍で押し入ってきた。相変わらず本能赴くままの男に半ば諦めを覚える。
大学という狭い生活圏内で俺の本日の予定というのは割と容易く把握出来てしまうのが現状だ。部活は元よりバイトのシフトですら同じ職場の人間が口を割ってしまえば特別な予定などないに等しい男の所在など瞬く間に知れてしまう。恨むべくは自分の型にハマりつつある生活パターンともいえるだろう。
追い返す理由もないので、仕方なく連絡を無視し続けたことには触れずに部屋の中に通す。客人には麦茶の一杯でも出すのが俺の流儀だが、この男は放っておいても自分で自分の喉の渇きを潤すことは出来る。つまりは俺の部屋を勝手に漁って腹を満たす、非常に無礼な男なのだ。そんな礼儀知らずに自分の流儀を通すもくそもない。暇つぶしにここに来たことなど端から目に見えていたので、特別に構うこともせず、俺は自分のベッドに戻り再びぐだぐだしはじめた。
そして田島も田島で勝手にゲームを出して遊び始めた。いつもと変わらない光景を横目に、寝転がっていると、窓から差し込む穏やかな日差しの心地よさに睡魔が襲ってきた。
田島が居ようが関係ない。今日は自分自身の為に時間を過ごすのだと決意を固めていた俺は客人そっちのけで微睡の世界へと足を踏み入れかけた。
あともう少し、意識を手放しかけたその時、瞼に柔らかく暖かい何かが触れた。
その正体がなんなのか、一瞬にして脳が覚醒した俺にはすぐに理解出来た。遊びに来たにも拘わらず結局ほったらかされた男がいたずらを仕掛けてきたのだ。瞼に吸い付き、舐めたり息を吹きかけたりして全く離れていかない。
しかしここで驚いて目を開けてしまえば、結局男の思うツボだ。俺は断固として狸寝入りを決め込んだ。
「花井〜、はーなーいーっ」
「暇だよ〜、目え覚ませ」
「……襲っちゃうよ?」
暇だ起きろと散々喚めいた揚句、恐ろしい言葉をサラリと吐いてしまう程度にはこの男はスケベである。
そんな脅しに驚き飛び起きてしまうほど、俺の心臓はヤワじゃない。逆を言えばその程度の脅しにすら免疫がついてしまったのだが。恐ろしい。
ギャグだと笑い飛ばせるほど穏やかな関係でもないのが更に恐ろしい。
はてさてこのまま眠るチームメイトを気にせず襲う男となるかどうか、5分5分…いや6分4分……、いや、3分7分くらいの信用を胸に、大学きっての四番打者の行動の行く末を伺った。
しかし3分の信用も吹っ飛ぶ手早さで、田島は真っ先に俺の口内に侵入してきた。
「んんん〜〜〜っ!!!」
窒息死の3文字が頭を過った頃、ようやく田島は口の中を這いずっていた舌を抜いた。
「狸寝入りが下手くそ、花井」
「てんめー…最初から知ってたのかよ」
「ん?寝てても襲ったよ?」
「最低だな、ろくでなし」
「今更じゃん。な、しようよ」
「俺、眠いんだけど」
「ここ、固くなってるから大丈夫っしょ」
股の間に手を伸ばし田島が嬉しそうにさすってくる。自分の分身の健全さに半ば嫌気がさしながら、変わらず卑猥な動きをして見せている田島の手の甲をつねった。
「いってっ!!」
痛そうに顔を歪める田島の顔が、いつかの田島の表情とダブる。
初めて田島を抱いた日、苦痛に顔を歪めているときの表情と酷似しているような気がした。
どしたの、花井?
ひどく驚いた俺を心配したのか、馬乗りになっている田島が上からのぞき込んでくる。
だからなんだとも答えられずいると、不思議そうにしながらも首筋に鼻を埋めてきた。
あー…、今日は俺がやられるんだ。
一度だけ逆転した立場はあの日だけ。
その後ポジションの変更は行われず、田島は相変わらず気まぐれに俺の身体を求め続けた。あの時、田島が何を思ったかは分からない。割合長い時間をこの男と過ごしてきているはずだが、単純に見えて複雑な心理は未だに捉えることが出来ずにいる。
しかし、あのコトを境に変わったことが色々とあった。
「な、これ、気持ちいいっしょ?」
行為中、不敵な笑みを浮かべ自信満々に不埒なことを聞いてくる。そしてそれはこの失礼な男の思い違いでは決してなく、深く果てしない心地よさを俺に与えてきた。以前までの行為では感じることなかったような快感の波に襲われ、逆に恐怖を感じることすらあった。
声を我慢するのもツラいような感覚に、ただただ身悶えるしか出来ない自分は、惨めだ。
深く、抉るように前立腺を責められ、震える。
以前から弱い部分を、更に執拗に攻められているようで快感飛び越えて苦痛にも感じられた。堪らず、俺は自分の中にいる田島を思い切り締め付けた。
くっ、と、田島も辛そうに息を吐き出した。ザマぁみろ。
心の中で悪態付いていると、男は苦しそうにしながらもイヤらしい笑みを浮かべた。
「花井もさ、なんだかんだでエロくなっちゃったよね」
「は?」
「逆になってやってから、俺がどうすると気持ちイイかとか、分かったっしょ」
前より、意地悪くて気持ちイイことしてくれるようになった。
悪い笑みを浮かべる男は、日頃太陽の下で無邪気に白球を追い掛ける男の顔とはまるで別物で背筋が冷える。
それはお互い様だろうと、俺は思った。前より深くて残酷なほど強い快感で責め立てるようなったのは田島の方じゃないのか。たった一回身体を開いたからと言って、あんなにも身体のツボを理解してしまうものなのだろうか。
そんなはずがない。決して平坦ではない男を受け入れるという辛く険しいけもの道を俺自身が歩み、それを自ら証明しているのだから間違いない。それとも、田島は受け入れることに関しても天才だとかいうのだろうか。もしもそうだと言うのなら、俺はむせび泣くしかあるまい。俺の歩んだ道の後には冗談じゃなく血と涙の後が点々と残っているのだから。
最初から快感を得られるなら楽に越したことはない。
しかし、仮に田島が最初から楽しめたのだとしたなら、それは男としてのアイディンティティの崩壊に等しいのではないのだろうか。もしそうであるのなら俺は嬉々として再びポジション変更を申し立てることが出来るのだが、残念ながらこの雄々しい男から今の所抱かれたいとかそういった誘惑めいたものを感じたこともない。そんな欲求が欠片でもそんなあるのならこの男のことだ、誘う云々をすっ飛ばし馬乗りになって逆に俺から何もかも搾り取っていくに違いない。
ますますあの日の田島の行動が分からなかった。
この男は、あの時何のために自分に身体を開いたのか。
「花井、集中」
悶々と思考に耽っていると、快感という名の武器を持って田島が執拗に攻めてくる。
何よりも田島を思っている最中、気が逸れていると思われていたようで、心外だ。
「っは、お前、…何であの日、俺に…」
息が切れ切れになって、伝えたいことがうまく口に出来ない。そもそも口にしていいのかもよく分からない。全てうやむやにして闇に葬った方が心穏やかになることだって世の中には五万と存在する。それでも知りたいことを我慢するのはよくないことだ。
「ん?何でこの間逆でヤッたかってこと?」
相変わらず何でもないことのように田島は言い放つ。本当に好奇心だけで境界線とも言えるべきものを飛び越えたのか。向こう見ずにもほどがある。
「分からないの?花井」
さも不思議げに問い返された。質問の答えになっていない。
的を得ないやり取りに苛立っていると、俺自身を貫いている男は堂々言い放った。
「花井がどんな風に感じてるのか、知りたかったんだよ」
「……は?」
「は?じゃないでしょ。身体の相性って超ジューヨウなんだぜっ!!知らないの??」
「い、イヤ、問題はそこじゃなくて」
「ゲンミツに問題だよっ。男同士はコツ知らないと全然気持ちくないって聞いて、俺、悩んだんだからな」
聞いたってどーせ花井は答えてくんねーしっ。なら、実際体験して勉強するしかないじゃん。
あんまりにケロリと言い放つので、拍子抜けしてしまう。
「ち、ちなみにそれって、気持ち良かった……ワケ?」
「ん?ツッコまれるのは痛かったよ。初めてで気持ちいいわけねーって実感しちゃったよね」
「で、デスヨネー」
内心ほっとしている自分がいた。
「でも、新鮮で面白かったな。花井が」
「お、俺!?どーせヘッタくそだったってんだろっ」
「誰もんなこと言ってねーじゃん。すっげぇ気ぃ遣ってくれてるの分かったし、丁寧だし優しかった」
自身の行いの評価を、今まさに自分の中にいる男の口から聞かされているこの状態は滑稽で、気恥ずかしくどうにかなりそうだ。
「してる時、ずっと花井のコト見てた。どうすればお前が気持ちいくなってくれるのかなって考えて、で、思ったんだ。花井がしてくれることすればお前が喜んでくれるんじゃないかなって。俺のこと気持ちよくしようって花井がしてくれたことって、花井いつもされたら気持ちいいて思うってことだろ。そしたらさ、わかっちゃったんだよね、いつもどうすれば花井がヨロコぶのか」
ね、入口のここ、この間こうしてくれたけど、俺痛くて分からなかったんだよね。花井、こうされると気持ちイイ?
これは、一体なんのプレイなのか。
自分が施した行為がこんな羞恥と快感の入り混じったものになって自らに却ってくるなどと、誰が想像するだろう。ただ、田島を傷つけないように、初めての行為での思い出が辛かっただけにならないように必死になっていたので内容はあまり良く覚えていない。しかし、その行いがイコール自分自身のヨロコびとやらに直結しているとは盲点だった。さすが田島といったところか。野球以外にもそのズバ抜けた観察力が活かされているとは末恐ろしい。
「たかがセックスに自分の身体差し出すなんて、お前、本当馬鹿」
「馬鹿じゃねーよ。大事なことだろ。これでお前がもっと楽しめるなら安いモンだ」
「…それは、安売りしていいもんじゃねーぞ」
「ね、花井、本当にいい加減集中しろよ」
なんだかんだと意識が飛び飛びの俺に苛だった田島は、噛みつくように、口内を貪っていく。何度でも俺自身を貫いてこれでもかと全てを食らいつくしているというのに、まだ足りないかのように。
俺を抱く行為、俺自身に与える快感の方が、自分の身体を開かされる事実より重い価値を持っているとでも考えているのだろうか。性への関心は人一倍強い男だと思っていたが、ここまでくるといっそ狂気に近いような気がする。本当の意味で恐ろしく、だが少しだけ愛しさも感じた。
「狂ってる……」
田島も、俺も、正常も、異端も、どこからか境界が分からなくなっている。その結果がこれか。愛情も、恐怖も、友情も、何をなんと呼べばいいものか。
ただ、目の前の男の欲、それだけは確かに感じた。なんとも分かりやすく心地いい。
「花井が良ければそれでいんだよ。それだけで、おつりが返ってくる」
食らわれてるのは俺の方なのに、そんな即物的な足し引きじゃ表せない何かが確かに存在していた。
この与えることを惜しまない男に、自分は何を返せるのだろうか。
たった一言、
きっと口に出して伝えることは出来ないのだろう言葉が、
一瞬だけ頭に過って、消えた。
END...
もっとほんわか終わらせるつもりがなぜこんな感じになったのか。
学生パロは好きだ惚れたを言葉にすることをためらう微妙な駆け引き感が好きです。自分設定なのでその辺のこだわりをころころ出来て楽しい。片方のパロでは口にしちゃったり片方では内に秘めたままにゃんにゃんしたりまさにオレ得以外なにものでもないです(笑
)
リバなんていう珍味を最後まで閲覧いただきましてありがとうございました。