梅雨になって晴れたり雨が降ったりと天気は落ち着かず、追い打ちをかけるようにジメジメした空気が肌にまとわりついた。
夏の予選を目の前にして、思うようにグラウンドでの練習が継続できないことも手伝って、泉のご機嫌は斜めMAXだった。
「拗ねたって仕方ないでしょ」
自分で言っておきながらなんとも母親じみたセリフだと思った。そんな言葉の行き先は、俺の部屋のベッドに寝転んでふて寝をしている恋人だ。
しかし、その返事はなくアイロンをかけていた手を止めてそっちを見やれば、枕に顔を埋めて聞こえないフリをしている泉の姿が目に入った。
思わず苦笑が漏れる。
「明日は晴れるって言ってたよ」
「…おー」
今度は返事があった。
相変わらずご機嫌斜め…違うか。
これは泉の眠いの合図だ。
低くけだるげな声色。
眠いから邪魔すんな。
「風邪引くよ」
欝陶しがられるのはわかったけれど、半袖ハーパンのままではまだ寒い。今日みたいに朝から雨の日は蒸したりしないし。
ベッドの足の方に丸められたタオルケットをかけてやる。
「ねみぃ…」
「うん」
「雨の音と…アイロンの音…」
「うん、おやすみ」
クシャリと前髪を撫でてやると、泉はスッと意識を手放した。
俺はなるべく足音を立てないようにアイロンの位置に戻り、再びアイロンかけを始める。
規則正しく、時々水分が蒸発するアイロンをかける音と泉が眠るベッドの後ろの窓から聞こえる雨の音。
ああ、確かにこれは心地いいかも。
俺も思わず漏れたあくびを噛み殺して、これが終わったら泉の隣に潜り込むことを思った。
君の近くで奏でる音楽