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SWEET NIGHT DREAMA

スザクとルルーシュ






ずっと好きだった人がいる。
初等部から同じクラスで、世間でいうところの所謂幼なじみにあたるが、俺と彼は特段仲が良かった訳ではない。
だけど、気付くといつも彼を目で追っていた。

優しそうな横顔。翠色のキラキラした瞳。ふんわりとした笑顔。

世間話を交わした事は何度かある。彼がそれを覚えているかは分からない。だけどそれは俺にとって、何にも変え難い宝物の様な時間だった。


中等部に進んでも、高等部に進んでも、俺の気持ちが揺らぐことなど一度も無かった。
だから、呼び出された時は本当に驚いた。

「君の事が、昔から大好きでした…!僕と付き合ってください!」

夢を見ているのではないかと思った。
告白されているところを想像した事は何度もあるが、本当にその言葉を貰えるとは思っても居なかったから。

「…いいよ。その代わり、半年だけでいいなら。」

だから、可愛げのない返事なってしまったことを少しだけ後悔した。でも、いい。これでいい。
半年もの時間を貰えるのなら、それだけで俺はこれからも強く生きていける。本当に彼のことを思うなら、断るべきだったのかもしれないけれど、最後の我儘だ。

返事がないから、非常識だと嫌われてしまったのかと思い恐る恐る顔を上げる。でも、これで良かったんだ。最後の最後まで強がろうとしたその時。

「不満か?なら仕方ないがこの件は無かったことに」

「ふふふ不満だなんてとんでもないです!!よろしくお願いいたします!!!」

慌てふためきながら差し出された右手を、握らずにはいられなかった。
少し汗ばんだ手で力強く握り返されて、あぁ、やっぱり好きだなと、改めてそんな事を思った。






SWEET NIGHT DREAM







「スザク、今日は部活の助っ人はないのか?」

昼休み、スザクと一緒にご飯を食べる貴重な時間。毎日言葉を交わせるだなんて、なんて幸せ時間なんだろう。

「ううん、今日はないよ。最近は断ってるんだ。君と一緒にいたいから。」

「…そうか。別に無理しなくてもいいんだけどな。」

当たり前みたいに宝物みたいな言葉をくれるスザク。本当に、俺の事が好きなんだなと思うと今だに信じられないけれど、この笑顔が嘘ではない事は、ずっと彼を恋い慕って来た俺が一番よく知っている。

「ちょうど1ヶ月経ったけど、他に何かしてみたいことある?」

付き合ってからずっと、スザクは沢山の事を教えてくれた。いつも厳しくしつけられ、勉強ばかりしてきた俺にとっては新しい発見ばかりで。
カラオケや遊園地があんなに楽しい場所だったなんて、生まれて初めて知る事が出来た。

充分すぎる程の時間を過ごしている自覚はある。だけど、やはり興味はスザク本人にあるもので。

「そしたら、おまえの家に行ってみたい。」

「え?!僕ん家!?」

「あぁ。駄目か?」

「いや駄目なんて事は一切ないんだけどでもどうだろ、僕一人暮らしだからなんて言うか、あの、」

ダメ元で聞いては見たもののどうしても諦めきれなくて、珍しく食い下がってみたところ、スザクは顔を真っ赤にしながら何度も何度も頷いてくれた。他の人の前でこんなかわいい顔、絶対にしてほしくないだなんてそんな事を思ってしまった。





「へぇ、意外とキレイにしてるんだな。」

「いや、それほどでも…」

スザクの匂いがする。いつもここで過ごしているんだと想像するだけで胸がいっぱいだった。自分から言い出したくせに、なんだかそわそわして落ち着かない。

「あ、これ!アルバム!」

必死に平静を装うと、初等部のアルバムを開き、ページを捲りだした。

「お前、この時お弁当ひっくり返して大変だったよな。あ!これは運動会でかけっこ圧勝した時だろ?」

「…よく覚えてるね?」

スザクが心底不思議そうな顔で俺を見てやっと失態に気づいた。
俺はずっとスザクが好きだったけど、それを伝えていないし、今後も伝えるつもりもない。
多分これからもずっと好きだけど、胸に秘めて生きていくのだと思う。

「…え?!あ、俺はその、記憶力が良い方だから!割と皆の事覚えてるんだ」

「へぇ〜!ルルーシュ頭いいもんね!!流石だね!!」

何とか誤魔化せたか?とスザクの顔を見やる。照れる顔が可愛くて、それで、思わず、いたずら心に火がついてしまった。

「お前は、昔からバカだよな。」

「それはそうかもしれないけど、今反省してたとこなのに」

たまらなく愛しくなって、自分の唇をスザクのそれと重ねる。大丈夫、まだ戻れる。今だけ、今だけだから。

「…バカだから、一番よく覚えてるよ。」

「あの、僕はご存知の様にバカだからよく分からなかったので、もう一度お願い出来ませんか…?」

「…不本意だが、バカにも分かる様に教えられるのが優等生だからな。」


どちらからともなくゆっくりと目を閉じ、俺たちは再びキスを交わした。
俺を包み込むように抱きしめてくれるスザクの大きな背中にゆっくりと手を回す。
このまま時間が止まってしまえばいい、愚かな俺はそんな事を思ってしまった。














***
終わる気配がない
何話に跨るのか

SWEET NIGHT DREAM @


スザクとルルーシュ






ずっと好きだった人がいる。
初等部から同じクラスで、世間でいうところの所謂幼なじみにあたるが、僕と彼は特段仲が良かった訳ではない。
だけど、気付くといつも彼を目で追っていた。

綺麗な横顔。紫色の美しい瞳。背筋の伸びた凛とした佇まい。

世間話を交わした事は何度かある。彼がそれを覚えているかは分からない。だけどそれは僕にとって、何にも変え難い宝物の様な時間だった。


中等部に進んでも、高等部に進んでも、僕の気持ちが揺らぐことなど一度も無かった。
だから、思い切って告白をした。

「君の事が、昔から大好きでした…!僕と付き合ってください!」

振られるのは覚悟の上だ。
脳内で何度もシュミレーションを重ねたけど、妄想でさえ上手く行ったことなど一度もなかったから。

「…いいよ。その代わり、半年だけでいいなら。」

だから、こんな言葉が返ってくるとは思わなかった僕は思わず硬直した。
半年もの時間を僕に与えてもらえるだなんて、そんな事1ミリも想像していなかったから。

「不満か?なら仕方ないがこの件は無かったことに」

「ふふふ不満だなんてとんでもないです!!よろしくお願いいたします!!!」

慌てふためきながら差し出した僕の右手を握り、彼は優しく微笑んだ。
あぁ、やっぱり好きだなと、改めてそんな事を思った。






SWEET NIGHT DREAM







「スザク、今日は部活の助っ人はないのか?」

昼休み、ルルーシュと一緒にご飯を食べる貴重な時間。それだけでも十分に幸せなのに、そんな事を聞かれた僕は天にまで昇りそうなほどに舞い上がってしまう。

「ううん、今日はないよ。最近は断ってるんだ。君と一緒にいたいから。」

「…そうか。別に無理しなくてもいいんだけどな。」

言いながらとても嬉しそうに笑うから、こっちまで笑顔になる。例え期間限定と割り切られていても、少しは僕と過ごす時間を楽しみにしてくれているのではないか。愚かな僕はそんな事を考えてしまうのだ。
 
「ちょうど1ヶ月経ったけど、他に何かしてみたいことある?」

付き合ってみると、ルルーシュは驚く程色々な事を知らなかった。もちろん勉強や政治なんかはものすごく詳しいのだけど、芸能やら遊びやらには疎い様で。
カラオケや遊園地に連れて行った時は、それはそれは驚いて、そして、とても楽しそうな笑顔を見せてくれた。

「そしたら、おまえの家に行ってみたい。」

「え?!僕ん家!?」

「あぁ。駄目か?」

「いや駄目なんて事は一切ないんだけどでもどうだろ、僕一人暮らしだからなんて言うか、あの、」

駄目か?と、潤んだ瞳で上目遣いで好きな子に言われて断れる男子がいるのなら今すぐに紹介してほしい。
理性が飛びそうになるのを必死に堪えて、ありったけのいいよの気持ちを込めて何度も頷いた。






「へぇ、意外とキレイにしてるんだな。」

「いや、それほどでも…」

いつ君が遊びに来てもいい様に掃除は怠らなかったよ、とは、口が裂けても言えない。
僕は平常心を保つのに必死だった。

「あ、これ!アルバム!」

そんな僕の気持ちなど知るはずもないルルーシュは、無邪気に初等部のアルバムを開き、ページを捲りだした。

「お前、この時お弁当ひっくり返して大変だったよな。あ!これは運動会でかけっこ圧勝した時だろ?」

僕の写真を指差して、ルルーシュが笑っている。こんなに幸せな時間がこの世に存在したとは。それにしても。

「…よく覚えてるね?」

僕でも忘れかけていた思い出を、ルルーシュは心底楽しそうに話してくれるから。

「…え?!あ、俺はその、記憶力が良い方だから!割と皆の事覚えてるんだ」

「へぇ〜!ルルーシュ頭いいもんね!!流石だね!!」

言いながら、先ほど浮かれてしまった自分を少しだけ殴りたくなった。僕のことだけを覚えてくれている、だなんて、そんな事あるはずないのに。

「お前は、昔からバカだよな。」

「それはそうかもしれないけど、今反省してたとこなのに」

言い様、唇に何か温かいものが触れて、目の前にはルルーシュのキレイな顔がある。僕は暫く何が起きたのか分からなかった。
ふと我に返ってその正体がルルーシュのそれだと理解出来た時、僕の頭はショート寸前だった。

「…バカだから、一番よく覚えてるよ。」

「あの、僕はご存知の様にバカだからよく分からなかったので、もう一度お願い出来ませんか…?」

「…不本意だが、バカにも分かる様に教えられるのが優等生だからな。」


どちらからともなくゆっくりと目を閉じ、僕らは再びキスを交わした。
こっそりと目を開けた時に見えたルルーシュの表情が脳裏に焼き付いて離れない。
幸せすぎて一生このままでいたいな、なんて、やっぱりバカな僕はそんな事を思ってしまった。














***
続きます〜。

もしも生まれ変われるなら


スザクとルルーシュ





「ルルーシュって将来の夢とかあるの?」

スザクが俺の膝の上に寝転がりながらやんわりと微笑んだ。

「…夢、か。」

あまり考えた記憶はなかった。母さんの為に、ナナリーの為に。ブリタニアに復讐する事が俺の全てだった。そう思って生きていたから、個人として叶えたい夢など持った事はない。

「お前は?何かあるのか?」

「んー、僕はもう叶ったかな。」

「高校生にしてすでに夢を叶えるとは、なかなか侮れないな、スザク。」

寝転がる彼のふわふわの髪の毛を撫でた。スザクは気持ち良さそうに俺に身を委ねている。

「君のおかげだよ。君とまた一緒に過ごす事が、僕の唯一の夢だったから。」

言いながら、スザクが俺の頬を撫でた。
瞬間、息が止まりそうになる。この世でこんなにも愛おしいと思う存在に出会うことなど、もう二度とないと思っていたから。

「全く大袈裟だな、お前は。」

「そんな事ないよ。…君は僕の全てだ。」

スザクが俺を優しく抱きしめる。
温かい。ずっとここにいたい。だけど。
もう止める事など出来はしない。
もっと早くこの気持ちに気付けていたなら。もっと早く気持ちを確かめ合えていたなら。
様々な思いが脳裏を駆け巡ったが、きっと未来は変わらなかっただろう。

「世界を敵に回しても、僕は君の隣にいる。」

「…お前は、ほんとにバカだよ。」

得意の憎まれ口を叩きながらも涙が頬を伝った事、お前はきっと気付いていただろう。

最後まで、愛していると言えなかった。
口先だけで生きてきたはずなのに、そのたった6文字が、どうしても、お前にだけは言えなかった。






ゼロレクイエム、全てを伝えた日。
それでも隣にいてくれたから。
愛してると、それでも優しく抱きしめてくれたから。


全てを見透かされているような気がして、俺はまた少しだけ泣いた。




もしも生まれ変われるなら

(君にあいしていると、伝えられる自分でありたい。)

春夏秋冬 〜春〜

「まふおはよ。」

「おはよ、なっつ。」

この笑顔が見れるなら、苦手な早起きだって毎朝頑張れる。
この笑顔が見れるから、僕も毎朝笑顔でいられる。
そんな僕の気持ちを事を知ってか知らずか、夏流は今日もふんわり笑う。僕の隣で、優しく、それは優しく笑うのだ。



春夏秋冬 〜春〜




変わらない毎日がこんなに愛しいだなんてこの年でしみじみと考えている僕は、よく言えば大人っぽく、悪く言えばまぁ、老けているのだと思う。
その証拠に、年がら年中飽きもせず目の前の人をからかっている片割れに呆れるばかりだ。
「夏流お前ご飯つぶついてやんの!だっせー!」

何がそんなに面白いのか、冬眞は大口を開けてげらげらと笑っている。朝から元気で羨ましいようなそうでもないような。慌てるなっつと心底楽しそうな冬眞を見やると、大袈裟にため息をついた。

「え!?どこどこ!?」

「なっつ、じっとして。」

なっつの口元に付いた小さなご飯粒をそっと拭う。この年になってこのまま登校しようだなんて、驚異的な可愛いさだ。感情が顔に出ないで有名な僕だけに、心中でそんなことを考えているだなんてきっと誰も気づいていないと思うけど。

「ん、とれた。」

僕は表情一つ変えずにそれを自分の口に放り込む。と、半ば放心状態でそれを見届けていたなっつは、我に返ったのか一瞬で真っ赤になった。

「まふ、そういうの自然にやんの本当そろそろやめた方がいいと思うんだよ俺は!こう見えて俺はもうあれだ、高校生だ!」

「ご飯粒つかないようになったら言ってよその台詞。」

「俺だってそうしたい!でもまふが甘やかすからできないんだ!」

「…何それ。」

あまりの可愛い言いわけに、僕は思わず吹き出してしまう。
そんなこと言われたら、一生甘やかし続けてしまいそうな自分が怖かった。

「あーあーまた2人の世界ですか。お熱いことですね。」

「2人の世界って…はぁ?とーまってたまによく分かんないこと言うよなぁ。」

頭からクエスチョンマークを出しているなっつにそうだね、なんて淡々と答えながら、余計なことを言うなとばかりに冬眞を一瞥した。
僕はなっつが大好き。ずっと好き。なっつだけが好き。
だけど、嬉しいかな悲しいかな、なっつの事なら何でもわかる僕だけに、なっつが僕をそういう対象として見ていないのは一番よく知ってる。
だから僕も、親友として彼の隣にいることを選んだ。

「どしたんだ、まふ?」

「んーん。何でもない。」

僕は人より感情が表に出にくいらしい。昔から、志木さん家の真冬くんは何を考えてるのかよく分からない、と巷で有名だった。
それについて特に何とも思ったこともなかったけど、今では良かったと思ってる。
こんなにこんなになっつのことを想っても、顔に出ないなんてなんとありがたいことか。
これが冬眞だったら、一瞬で気持ちがバレていることだろう。双子の片割れだと言うのに、冬眞は僕と違って感情の起伏がはっきりしているから本当に分かりやすいことこの上ない。
暫くおとなしく歩いていた片割れをちらりと見やる。
学校が近づいてくるにつれ、冬眞は明らかにそわそわと浮足立ってきた。

「冬眞さぁ、最近遅刻しないよね。」

「…俺だって真面目に授業受けたいんだよ悪いかよ。」

「仕事で授業間に合わない時も放課後だけ来てるらしいね。一体誰に会いに来てるのかなぁ。」

「せ、先生に質問しにきてんだよ悪いか!!!」

冬眞は顔を真っ赤にして僕をどなりつけると、そそくさと下駄箱に入っていった。
ほんと、分かりやすいったらありゃしない。

「冬眞、真面目になったんだな。今度映画の主演だっけ?仕事大変そうなのにえらいな!」

「…そうだね。」

至極真剣な顔でそんな事を言ってくれるなっつも、同じくらい素直と言うかなんというか。

「おはようございます、真冬くん、夏流くん。」

「あぁ、未来ちゃんおはよ。」

しっかりと度の入った厚手の眼鏡がトレードマークの杉下未来は、なっつと僕といつも一緒にいるクラスメイトだ。

「ちゃんはやめて下さいっていつも言ってるじゃないですか。」

「ごめんごめん未来ちゃん!」

名前が名前だけに、新学期は女の子に間違われるのがもはや恒例行事らしい。その点に関しては少し通ずるものがあるので同情の余地があるのだけれど、なっつの中で既にこの呼び名は定着しているようなので僕もそれに倣っていた。
当の本人もなっつに何を言っても仕方ないと諦めているのか、毎度否定はするものの全力で訂正にかかる程ではないようだ。

「僕は生徒会室に寄ってから行きますから。また後で。」

「…多分先客がいると思う。迷惑だったら追い出していいからね。」

「弟さんの許可が出たのは大変心強いですけど、まぁもう慣れましたよ。」

そう不敵に笑って未来が廊下の奥へと消えていくのを見送ってから、僕もなっつといつものように教室へと向かった。

「…まふってみらいちゃんと仲いーよな。」

「はぁ?急に何。なっつだって仲いいじゃん。」

「違うんだよ、なんか2人の世界って感じ!大人な空気で入り込めない。」

珍しく真剣な顔で近寄ってくるから何かと思えばそんな事を気にしていたとは。
鈍感ななっつにしては鋭いところをついていると思った。
2人の世界、と言うのはあながち間違っていない。
未来は僕と考え方が似ているから正直話していて楽だし、雰囲気で互いの考えていることがなんとなく伝わったりす
る。だからかは分からないけど、僕のなっつへの気持ちも、未来は直ぐに見抜いて見せたのだ。

「考えすぎじゃない?入ってくればいいじゃん。いつも通り。何も考えずに。」

「何も考えずって、俺だって色々考えてるんだからな!」

「色々って、例えば?」

「…だから、まふが俺以外の友達と楽しそうに話してるの珍しいからなんつーか、嬉しいような寂しいような…そんな複雑な心境なの!」

「へぇ、寂しいんだ。」

こんなことを言われて俺がどんなに喜ぶか分かっていないから、この子は本当に質が悪い。
もしなっつが勘のいい子だったら、そう、例えば未来のように。俺の気持ちなんてとっくに気付いているはずだ。そのくらいには、僕のなっつに対しての執着心は他とは全然違うものだから。

「安心してよ。僕の一番はいつでもなっつだよ。今までも、これからもずっと。」

「…まふ、嬉しいけどそれ誤解を招くから俺以外には言わない方がいいぞ?俺は意味分かるけどな、女友達とかに言ったら多分超誤解される。きゃーってなる。」

「心配しなくてもなっつ以外には言わないよ。」

それは良かった、と安心しながら自分の机に戻っていくなっつ。
嬉しそうに、鼻歌なんか歌いながら。
あんな台詞で喜んでくれるくらいには僕のことを大切に思ってくれているようなので、今はこれで満足しておかなければ罰が当たる。
そう思っているはずなのに、なっつが楽しそうに他の事話しているのを見るだけで嫉妬心が溢れてくるのだからどうしようもない。本当はどうしたいのか、いくら考えても自分の気持ちがよく分からなくて。そんな事がもう何年も続いていた。

しかし、どんな悩みを抱えていようとも、始業のチャイム待ってはくれないもので。
早々に自分の席に着くと、考えを吹っ切るように教科書へと目を落とした。








またね

善逸と禰豆子




またね、と君は簡単に言う。

次なんてあるか分からないのに、何の保証もないのに。君は、またね、とふんわり笑って命懸けの任務に向かうんだ。

「わたしはあなたのこと、なにもおぼえてないかもしれないよ?」

「それでもいいの!全然良い!君はうつくしいから、それだけで僕は幸せなんだよ、禰豆子ちゃあああん!」

いつもふざけてて、本音を言わないから、本当にわたしのことを好きなのかと疑ってばかりの日々だけど。

「わたし、鬼だよ…?」

「だから?禰豆子ちゃんは世界一可愛いよ。」

勘違いしそうになる程優しい笑顔で言ってのけるから、時々ほんとにわたしはお姫様なんじゃないかと思えてくる。

鬼なのに、鬼だけど。
この人はわたしを愛してくれている。

お兄ちゃんしかいないと思ってた。それでいいと思ってた。なのに。

もう辛い思いはしたくないから、大切な人を作らなければ良いと思ってたのに、それなのに。

「禰豆子ちゃあああん!!!これ、任務の途中で見つけたんだ!受け取ってくれる…!?」

こくん、と頷いて手のひらに包み込む、綺麗な花束。これを、わたしの為に。

こんなわたしを人間として扱ってくれるたった1人の貴方を失いたくない。護りたい。叶うなら、ずっと傍にいたい。



ありがとうの意味を込めて笑えば、君は照れた様に微笑んだ。あぁ、大好きだ。
  

いつか枯れると分かっていても。
今だけは、幸せなフリをしていたい。