昔々、ある所に…仲良しの夫婦がいました。

その夫婦は一生の契りを交わすまで、様々な逆境に立ち向かい…時に喧嘩もし、仲直りもし…
たくさんの思い出を作っていました。


今日は、そんな二人の記念すべき大切な日です。




「・・・をい、本当にプラナノ…喜ぶと思うか?」

「うんっ☆」


…そうかい。

でも、もうプラナノも大人なんだし…こんなの渡して喜ぶとは思えんが。


「・・・あのさ、もしかして〜…その本って・・・」

「―…えへへへへ☆」


・・・オレ達のか。


「ふ〜ん…懐かしいねぇ、ククリさん?」

「ぃやん!恥ずかしいぃ〜☆★」


・・・あはははは。


「―さぁて、プラナノんとこに急ごうぜ〜!」

「…っうんっ☆」








【わたしのパパとママ】








「…ふぅ〜、退屈ね」


あれから…確か、魔王ギリとか言ったっけ?
パパとママが封印したのよね…とても信じられないけど。

もう…平和になってから本当、毎日平和で平和で…つまらないくらいだわ。


「あ〜あっ!花の国の王女も暇潰しくらいはしたいのよねぇ〜…」


なんて、口から愚痴を零してみた所で何も変わらない。

あ〜あ〜…パパとママはきっと今頃、嫌っていうくらいに仲良くイチャイチャしてんでしょうねぇ〜…

悲しくも、そんな風景が嫌でも頭に浮かぶわ…はぁ。




―ガサガサガサッ!




「―…あ、」


風の音とは別の、草木を掻き分ける音を聞き付け後ろを振り返った。

・・・噂をすれば、わたしの育ての親。


「きゃあぁ〜!プラナノちゃんっ、ひさしぶりぃ☆」

「お〜っす、元気してたか?」


「・・・おっかさんにおっとさん」


あら、ちょっと見ない内に…綺麗になってるじゃない、ママ。

パパは…変わらないわねぇ。


「…うん、元気よ」

「わぁ〜いっ☆プラナノちゃんっ!」


―きゅっ…☆★


…親に抱き付かれる娘の気持ちって、複雑だわ。

あ、パパが変な顔してる…ふふふ。
娘にヤキモチ妬いてるのかしら?


「あのね、あのね!プラナノちゃんにねぇ〜、おみやげがあるの!」


あら、手土産持参なんて…ママも少しは大人になった証拠かしら?

ん…お土産って、本?


「まぁ、なんだ…色々ツッコみたいとは思うが…受け取ってやってくれや」


そう苦笑いで言うパパ。

確かにママには色々とツッコみたくなる所があるけど…
・・・此処はパパの言うことを素直に聞き入れるわ。


「うん、後で読ませてもらうわ。その方が良いでしょ?」


あ…ママの顔が真っ赤になってく。

はは〜ん…どういう内容の本だか分かっちゃった。
さすがに本人達を前にして読む訳にはいかないわね。


「てなわけでさぁ、プラナノ!折角来たからさぁ〜…何か食い物ないわけ?」

「―は?」


・・・なにソレ。

パパの考えてることって、たまに分からないわ。
確かに近くの村から、この花の国まで来るには時間がかかるから…お腹空くのは分かるけど。

折角言うなら、もう少し娘に対して伝えるべきことがあるんじゃないの…?


「ごめんね、プラナノちゃん…ククリもお腹空いちゃって、えへへへへ」


・・・馬鹿親だわ。

まぁ、今に始まったことではないけど…溜め息ものだわ、本当に。


「分かったわよ…入って」

「いやぁ〜、悪りぃ悪りぃ」
「ごめんね、プラナノちゃ〜ん…」

「はいはい…」




もう、コレが目的だとしか思えないわよ。
まぁ、別に…暇だったから、良いんだけどね。

それに…料理作るの嫌いじゃないし。


「あ、プラナノちゃん…ククリも手伝うよ?」

「…良いわよ、わたしに任せて。おっかさんはおっとさんと隣の部屋で待ってて」


パパはパパで、早速部屋の物を物色し始めてるし…変な親だわ。

あ…ママが止めに入った入った。


「それじゃあ、プラナノ!料理出来上がるまで部屋ん中に入るなよ〜?」

「・・・はいはい、料理が出来たらノックします」


―パタン。


・・・やれやれ、妙に機嫌が良いわねパパは。




「ん〜…こんな感じかしら」


―てか、妙に隣の部屋が静かね…二人は一体何してるのかしら?

てっきりわたしは『あんなこと』や『そんなこと』してるもんだと思ってたけど…違うの?


「・・・ふふっ、」


此処はわたしの家だもの、聞き耳立てた所で文句言われる筋合いはないわよね。

そ〜っと、そ〜っと…




『・・・ニケくぅん…』

『…し〜っ!あんま声出すとプラナノに気付かれんぞ?』

『…でもぉ、』


・・・なに、この怪しい会話。


『やっぱり…ダメだよぉ』

『バカ、今更何言ってんだよ…大丈夫だって』


・・・何が大丈夫よ。


『ぅっ、うん・・・ククリ頑張る…!』

『おぅ…ほんじゃあ、続けるぞ』


・・・何を続けんの、何を!


『やぁ…んんっ…!』

『ん〜っ…あと少し、だからっ…』

『ぁうぅ…やぁっ…うぅ…!』


・・・コレは止めた方が良いのかしら?

それとも・・・・・・・・・


『―あっ…!』

『っ―ククリ…ちょっ、我慢してっ…!』

『―ひゃあぁっ!』


―ビッターン!!!


「!?!?!?」


なに…? 一体、二人は何してるのよ!?

ああ…もうっ・・・開けちゃうからね!


―ガチャッ!








「・・・―全く、何してんのかと思ったら、」


「あははは」
「ふふふっ☆」




「「誕生日おめでと〜♪」」




「・・・ぅん、」


全く、もう少しまともに準備出来ないのかしら。


あの…扉の向こうで繰り広げられていた会話は、部屋を飾り付けしていた時のもので、
ママがパパに抱き抱えられて、天井にまでキレイな飾りがたくさん…

やぁね、此処までされたら…いくらなんでも・・・嬉しいわよ。


「プラナノちゃんっ、ご飯食べよう☆」

「…うんっ」

「お〜しっ!食うぞ食うぞ〜」


ふふっ…なんか良いかも、こういうのも。

―そうだ…折角だから『あの人』も呼んであげようかしら?


「ねぇ、あの人を連れて来ても良い?」

「んぁ…あの人?」


ふふっ…そうよ、きっとパパとママにとっては懐かしい顔だと思うわ。


「だぁれ?プラナノちゃんのお友達?」

「…えぇ、」


あの時…ザン大陸へパパとママを助けに行った時、わたしは『あの人』と初めて会った。

それから、ちょくちょく『あの人』とは連絡を取っている。


「ふ〜ん…まぁ、別に良いけど」

「うんっ!ククリも賛成〜♪」


「・・・じゃあ、呼んで来るね」


部屋の隅に置いてあるミカカ草を手に取り、『あの人』の番号をポンとプッシュする。


―…プルルル、プルルル…―

…―ガチャッ。


「・・・こんにちは、」

『ああ、お前か…何か用か?』

「用があるから、電話してるんじゃない」

『…そうだな、で用件はなんだ?』


チラッと後ろを振り返り、パパとママの様子を伺う。

・・・ふふふ、きっとビックリするわよ、『あの人』が来たら。


「わたし、今日誕生日なの」

『へぇ…おめでとさん』

「………………」

『………………はいはい、お迎えに行かせてもらいますよ』

「・・・早くしてね、」


―…カチャン。


「プラナノちゃ〜ん、お友達来るって?」

「ええ、『花束を持ってお迎えに行く』って」

「へぇ〜…」


実際には花を持って来るとは言っていない。
だけど、『あの人』は必ず綺麗な花束を両手に抱えて此処にやって来る。

どうしてかって?
それはね、わたしがあの人を…




「そろそろかしら」


座っていた椅子から立ち上がり、部屋の窓から体を乗り出す。


「あ…」


あの人の『飛び竜』

バサッ、バサッ、と吹く風を切りながら…ふわりと地面に着地した。


「…来たみたい、迎えに行って来る」

「おぅ」
「いってらっしゃ〜い☆」


パタパタパタ…




「・・・来てやったぜ」


そう言って、乗って来た竜から飛び降りると、『彼』はニヤリと笑った。


「…お土産、出しなさいよ」

「・・・我が儘なお姫さまだな」

「…あら、そう?」


やれやれ、といった身振りを見せながら、彼は片手に持っていた花束を差し出した。

・・・ほらね、
彼はわたしを分かっているのよ。


「そうそう、来るのが少しだけ遅かったから…ご飯三人で食べちゃったわよ」

「…他にも客がいたのか?」


来た来た。


「ええ、あなたに会ってもらいたい人達よ」

「・・・へえ、」


わたしが先を歩いて彼を家の中へと誘導する。

そして…遂に、ご対面。


「あ、プラナノちゃ・・・!」

「―!!!」


ふふっ…ビックリした?

ママもパパも口をぽかーんと開けて、椅子から立ち上がって…
彼もまた、二人と同じように立ち尽くしている。

・・・・・・さぁ、再会のパーティよ。


「「っ…レイドっ!?」」


…ピンポーン。 大正解よ。

そう、わたしがパパとママに会わせたかったのは、彼…元魔界のプリンス・レイド。


「…姫さん、これが目的だったのか?」


こいつらに会わせる為に、わざわざオレ様を呼んだのか?
そう、明らか不機嫌そうに言うレイド。

パパも複雑な顔してる…ふふっ。


「あら…良いじゃない?」

「良くねぇ!」
「良くねぇよ!」

「…なによ、おっとさんまで一緒にツッコむことないじゃない」


やれやれ…此処はひとつ、ママに言ってもらおうかな?


「ねぇ、おっかさん。わたし、王子と友達になったのよ」

「―本当!?」


ふふっ…レイドが益々表情を複雑にさせている、
パパは…あら、笑いを堪えてる。


「―ははっ、レイドが友達ってか?ははは!」

「―っな…何がおかしい!」


あらあら、うっすらと顔が赤くなってる。


「え〜?だってよぉ…お前、今まで友達なんていなかったぢゃん?」


―ガーン!!!

…て、パパ!
そこはツッコんじゃダメよ。


「良かったぁ…レイドにもお友達出来たんだね!おめでとう☆」


ママ…それはトドメよ!?

ああ、見てるだけでレイドが哀れに思えてならないわ。


「つぅかさぁ、どういう経緯でプラナノはレイドと知り合ったわけ?」


ママにトドメを刺されて落ち込むレイドを横目に、パパが質問してきた。


「ああ、ザン大陸でね。王子が岩の魔物に襲われ―」
「余計なことは口に出さない方が良いぞ、姫さん…?」


さっさと立ち直ったレイドがわたしの前に立ち塞がって、口を覆った。

・・・な〜んだ、やっぱり言われたくないの?


「ああ!そう言えば、そんなことあったなぁ〜、ククリぃ?」

「うんっ、懐かしいぃ♪」


…この二人は、本当にめでたいわ。

魔物の潜む地での戦いも懐かしい思い出として処理出来ちゃうんだから…真似出来ないわ。


「とにかく…オレ様は忙しいんだ・・・こんな話をしてる暇はない」


む…そんなこと言って。

本当は、「ギリさまが封印されてから毎日つまらない」て、わたしに愚痴ってたくせに。


「なに強がってんのよ」


無意識に出た言葉。

わたしはレイドにキチンとけじめを付けて欲しくて呼んだの。
それを分かって欲しくて止めてるのよ?


「…お前に話すことはない」


・・・意地っ張り。


「―待って!」


―グイッ!


「「「!!!」」」


えっ・・・ママ?


「レイド…待って、」

「―ピ、ンク…ボム…」


ママがレイドの腕を掴んで、何かを伝えようと必死になってる。


「プラナノちゃんを独りにしないであげて」


・・・ドクン!

な…何を言ってるの、ママ…?


「レイド…お友達は大事にしてあげて・・・お願い」

「・・・ピンクボム、」


―ドクン!


「はいはいはい!そこまで〜!」

「「「!!!」」」


パパが手をパンと鳴らしながら、レイドとママの間に割って入った。


「とりあえず、オレらもプラナノの傍にはずっといられないわけ…分かる?」

「・・・お前らの子供だろう」


…分かってる。
わたしはパパとママの子供。

だけど・・・


「ああいう成りでも、一応は国ひとつをまとめるオヒメサマな訳、」


失礼しちゃう。

こういう成りになるように育てたのは何処の誰よ。


「・・・結局の所、ラッキースター…何が言いたい」


両手をズボンのポケットに突っ込みながら、レイドがパパに詰め寄った。


「…そういうことしてると、プラナノは外界に出られない」

「!!!」


そう…だけど。
でも、何…パパはレイドに何を伝えたいの?


「・・・ニケくん、」


パパの背中をポンと叩いて、ママが合図を出した。

それに答える様に、パパはコクリと頷いて、一言。




「―レイド…プラナノの傍にいてやってくんねぇか?」


「「!!!」」




な…な、ななな…
何を言い出してるの、パパは…?

全く意味が分からない。


「こいつ、ククリに似て寂しがりな所あるし…なぁ、ククリ?」

「うん☆」


「だ…だからって…どうして、」


パパにママ…
レイドは仮にも元魔界のプリンスで、一時期この花の国を乗っ取ろうとしていた存在よ?

それなのに…
そんなこと、わたしが…


「プラナノちゃん、本当は独りじゃ寂しいんだよね?」


・・・言わないで。


「オレら、お前の親なんだぞ。とっくに分かってんだよ…お前の気持ちなんて、」


・・・お願いよ。


「…レイド、プラナノちゃんをよろしくね☆」




今日、本当は…少し、期待してた。
万に一つないって思ってた。

自分の子供の誕生日を忘れる親なんて聞いたことないから。


わたしは、あなたに似たのよ…パパ。


意地っ張りで、素直じゃなくて…








「それじゃぁ…プラナノちゃん、ククリ達…行くね」

「・・・ええ、」


ああ…初めてよ。

パパとママが初めて、自分の親だってこと…感じた。


「・・・王子、」


わたしは隣に立つレイドに声をかけた。

吹く春風になびく、長い長い前髪。


金の飾りがキラリと反射して、わたしの目に眩しく映る。


「・・・付き合ってやっても良いぜ…花の国のお姫さま?」


フッと鋭い目をさらに細めながら、レイドは微笑んだ。


「・・・馬ー鹿、」


カッコつけちゃって…




―きゅっ…




「ククリ、ちょっと待ってて」

「?」


ふいにそう呟いた声がしたと思ったら、パパがわたし達の傍まで駆け寄って来た。


「…何、まだ何か用なの?」


わたしが素っ気なく言うと、パパは少し表情を変えながら…早口で、こう言った。


「ククリがプラナノにあげた本あんじゃん?あれはレイドにも見せてやれよ」


その一言だけを言い残し、パパはママの元に戻って、
一度も後ろを振り返ることなく…去って行った。


「・・・本、ピンクボムからのプレゼントか?」

「・・・うん、テーブルの上に置いてあるわよ」


…まぁ、レイドにも見せたいって、わたし自身思ってたから丁度良いわ。


「どれ…見せてみろ」


ポスンと二人掛けのソファに一緒に座りながら、貰った本のページをゆっくりめくる…と、

―…ヒラリ。


「…手紙…?」


本の間に挟まっていた手紙。
多分、パパとママからの・・・

ゆっくりと、その文面を読み上げる。


「…―あら、やるじゃない、ふたりとも♪」

「―…なっ・・・ラッキースターめ…!」




プラナノちゃんへ。



ふふふっ、プラナノちゃ〜ん☆ ひさしぶりぃ♪
ククリはとっても元気だよ!

プラナノちゃんは元気かなぁ?



おっす、何かククリに書けって言われたから書くけど…
別に書くことなんかねぇなぁ。



え〜…ねぇ、アレは?



あ〜…別に書く必要ねぇんじゃねぇ?
会った時に話しゃあ…



そぉう…?


・・・あ〜、ハイハイ。

そんなわけで、まぁ…アレですよ。


オレ達、本物のパパとママになることにしました。
―てか、予定。



えへへへへ〜☆

あのねぇ、ニケくんがね…ククリに言ってくれたの!

「オレはククリがすきだから、だからオレとずっと一生一緒―」

はいはいはいはいはい!!!

オレが書いてんだから、脇から書き足すなっつーの!

てか、んなこと言ってねぇ!



えぇええ…言ってくれたのにぃ〜…




・・・そんなわけだから、一応、式の準備とか手伝いに来いよ?



プラナノちゃんも幸せになってね☆

ニケくんみたいにカッコ良い人がプラナノちゃんと一緒だったらククリも嬉しいなぁ♪



・・・何だソレ?

あんな意地っ張りと一緒にいてくれる奴って…相当、根性があるか…
後、プラナノに負けないくらいな意地王とかじゃねぇと手に負えねぇんじゃねぇ?



あっ…レイドとかは?



―ぶへっ!
何だぁ、そりゃ!


・・・レイド、ねぇ?

まぁ、良いんじゃね?



えっ! 本当?



うん、オレ的には合ってんじゃねぇかと思うけど?

それにあの二人が一緒になってくれりゃあ、楽しそうじゃね?



うんっ!



そうすると〜…オレはレイドのお義父さん?(笑)



わぁ〜っ♪ 楽しくなりそうだねっ、ニケくん☆



まぁ…ありえないとも言い切れん展開だがな。

気が向いたらってことで、プラナノもそれなりにパートナー決めても良いんじゃね?


ああ、後はククリ書いて。



はぁ〜いっ☆

えっと、プラナノちゃん今度誕生日だよね!

プレゼントにこの手紙と一緒に本を送ります♪


大切な人と一緒に読んでね☆★



ニケくんとククリより。





「何が一緒に、だよ…アイツ」

「・・・ふふっ」


嬉しい…なんて、言えないけど。

良いもの貰っちゃった。




『プラナノちゃん すくすく日記』









■END■


色々と遊んでみました。
あちゃぱー! 何だコレ!?/(^O^)\


でもって、1500HITリクエスト、ありがとうございました!


今回は初の試みとして、主観をプラナノにしてみました。
わたしの中でのプラナノは『ツンデレ王女』(笑)
そんなわけで、こんな話になっちまったぜぇい、ちくしょうめぇ!


はい、最後までお読みいただきありがとうございました〜☆★
次回もハチャメチャで行きますぞ〜!




2007/04/02 じゃすみん


top




-エムブロ-