宗一さんが「焦れったい」なら森永くんの焦心は「ハアハア!宗一さんに会いたいけど会えねええええ演習SIね!」みたいなそっちでしょうかね(笑)。想像の中の森永くんは目をギラギラさせて歯を剥き出しにして唸りながら耐えてます(微笑)。
というわけで大正パラレル第10話でございます。うっそーーーー10話も書いたの……。テキスト量は大した事ないんだけど……
皆さま長々とお付き合いいただいてありがとうございます。コメントやメール、大事に読ませていただいてます(深々)。
オフ会でも「たいしょうぼうくんは…」「たいしょう…」とぼそりと呟かれることが多かったです…すんません、遅筆で…
※原作とは一切関係のない妄想文です。
※大正時代を舞台としたパラレル設定となっております。そのため、一部家族構成や生い立ちなどを捏造しております。ご了承くださいませ。
【初戀〜焦心篇・弐】
宗一さんに、会えない。
幹部候補生とはいえ、軍事演習を疎かにするわけにもいかないから頑張ってるけど、宗一さんに会えない辛さは想像以上で、こんなに好きになってしまったんだと離れて実感した。
たまに家に帰れても、すぐに次の演習が入ってたり宗一さんが忙しかったりでなかなか以前のように二人っきりの時間が取れない。
つまり、宗一さんに触れられない。つまり、欲求不満。
ずっと彼のそばにいたいのにままならない俺は、演習や実技訓練で憂さを晴らしていた。おかげで夏ごろよりも体はかなり逞しくなったと思う。
「はあ……」
「どうした、森永。ため息なんかついて。家が恋しくなったか」
夕食後のわずかな自由時間に、同期の山口が声をかけてきた。
「まあな」
「俺も恋人に会えないんで寂しくてな。手紙を書いたところだ。お前も書くか?」
友人は手にした手紙をひらひらと振る。
「恋人?お前いつの間に」
まあな、と幸せそうに山口が笑う。俺はその背を叩いて祝福した。
「手紙か。書いてみるか」
「おう、そうしろ。恋しいです、お母様ってな」
「ばか」
俺は女性を恋愛対象にしていないから、当然浮いた話もないわけで、同期の間では母親にべったりで親離れできないボンボンだと思われていた。特に実害はないから否定もしないでいる。
揶揄する友人から便箋と封筒を貰い受けると、六人部屋の自分の寝台に寝そべり、手紙を書き始めた。母君と、もちろん宗一さんに宛てて。母君には申し訳ないが、カムフラージュになっていただく。
母君には、演習のことや次にいつ帰るか、お体に気をつけて、など無難な内容を綴った。使用人や宗一さんはいるけど、寂しい思いをしていらっしゃるだろうし、そこは入念に労いつつも、報告が主なのでそれほど時間をかけずに便箋一枚で済んでしまった。
「さてと……」
巽宗一様、と書き出して、俺は自分で書いたその名前にすらひどく心を掻き乱された。
宗一さん、会いたい。触れたい。寂しい。迸る想いのままに、何枚でもそんなことを書いてしまいそうで、万年筆を走らせることを躊躇う。宗一さんに自分の気持ちばかり押し付けているのは自覚しているから、あまり困らせたくない。
「うーん」
結局、母君に宛てた手紙とほとんど内容が同じになってしまった。それでも最後に会いたい、寂しいと書く。
ほんとに言いたいのはそこだけなんだけれど。
手紙を出してから一週間ほどで、一旦帰宅できることになった。
家に帰ると、母君に挨拶するのもそこそこに、俺は離れに向かった。宗一さんはまだ帰っていなかった。
この数ヶ月間で、部屋には宗一さんの匂いがするようになった。俺は久々のその空気を思いっきり吸い込む。
「あー、早く帰ってこないかな……」
顔が自然と緩むのを抑えられない。
ふと、窓際の文机に封筒が置かれているのに気付いた。
俺の手紙だ。封が切られているから、手紙は読んでくれたらしい。心臓がどきどきと高鳴る。
やがて、廊下を歩いてくる足音がして、障子が開いた。
「……おう、おかえり」
「ただいま帰りました」
「何、してんだよ」
「待ってました。……あの、早く会いたくて」
「この間も会っただろ……」
「もう三週間も前ですよ。しかも忙しくてほとんど話してなかったから」
「手紙なんか、寄越しやがって。すぐ帰ってくるのに」
「……宗一さん?」
部屋の入り口で、宗一さんは俯いたまま、俺を見ようとしない。
警戒させないように近づいて、顔を覗き込むと、ぎゅっと引き結ばれたその口に、俺はたまらず口付けた。
「やめろ……って」
腕の中に抱き込むと、抵抗する宗一さんの体がひどく小さく思えた。
「なんか痩せた気がする。宗一さん、ちゃんと食べてます?」
「食ってるよ!お前がでっかくなったんだろっ」
「背は伸びてませんけど」
「な、なんか前とちが……」
「ああ、筋肉ついたんですよ。演習きつくて」
宗一さんの耳や首筋がほんのり赤くなっているのに気付いて、俺はその色に誘われて唇を寄せた。
「あ……っ」
俺の肩の辺りでくぐもった声がした。艶めいた吐息に息を飲む。
体を離して顔を見ると、口を押さえて真っ赤になっていた。
「宗一さん……!」
たまらずに抱き締めた体を畳に倒すと、袷を開いてシャツの釦をはずす。理性が遠くなっていく。
「ばかっやめろ!何する……んんっ!」
唇を塞いで罵倒の言葉を封じ、無垢な体を暴こうと俺は袴の紐も解いた。
さすがに拳を振り上げたり足を上げたりして暴れる宗一さんの白い肌に、俺は初めての跡を付けた。
「い、……っ」
胸元に咲いた小さな朱い徴。痛みが何かすら、宗一さんには分からなかったかもしれない。
着物の中から現れた体に手を這わせて、その滑らかな感触に俺は夢中になった。
「宗一さん、すき……会いたかった……」
荒い息の下で言い募る。止められない。宗一さんの秘められたところへ手をやると、悲鳴に似た声が上がった。さっき聞いた艶っぽさは消えうせて、暴れていた体は徐々に脅えて硬直し、震え始めた。
「やめろ……!」
俺はやっとそこで我に返った。
「あ……ご、ごめんなさい」
「出てけ!」
潤んだ目に睨みつけられて、俺は必死に謝る。
「ごめんなさい、俺、ずっと宗一さんに触れたかったから……止められなくて」
「出てけって言ってんだよ!」
俺に背を向けた宗一さんは、もう振り返ってはくれなかった。
焦心篇・弐、終。
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「そうだ手紙を書かせよう」「久々に会ったらあまあまいちゃいちゃ……」などとによによ考えていたのに、お預けが長過ぎたのか、哲博わんこが手綱を振りきって暴走しました……
あー
必死で手綱を引っ張りましたが。
こ じ れ た よ ?
自業自得ですけども……
夢オチにする手も考えたんですが、シリアス展開は必要なのでこのままいきますお。
ではまた次回お会いしましょう。