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貴女より貴方と。(乱あ)


デザートは別腹。
誰が言ったか知らねーが、名言だよな。
男が甘いもの好きだっていいじゃん?差別してんじゃねぇよ。それに、うまいもんはみんなで食った方がもっとうまいんだしさ。




「…なぁーに変な理屈こねてんのよ」

「真理だろ?」

「甘いものを食べることに対して、わざわざ理由をつける所が男らしくないっつーの。それにアンタ、今は女になってるくせにぶつぶつ言って……バカねー」

「ぬわにぃ〜?」

「ホントのことなんだから、仕方ないでしょ」

「………」




オレの向かいの席に座るあかねは、呆れたようにフォークをケーキに刺して口へ運んでいる。
今日はなびきから売りつけられたデザートの割引券を持ち、わざわざ水をかぶって喫茶店にやって来た。女1人で行くのも怪しまれそうな気がして、不本意ながらもあかねを誘った。…ほんと、不本意で。
放課後が待ち遠しくて、そわそわしながら早弁したりもした。安くパフェが食えるなんて滅多にないからな。決してあかねと行くからとか、そんなんじゃなくて…。
あーだこーだと自分に言い訳して、とりあえずクラスの奴らに見つかっても誤解されないようにするため、女になっていたりする。




「なによ、せっかく頼んだくせに食べないの?パフェを食べに来るの楽しみにしてたんでしょ」

「あかねに言われなくても食うっての。オレは見た目も味わう男なんだよ」

「いつもがっついてるくせに」

「悪ぃか」

「…べつに。いいんじゃない」




なんか知らんがあかねの奴、怒ってる…?
今日はまだ何もトラブル起こしてねーし、3人娘や良牙やムースも見かけない。なびきがつけて来ている気配もない。
オレは生クリームをスプーンで掬いながら、すました顔で紅茶を飲んでるあかねに内心ひやひやする。あ、もしかしてダイエットでもしてたとか?でも、それなら誘った時点で断られてるだろーし…。




「なー、お前さ、なんかあったのか?」

「………」

「言いたくないならいーけど」

「何でもない、わよ」

「ふーん」

「そ、その、どうしたらこんなに美味しいケーキが作れるのかなって、考えてただけだもん」

「ああそっか。あかねには絶対出来ねぇもんなあ」

「うるさいらんまっ」




あれ。やっぱり気のせいか?
怒ってるわけじゃないなら、拗ねてる?でもなんで?
理由を考えながらオレはパフェを食べ進める。あかねをじっと見てたら『ジロジロ見ないでよ、変態』なんて言われちまった。女同士で変態もなにもねーだろ。
まあホントはオレが男だから、気にしてんのかなとも思ったが。いくら考えてもわからないものは本人に聞くしかない。




「なあ、」

「なに?」

「オレ、何かしたか?」

「……後ろめたいことでもあるの?」

「見当つかねぇから聞いてんだよっ」

「何もしてないなら気にすることないじゃない」

「お前の態度が気になったから聞いてんの」

「あたし?」




きょとんとした顔をして、あかねはオレを見た。もしかして今まで不機嫌な態度を取っていたことは無意識だったってのか?
なんでえなんでえ。気にしたオレが心配性みてーじゃねーか。




「…何もねぇなら、いいけどよ」

「何もないわよ。今更だから」

「はあ?わけわからん」

「言ってもムダだもん」

「そうかいそうかい。あっ、店員さーん!もういっこパフェ下さーいっ」




思いっきり媚びた声で注文すると、男の店員は機嫌良さげに返事をして店の厨房に向かった。
ちょろいもんだぜ。こういう時は女の格好が便利だよなぁ。うきうきとパフェの残りをかきこむと、また刺々しい視線を感じた。




「………あんたって…」

「なんだよ」

「なんでもないわ」

「?」




今日のあかねは何を考えているのかさっっっぱり分からねえ。せっかく喫茶店に来たのにぶつぶつ何か言ってるし。
息がつまりそうな空気の中、オレが2つ目のパフェを食べている間、ケーキを食べ終えたあかねはゆかから借りたらしい小説をずっと読んでいた。




「あ、食べ終わった?」

「おー」

「1つ目よりも早かったのね」

「今から帰れば丁度夕飯だろ」

「よくそんなに食べれるものね…、感心するわ」




喫茶店を出ると、夕焼けが遠く、深い藍色に空が覆われ始めていた。
結局、あかねが何に対して拗ねていたのかは分からず終い。尋ねてもはぐらかされてばかりだ。



「なー、もしかしてさ、オレが女になって喫茶店入ったのが嫌だったとか?」



冗談と興味半々でそう聞いた瞬間、隣を歩いていたあかねはぱっと俯いた。
……あれ、もしかして?もしかする展開?




「………」

「え、マジで?なあ、」

「……っ」

「男のオレと喫茶店に行きたかったんだ?」

「…〜〜っ、バカッ!」

「へぇ〜、そっかそっか。んじゃ悪ぃことしたなあ」

「にやけないでよ、気持ち悪い」

「んな怒るなって」

「だっ大体、あたしはまだ肯定したわけじゃ…」

「『まだ』、だろ?」




ニヤリと笑うと、あかねはムッとしてオレのおさげを引っ張った。
男の時よりも身長差が無いせいであかねの顔がものすごく近い。途端に意識して赤くなったオレを見て、今度はあかねがにっこり笑った。このアマ、からかいやがって…!!




「男だったら、キスの1つでもしてあげたんだけど。残念ね?」

「お、まえなぁ…っ」

「調子に乗るからよ。ばーか」

「覚悟しとけよ」

「は?」

「今夜デザート食いに行くから」

「夜中に?どこへ?」




暗に夜這いに行くとでも言ったようなものだ。
オレにしては珍しく積極的に、譲歩しまくって言った発言なのに、目の前の鈍感女にはちゃんと意味が通じていないようで。
からかう口調で、あかねの手をぎゅっと握った。




「決まってんだろ、あかねの部屋だよ」

「………さ、さいってー!!!」

「なっ、人のこと煽っといてそりゃねーだろ!」

「ふざけるのもいい加減にしなさいよー!」

「こちとら大真面目だ悪いかこんちくしょー!」

「いやあああ!そんなに大声で言わないでよらんまのバカーッッ!!!!」




開き直るとますます気が大きくなるもんだ。
こうなったら早く帰って夕飯食って、風呂入って男に戻ったらあかねが寝る前になんとか…、
飛んでくる拳を避けながら歩いていたせいで、下からの攻撃に気付かなかったオレは、みぞおちにあかねの膝蹴りを見事にくらった。




「…っ、て、てめ…」

「自業自得よっ」




パフェを1つで我慢してたらもう少しマシな扱いされたかな、と後悔しつつ、ずんずん先へ歩いていくあかねの後を少しふらつきながら追いかけた。
とっておきのデザートはまだまだお預けみたいだな。






end

純情シャイボーイ(りん桜)


廊下を歩いていると、後ろから肩を叩かれる。振り向くとそこには魔狭人との因縁で巻き込んでしまった事件にて知り合った2年生の轟レイジがいた。




『おい六道、ちょっといい?』

『何の用だ?』

『先輩に対して敬語くらい使えよ…、まあいいや。実はさ、明後日映画に行こうと思ってたんだけど、おれもスズも行けなくなっちまって。チケットが勿体ないから、良ければ貰ってくれねぇか?』

『え…、しかし』

『いーんだよ。なんか知らん間に助けてもらったし。礼だと思って』




レイジはオレにチケットを2枚握らせ、ひらひら手を振って去っていった。
明後日だなんて言われても…、それに映画に対して強く興味があるわけじゃない。だがタダでくれたものを無駄にしてしまうのも悪い気がする。
どうしたものか…。
と思っていたのはもう何時間も前。




「六道くん、用ってなぁに?」

「…そ、その…」




レイジにチケットを貰って、あっという間に放課後。そして真宮桜をクラブ棟に呼んだまでは良かった。
なかなか言い出せず、小一時間は経っただろうか。




「依頼があったとかじゃないの?」

「あ、ああ…。実は、だな」


「も〜!りんね様ってばどれだけ時間かければ気が済むんですか!」

「え。あっ!?」




痺れを切らした六文はオレの手からチケットを奪って真宮桜に向かって飛び付いた。
しまったと思っても既に時遅し。




「映画のチケット…?」

「りんね様が轟レイジから貰ったそうですよ。魔狭人の件でのお礼だそうです」

「へー…」

「明後日、桜さまはお暇ですか?」

「うん。特に予定は無いけど…」

「なら、どうぞお2人で行ってきて下さい!」

「おい六文!」

「たまにはいいじゃないですか。最近依頼も少ないし」




それはそうかもしれんが、いくらなんでもストレート過ぎるだろう!
代わりに言ってくれたことは有り難かったが、真宮桜の都合もある。それに、もしかしたらオレと映画なんて嫌かもしれないし…、いや、もちろん嫌われてはいないと願いたいが。
おそるおそる、顔を上げると、真宮桜はチケットをじいっと見つめていた。




「ま、真宮桜…?」

「………六道くんがいいなら、一緒に行ってもいい?」

「え」

「この映画ねー、リカちゃんとミホちゃんはもう観てきたらしいから気になってたんだぁ」

「あ…ああ、別に、構わない」

「ありがと。楽しみにしてるね!」




にやにやとした笑みを浮かべて小突く六文に、オレは無言でチョップをかまし、咳払いをひとつした。
なんだか意識すればするほど顔が熱くなっていく。
いつからか、真宮桜といるだけで心が温かくなって、楽しいと感じるようになった。初めて逢った時から不思議な奴だと思っていたが、ここ最近は真宮桜のポーカーフェイスにこちらがたじろいでしまうくらいだ。
動揺しているとは気付かれたくない。必死に平静を装ってはいるが、そんな気持ちを果たして上手く隠せているのか、不安で仕方ない。




「…あ…、」

「何?」

「なん、でもない」

「?」




いつもありがとう、なんて気恥ずかしくて言えないけれど。
この程度では全然足りないと思うが、普段世話になっている分、少しくらいは礼がしたい。
そう思うのは普通だろう?…深い意味なんてないんだ。
気のせい、気のせいだと何度も言い聞かせて、オレは六文と楽しそうに話をしている真宮桜を見た。その横顔に胸を締め付けられる。




「桜さまっ」

「六文ちゃんはいつも元気だねー」

「はい!ぼく、りんね様のサポート役として早く一人前の立派な黒猫になれるよう毎日修行してるんですよ!」

「へー、毎日ってすごーい」

「とーぜんですっ!」

「偉いね、六文ちゃん」

「えへへ…、桜さまにそう言っていただけると嬉しいです」

「そーだ。最近暑くなってきたから、今度フルーツゼリーとか持ってくるね。うちのママ、お菓子作りが好きで、よく作り過ぎちゃうから」




六文を抱いたまま、真宮桜がこちらを向いて話し掛けてくる。
取り乱してはいかん、落ち着け、オレ。いつも通りいつも通り………、フルーツゼリー、って言ったか?
思考が一時停止し、目を丸くする。




「やったぁ!りんね様、ゼリーですって!デザートですよ!」

「それは豪勢だな…!」

「ふふ、ママと一緒に頑張るね」

「わーいっ」

「いつもすまん」

「ううん。いつも喜んでもらえるから、私も嬉しいよ」




真宮桜の言葉が、ゆっくり心に染みていく。
デザートで占領されてた頭の中に、笑顔が焼き付く。目眩がする。気が付けば隣にいて、笑いかけてくれている。
オレは真宮桜に、何もしてやれないのに。




「………真宮、桜」

「はい?」

「これ、やる」

「せっかく作った造花…、私が貰っちゃっていいの?」

「ああ。オレにはそれくらいしかやれないからな」

「別に気にしなくていいのに。…でも、これキレイだね。嬉しい。ありがとう」

「…うん」




造花のバラを嬉しそうに受け取ってくれたことが、なんだか照れくさい。
柄でもないことしたからだ、きっと。




「おはよー、六道くん。ね、見てみて!昨日貰った造花、付けてみたの」

「え…」


「わー、桜ちゃんのコサージュ可愛いね!」
「いいなぁ〜っ!どこで買ったのぉ?」




翌日、教室で挨拶をしてきた真宮桜の鞄には、オレがあげた造花のバラがコサージュになって付けられていた。
リカとミホが騒ぐ中に巻き込まれないように、オレはコソコソ廊下に避難する。まさかあんな風に付けてきてくれるとは思わなかった。
映画に行くのも、あいつらにバレたら面倒なことになりそうだ。




「えーっ!?2人で映画ぁ?」

「ちょっと桜ちゃん、何があったのよー!?」


「へ?そんなに騒ぐことじゃ…」



「………1校時はサボるか…」




教室から聞こえた声に身の危険を感じたオレは、踵を返して校内の見回りに行くことにした。



「まったく、りんね様ってば相変わらずヘタレで困っちゃいますね」



六文の呟きは、もちろんオレの耳に届かない。






end

響家

捏造響兄妹!

もちのろんで2人共方向音痴です。



長男(画像右)
響氷牙(ひょうが)15歳
中2か中3


長女(画像左)
響ほのか(仄)10歳
小5

ほのかは勇馬の追っかけやってます^^←




アンケート投票もご協力有難うございます!
チルドレンキャラを考えつつ、どんな名前になるのか今からとても楽しみです。

幸せを抱いて(早乙女親子)

※次男ほとんど出ません




時が経つのは早いもので。



「あかね、体調どうだ?」

「へーき。乱馬こそ、ちゃんと2人の面倒見ててよね」

「見るっつってもなぁ…、おやじ達がいるから大丈夫だろ」

「ふふ、おとーさん達ってほんと親馬鹿ならぬ孫馬鹿よね」




白い部屋の中、あたしはベッドの上。傍らには乱馬が座ってる。
大きくなったお腹を撫でると、ぽこん、中から反応が返ってきた。あたしと乱馬の赤ちゃんがここにいる。そう思うだけで、この腕に抱く日が待ち遠しい。




「陣痛きたらすぐ言えよ」

「わかってるってば。もう3度目なんだし、ちゃんと言うわよ」

「…ならいい」

「アンタ緊張し過ぎ。まーったく、情けないなぁ」

「なっ、悪いか!」

「もう少し男らしくしてなさいよね、お父さん?」

「無理して笑ってるお前に言われたくねぇんだけど…。あー、もういいから辛いなら寝てろ。あおいと勇馬のことは心配すんな」

「うん」

「今日おふくろは泊まるっつってたから、何かあったら言えよ」

「うん。ありがと」




乱馬とこんな会話をするなんて、昔のあたしには全然想像出来なかったな。相も変わらずぶっきらぼうで素直じゃない優しさは、どこか安心する。
心の片隅で、結婚する前の、許婚になったばかりの頃のあたし達は鮮やかに思い返せるのに、随分遠い所まで来たみたい。
ドアが開いてぱたぱたと聞こえて来る足音に、乱馬が立ち上がった。




「あのねおかーさん、えっとね、そーうんおじーちゃんにね、うさぎさんのぬいぐるみね、かってもらったの」

「おれのもっ、かーさんおれのもみてみて、くるま!かっこいいでしょ!とーさんにはあげないよーっ」


「良かったね。あおい、勇馬」

「こーら。お前ら、病室では静かにするって約束したよな?」


「あ、そうだった」

「あおいがうるさいんだよ」

「ゆーまもでしょ!ていうか、あたしはゆーまのおねえさんなんだからおねーちゃんってよんでよ!」

「えー、めんどくさい」

「ゆーま!」

「やっぱりあおいのほうがうるさいじゃんか」




長女のあおいと、2つ下の長男、勇馬。
ケンカもするけど仲の良い姉弟で親としてはとても嬉しい。もうすぐ、ここに1人増えるんだね。




「はいはい、2人ともそのくらいにしときなさいね」

「お前ら毎日ケンカしてるよなぁ」

「あたし達が言えるセリフじゃないわよね、それ」

「……」

「あおいも勇馬も、ほんと乱馬そっくり」

「オレ達の子供なんだから、似るのはトーゼンだろ」




まるで昔のあたしと乱馬。
兄弟だったらこんな感じだったんだろうな。でも実際のあたし達は夫婦。子供の頃って好奇心旺盛だから、何でもやりたくなるのよね。
ましてやあおいは小学校、勇馬は幼稚園に入ったばかり。




「おなかいたい?おかーさん」

「まだ大丈夫よ」

「おとこのこかな、おんなのこかなっ」

「あおい、生まれてからのお楽しみだぞー」

「おれおとうとがいい!」

「お兄ちゃんになるんだから、勇馬は早くおねしょ治さなくちゃね?」

「…わ、わかってるよ!」




大切な存在が、家族が増えた。毎日毎日、昔と変わらず賑やかで楽しくて。
早く退院して、赤ちゃんと一緒に家に帰りたいな。
そう呟いたら、乱馬はさっさと帰って来いって言ってくれた。家事…というか料理や裁縫が苦手なあたしでも、居場所があって待っていてくれる人がいるのはとても嬉しいことだ。




「ねぇ乱馬」

「ん?」

「"家族"って…、やっぱりいいものだよね」

「……これからまた1人増えるんだぞ。オレは、お前の手を握ることくれーしか出来ねぇけど…」

「それで充分。あたし、頑張るから」

「おう」




お腹を痛めて産んだ、大切な子供達。みんなあたしと乱馬の宝物。
ケンカしたって、嫉妬したって、憎まれ口を叩いたって、結局は"ここ"に戻ってくるから。
愛しくて大切な存在を守るためなら、あたしも乱馬も努力を惜しまないの。そういう風に、育ってきた。
素敵なお母さんになりたいと思うけど、正直言ってそれがどんなお母さんなのかはまだわからない。幼い頃の、お母さんの記憶と、早乙女のお義母さんとを重ねて、想像を膨らませる。




『おかーさん』

『なぁに?あかね』

『あのね、おねーちゃん達がね、あかねにキャンディくれたの!いっしょにたべよ!』

『まあ…ありがとう。あかねは優しいわね』

『えへへ、おかーさんだぁいすき!』




お母さんみたいに、なりたいな。懐かしい記憶はいつしか私の目標とする"お母さん"のお手本になっている。
今ある幸せを噛みしめて、これから先の未来も、家族みんなで過ごしていけるといいなと思った。
退院したら、家事に育児、頑張らなくちゃ!




「……っ、」

「…どうしたあかね?まさか陣痛…」

「ち、違うわよ!ばかっ」

「なっ、人が心配してやってんのにお前って奴は…!何年経っても可愛くねぇっ」

「なんですってぇ!?」


「おかーさん、おとーさん、けんかしちゃだめだよ」

「ここびょーいんだよ。しずかにしろっていってたのとーさんじゃん」


「「………」」




我が子に仲裁されるあたし達って一体…。
内心そんな自分を情けなく思うけど、それは乱馬も同じようで。顔を見合わせて苦笑した。
あおいと勇馬はきょとんとしてこちらを見上げてる。




「あーあ、お前らにゃ適わねぇなー」

「ほんと。あたし達よりしっかりしてるみたい」


「「?」」




あたしは手を伸ばしてあおいと勇馬の頭を撫でた。
もうすぐ家族が増えるよ。お姉ちゃんとお兄ちゃん、仲良く面倒見てあげてね。
そう囁けば、2人とも嬉しそうな顔で笑った。




「はやくあいたいな」

「おれも」

「みんな待ってるぞ。早く生まれて来いよな」




お腹に向かって掛けられる声に反応したのか、ぽこん、と中でお腹を蹴った感覚。
おとーさん達もやってきて、病室は賑やかになる。
ふとお腹に痛みが走ったと思って乱馬に言えば、あれよあれよという間に分娩室へ運ばれて、部屋に響いた産声。




「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」



「っ……、ありがとう、ござい‥ます…!」




しわしわの顔だけど、あおいや勇馬の面影が重なって、涙が零れた。側でずっと手を握っていてくれた乱馬も、涙ぐんでいたような気がする。
隣にはタオルにくるまれた赤ちゃんが寝かせられ、指でそっと小さな手に触れれば、きゅっと握ってくれた。
それが何より嬉しくて。




「頑張ったな、あかね」

「…何泣いてんの、」

「ば、泣いてねぇよっ」

「うそつき」

「……悪ぃか」




みんなに、ありがと。
支えてくれて、見守ってくれて、側にいてくれて、笑顔でいてくれて、愛してくれて、ありがとう。
新しい家族が増えて、幸せがまたひとつ増えた。




「乱馬、名前どうしよっか」

「そりゃー考えてた通り、人望の厚い人になってくれるよう、湊馬で決まりだな」

「なに威張ってんのよ」

「…でも、いいと思うだろ?」

「ま、ね」




新しい家族。
これからどんな風に成長していくのか、楽しみで仕方ない。




「湊馬、生まれてきてくれて…ありがとう」

「これからよろしくな、湊馬」






20100514

早乙女家

捏造早乙女3兄弟!

とりあえず早乙女家は以下の通り。中学は制服、小学は私服。



長女

早乙女あおい(葵)13歳
中2


長男

早乙女勇馬(ゆうま)11歳
小6


次男

早乙女湊馬(そうま)7歳
小2




他のお宅はもう少しイメージ練ってきます…。
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