なんだか、ほんの少しだけ、顔つきが変わっていたような気がした。
彼のいる空間は、私を緊張させる。お腹へのプレッシャー、手足の震え。どくどくと、早まらせる鼓動。せっかく、彼が目の前にいたのに、蚊の鳴くような小さな声で、目も合わさずに、サッカーのドリブルでもしてるかのように、「おつかれさまです……」とサッと逃げて帰ってしまった。何を怯えているのだろう。名前を呼んで、はっきりと、お疲れ様でした!って笑顔で言うだけのことが、こんなにも、こんなにも難しい。無視されたらどうしよう、迷惑そうな顔をされたらどうしよう、そんなことをいちいち気にしてしまう。大丈夫、落ち着け、相手がどうとかじゃない、自分がどうしたいかだ、と自分に訴えても、体が言うことを聞かない。
これを病と言わずしてなんというのか。
彼の仕事っぷりはすごく良かった。すごく、良かったのだ。がんばってね、と言ったのは私なのに、さすがだなぁ、と、自分との距離を感じさせられて落ち込んでしまう。
でも、その想いが、私を走らせる、前を向かずにはいられなくする。自分と向き合わされる。振り回されるのではなく、上手く操っていきたい。無理に進もうとも、戻ろうとも、しなくていいのよ。