ハーモニーレディースクリニック

2021/08/17 14:02
コロナワクチンが妊娠に及ぼす影響と諸外国の方針

コロナワクチンが高齢者、医療従事者枠を超えて、一般枠で接種できるようになり、妊婦さんからの問い合わせが増えています。

集団ワクチン接種会場に行かれる方は、かかりつけ医の許可を受けることとされている為、電話での質問がたいへん多くなり皆様へもご迷惑をおかけしております。

日本産婦人科学会の見解はどうなっているのか?と申しますと、この6月には、「
日本においても、希望する妊婦さんはワクチンを接種することができます。特に感染の多い地域や感染のリスクの高い医療従事者等や、糖尿病、高血圧、気管支喘息などの基礎疾患を合併している方は、ぜひ接種をご検討ください。」だったのが、 8月になってアップデートされて「わが国においても、妊婦さんは時期を問わずワクチンを接種することをお勧めします。妊婦の夫またはパートナーの方は、ワクチンを接種することをお願いします。全国的に感染地域が拡大し、感染の多い地域では感染拡大が過去にない拡大となっています。そのような地域にお住まいの方や、糖尿病、高血圧、気管支喘息などの基礎疾患を合併している方は、ぜひ接種をご検討ください。」と、ワクチン接種を妊娠中でもお勧めしますという方向に少しずつ変わってきているように見えます。

 

コロナワクチンは現在、PhaseIII randomised trial(治験中)であり、緊急承認されてはいるが、正式に承認されたものではないこと、長期的副作用は不明であること、等をお話しして、周囲の感染状況等をみながら、個別に判断が必要とは考えていますが、やはり学術的文献に拠り所を見いだすほかありませんので、こちらにご紹介致します。約1600のコロナワクチンと妊娠に関する論文が現時点で出ているようですが、まだ結論を出すにはデータ不足で今後を待たないといけないようですが、それでも今ワクチンについての考えを決めないといけない方へ文献のご紹介です。英文誌で最も権威ある雑誌のひとつでNew England Journal of Medicine に発表されたものですが、preliminaryな報告ながら妊婦へのワクチンの安全性は示されなかった、妊娠初期(13wより前)にワクチン接種をした妊婦においては923%が流産したと報告されています。ワクチン接種する際の参考材料として提供致します。 他の文献においては、ワクチン接種は控えるべきではないが、安全性については証明されていない、等の報告がみられます。 今後も複数の学術的データを比較しながら個別に検討すべきかと思われます。

 Dr島袋?って日系の先生でしょうか?

Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons

  • Tom T. Shimabukuro, M.D.,

(結果と結論)
2020
12月から20112月までの予備的調査結果では、mRNACovid-19ワクチンを接種した妊婦(3958人)のうち
827人が妊娠を完了し、115人(13.9%)が流産し、712人(86.1%)が出産しました。新生児の有害な転帰には、早産(9.4%)と子宮内発育遅延(3.2%)が含まれ、新生児死亡は報告されていません。母親、妊娠、乳児の転帰を知るには、妊娠初期にワクチン接種を受けた多数の女性の、より長期的なフォローアップが必要です。

(考察)
私たちの予備分析では、参加者から報告されたデータを使用しており、妊娠や新生児の有害な転帰に関する他の潜在的な危険因子に関する情報は限られています。 VAERSVAERSとは、1990年に設立された全国的な自発的報告(受動的監視)システムであり、CDCFDAによって管理されています。)は、受動的サーベイランスの制限の対象となります。VAERS報告に関するEUAの義務的な報告要件とCDCガイダンスにもかかわらず、妊娠および新生児特有の有害事象のかなりの過少報告がおそらくあります。また、妊娠中の人に投与されたCovid-19ワクチンの総数もわかりません。これにより、VAERSデータから報告された有害事象の発生率を推定する能力がさらに制限されます。 Covid-19ワクチン接種後にVAERSに報告された妊娠特有の状態の中で、流産が最も一般的でした。これは、2009年のH1N1不活化インフルエンザワクチンの導入後の2009年のインフルエンザAH1N1)のパンデミック中に観察されたものと類似しており、流産はそのワクチンを受けた妊婦によって報告された最も一般的な有害事象でした。

 

妊娠中のCovid-19とその合併症から女性を保護するワクチン接種に加えて、新たな証拠は、妊娠後期の母親のCovid-19ワクチン接種後の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2SARS-CoV-2)抗体の経胎盤移行を示しています。母体のワクチン接種は新生児にある程度の防御を提供するかもしれない。しかし、ワクチン接種のタイミングに関連する抗体の移動と防御のレベルに関するデータはありません。 CDCFDAは、妊娠中の人におけるmRNAと追加の種類のCovid-19ワクチンの安全性に関する情報を監視し、広め続けています。

 

v-safe監視システム(V-safeは、Covid-19ワクチン接種プログラム用に開発された新しいCDCスマートフォンベースのアクティブ監視システムです。)、v-safe妊娠登録、およびVAERSからの初期のデータは、妊娠後期のCovid-19ワクチン接種に関連する妊娠または新生児の転帰に関する明らかな安全性シグナルを示していません。妊娠の初期段階や妊娠前の期間を含め、母親のCovid-19ワクチン接種に関連する母親、妊娠、新生児、および小児期の転帰をさらに評価するには、継続的なモニタリングが必要です。一方、現在のデータは、妊娠中の人とその医療提供者による予防接種についての意思決定に情報を提供するのに役立ちます。

June 17, 2021
N Engl J Med 2021; 384:2273-2282
DOI: 10.1056/NEJMoa2104983


また別の文献では、コロナワクチンを妊婦に勧めるかどうか、世界各国の状況を分析しています。

Int J Gynaecol Obstet

Actions. 2021 Jul 6. doi: 10.1002/ijgo.13816. Online ahead of print.

Prioritizing pregnant women for COVID-19 vaccination

 

安全性と有効性に関する新たな証拠にもかかわらず、ほとんどの国では、妊娠中の女性にCOVID-19ワクチンを提供していません。妊婦に対するCOVID-19ワクチン接種方針を、COVID-19症例の患者数が多い国と、母体および5歳未満の死亡率が高い国の2つのカテゴリーでWeb検索を行うと COVID-19の影響を受けた上位20か国のうち、11か国(米、英、仏、伊、インド、ブラジル、トルコ、アルゼンチン、メキシコ、蘭、スペイン)が妊婦の予防接種を許可しており、そのうち2か国(米、英)が妊婦に高リスクグループとして優先的に予防接種を行うのが安全であると考えています。ドイツやロシア、ポーランド、コロンビアは妊婦に許可していません。対照的に、5歳未満児死亡率と妊産婦死亡率が高い20か国のうち5か国(中国、インド、ナイジェリア、ウガンダ、ソマリア)のみが妊婦のワクチン接種を許可しており、その他の国は、ワクチン接種が必要な高リスクグループの一部として妊婦を含めていません。




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