空蝉の廻「柊 知影」



●柊 知影/ヒイラギ トモカゲ(cv立花慎之介さん)
鬼の一族で魁の右腕として従者をしている鬼。頭が切れ、いつも穏やか。魁が小さい頃からそばにおり、とても信頼し合っている。28歳。







〜ネタバレ〜
(幸福エンド)
灯巌門の異変を感じ鬼の村へ訪れることになった主人公たち。そこで出会ったのが鬼の一族の長の従者である、知影だった。
知影は他の鬼と違って人に対しても優しく、主人公や泰臣と気楽に話してくれ、更にとても親切にしてくれた。頭も切れ、相談役にはピッタリである彼に、主人公はすぐに打ち解け頼りにしていた。
しかし、門の異変を直すために古祭りについて調べていく頃、なんと主人公は妖魔に攫われ山奥の洞窟に閉じ込められてしまった。そしてそこに現れたのは、なんと知影であった。
そう、知影は裏切り者で、影で妖魔を操り皆を傷つけていたのだ。
今まで何人も傷ついた人や鬼がいて、その全ては知影の行動によるものだと知った主人公はとてもショックを受けるが、あの優しい知影の全てが嘘だとは思えなかった。現に、洞窟に閉じ込められてからも傷つけることはされなかったし、主人公の身を案じることすらあった。更に暴走した妖魔が主人公を襲おうとした際も、身を呈して護ってくれた。
更に妖魔を操るためには自らの血を妖魔に飲ませる必要があると目の前でそれを施した知影。しかし血を飲ませたあととてつもなく苦しみ、顔色が悪くなる。なんと妖魔を操るための儀式は本人に穢れがうつるため、激痛と苦しみに襲われるのだ。なのでそんなに沢山は一気に操れないんだと語る知影だったが、そこまで苦しんでまで何故こんなことをするのかが気になった。
あんなにも大事にしていた魁を裏切り、自らを苦しめる、そんな知影にはきっと何か理由があるのだと思えた。
そして数日共に過ごすうちに、主人公は知影の過去読みの場に偶然居合わし、おぞましい過去を見てしまう。
300年前、初代の鬼と人が二つの門を作った時代、そこには従者である知影の先祖がいた。先祖は自然の穢れというものをどうにか物にうつす術をあみだしていたがうまくいかなかった。しかし冥島で瘴気を浴びた人間は鬼の姿に変貌することがわかると、あることに気づいた。穢れを取り込んだ物は壊れるのに、穢れを取り込んだ人間は壊れず鬼になる。その器こそ、自然の穢れを取り込むことが出来ると気づいた。そこで初代の人と鬼を殺し、その鬼に自然の穢れを取り込ませると穢れた鬼は死の国には行けず妖魔になった。そして先祖はそのことを全て違った記憶として代々受け継ぐ術を施し、人の記憶には「初代の二人は鬼に殺された」と、鬼の記憶には「初代の二人は人に殺された」と、記憶するようにし、鬼が妖魔になっているという記憶も変えた。
その事実は結局、鬼たちはかつて自分たちの仲間だった罪のないものと戦っているという事実だった。それを知った今、何故今まで知影一人でその真実を抱えていたのかがわからなかったが、知影は答えてくれない。
謎に包まれたまま二人の時を過ごし、ついに知影が抱えていた秘密を知る。
なんと知影の先祖は力のある本土の者から強い術をかけられていた。自然の穢れを全て鬼の体に宿すために監視するという呪い。それは先祖が見たものを定期的に首謀者に伝わるという呪い。先祖はその呪いがあったため、術を施すことを拒否できずあの過ちを犯したのだ。そしてその呪いは代々遺伝し、もちろん知影の中にもあったため、今回のことは秘密裏に一人でやるしかなかった。そう、知影は鬼の未来を救いたかった。妖魔にされ、永遠に彷徨う同胞たちを解放するために一人で苦しみに耐えながら解放の儀式を行おうとしていたのだ。
それは魁たちを想うもの。この裏切りがバレた時、魁たちが仲間だと思われないために自分だけが罪をかぶるためにやっていて、そしてこの儀式が終われば自分の命も穢れて死んでいくことを知っていた。
そんな辛いことを一人で抱えていた知影に、胸が痛くなった。初めて会った時のあの優しい笑顔、いつも親切にしてくれたあの優しさ、そして誰よりも仲間を思っていた暖かさ。その全てが愛しいと思わないわけがなかった。
そして主人公は決意した。自分もその儀式に手を貸すことを。
そのことを宣言してから、二人は短くも美しい穏やかな時間を過ごした。そして惹かれていく二人は、最後の夜として一生に一度のお互いの熱を感じた。最初で最後の彼の胸の中は、とても幸せだけど切なかった。
そして誓う、会えなくなったとしても永遠に貴方を想っていますと。
そしてついに儀式の日、止まらない涙を抑えようと必死にする主人公は、儀式を行った。すると集まる妖魔が次々と浄化されていく。主人公は笛を奏で死者を葬い、そして穢れを一気に引き受けた知影は苦しみながらも主人公のことを見つめ微笑んだ。月夜に照らされる知影の横顔は美しく儚く、震える唇で笛を奏で涙を流す。そして知影は消えていった。
知影が消えた方向から優しい風が流れる。その風は優しい彼の声に聞こえて、主人公は「ずっと貴方を忘れません」と答え、泣き明かした。
その後、人の村にも鬼の村にも妖魔は現れなくなり、平和が訪れた。魁は主人公に「最後に知影は何をしたのか」と何度も問うが、主人公は知影が貫いた秘密を隠し通した。
エンドロール後、あれから何年も経った。平和な時代がずっと続き鬼も人も穏やかに過ごした。主人公はシワが出来、白髪のお婆さんになって祈女として生涯を尽くした。目を覚ますと温かい白い世界にいた。目を凝らすと自分の手のシワは無くなり、白髪だった髪にツヤが戻ってる。ああ、これはあの人に出会った頃の私みたい。きっと私は祈女として務め上げ、ここにいる。そしてきっとあの人も。
すると懐かしくも忘れたことのない愛しい声がした。目を凝らせばそこには、知影が微笑んでる。長い間待たせてごめんと言うと、早く来てたら逆に怒ってたよと笑ってくれる。けれどずっと会いたかったんだと言われ、嬉しくて抱きついた。一度だって忘れたことがない愛しい人、涙が溢れながら知影がいなくなってからのことを沢山伝えたいと言うと、これからは長い時間があるからゆっくり話しておくれと言ってくれる。もう絶対に離れない、そう誓う二人はとても幸せそうに微笑んだ。

(空蝉の廻)



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