19/10/12 21:41 (:文庫感想)
砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない







その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。



タイトルの可愛さを裏切るかのようなストーリーに、読んだ後のずんとのしかかる重さがあった。
嘘という砂糖でまぶした弾丸を放つ藻屑だったが、次第に彼女の境遇や言葉の裏側に潜んでいた真実をなぎさは知ることになる。
人は親を選んで生まれることはできない。
実弾を持たない子供たちが、砂糖菓子で包まれた弾丸で大人…社会に対抗していく姿が、今を生きる少女たちを映しているかのようで深く考えさせられた。



comment:0




*[top]#



-エムブロ-