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ハピハピ(浜泉)

ミーティングを終えてまっすぐ。
泉は約束どおりにやってきた。




「おーい、開けてくれー!」

チャイムがついている玄関にも関わらず、
向こうから催促の声とドアを軽く蹴る音が聞こえて、
浜田は不思議に思いながら玄関のドアを開けて、驚いた。



「……何、それ」


立っていたのは両手に大きな紙袋を抱えた泉。


「何って誕生日プレゼント」

「へ?」

「だーかーら、野球部皆からお前に」

「マジ?」

「マジ!って言うか、寒いから入れろよ」


両手がふさがっているのを理由に、
泉は浜田の足を蹴って邪魔だと合図する。

「痛っ!足ぐせ悪いなぁ……」

反射的に痛みを回避するため、浜田は体を引いて彼を受け入れた。




コタツに向き合って座って、ホッと一息をつく。

「これが花井からで、こっちが阿部。で、これが栄口」
紙袋の中身をひとつひとつテーブルの上に広げていく。
こういったイベントをする度に、浜田の人徳を感じずにはいられない。


「最後がモモカンと篠岡からな」

ピンクの女性らしいラッピングがされた包みを置いて、泉はため息を吐いた。


「すげー嬉しい。泉、重かっただろ」

山となったプレゼントを見て、浜田は感動の声を上げる。

「ったく、田島と三橋とか教室で渡せばいいのによ」

仲介されるより、本人から渡される方が貰うほうとしては嬉しいはずなのに。


ミーティング終了と同時にプレゼント攻めにされた泉の姿が容易に想像できて、浜田は苦笑を浮かべた。



「みんなにお礼しないとなー。明日の練習って何時から?」
「明日は休みだってさ」
「なに?珍しいじゃん?」

オフシーズンとはいえ、西浦野球部にして珍しい。

「明日はグランド使えねーし、父母会の会議があって駐車場とかも使えねーんだってさ」

「そっか、思いがけないプレゼント貰ったみたいだ」

浜田の顔がほころぶ。
その表情の意味は、つまり明日は2人で過ごせるという確信。


「さてと、じゃあ行こうぜ」
「へ?」

プレゼントが入っていた紙袋をグチャグチャに丸めて、立ち上がった泉の言葉に、一瞬ポカンとする。

「誕生日プレゼント、買いにいく」

そういえば、プレゼントの山の中に泉からの物はなかった。

泉が来てくれただけで十分だと思っていた浜田は、さらに思いがけない言葉に笑みを深くする。


「何が欲しいとかある?」

プレゼントの内容によって行く店かわってくるよなー。とコートを着ながら呟く泉を、
後ろからギュッと抱き締めて。


「コンビニで飲みもんと食い物、たくさん。あとケーキもあったらいいな」

「…安上がりだな」

「十分だって」


明日、泉と一日中一緒にいるために必要なもんがあれば、

それで十分だ。







Happy Birthday 浜田。

遅くなりました。
この作品はお持ち帰り自由です。
ただし著作権は捨ててませんのであしからず。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました(*^□^*)
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ひねくれプレゼント(浜泉)

クリスマスが近づいて、
街がイルミネーションに彩られる。
今年は一緒に過ごす相手がいる浜田にとって、
それは少し困った誘いになるはずだった。




「ハマちゃん、も、ウチくる?」

「え?なに?」


朝練から戻ってきた三橋の言葉の意味を理解できず、浜田は首をかしげた。


「あー、24日の夜に三橋んちでパーティしようって野球部で話しててさ」

語彙の足りない三橋を助けるために、田島が割って入る。

そうして、やっと意味を理解した浜田は、
続いて浮かんだ疑問に眉をひそめた。


「それって野球部全員参加すんの?」
「ああ。今んとこ。な、三橋」
「う、うん!みん、な、くるって言ってた」

だからハマちゃんも……と続いた言葉に、困ったように笑う。

「返事すんの、あとでいいか?今日中に決めるし」
「うん!俺、待てる、よ」

ごめんなー。と三橋の頭を軽く叩いて、
浜田は少し離れた所で他のクラスメイトと喋る泉をチラッと睨んだ。




昼休みになって、
早弁してしまった田島と三橋は食べ物の誘惑に勝てず、
購買へと走っていった。

教室に残されたのは泉と浜田。


「なに怒ってんだよ?」


先に口を開いたのは泉のほうだった。
朝から浜田の様子がおかしい。
いつもならウザイくらいにからんでくるのに、
今日はムスッとしたまま自分の席から動こうとはしなかった。


「……クリスマス、三橋んちでパーティやるんだってな」
「あ?なんだよ、誘われただろ?」

これねぇの?と続こうとした泉の言葉を遮って、浜田は口を開いた。

「じゃなくって!なんで……」

荒げかけた声をグッとこらえる。

みっともない嫉妬だ。
泉が野球部に力をいれていることは、自分がよく知っている。
特に西浦は人数が少ない分、団結力だって強い。

そんなことは、応援団として、泉の相方として見てきた自分がよく知っていることだ。

しかし、それでも……それでも、だ。


「……独占欲強ェのな、浜田って」

溜息と共に返された言葉にドキッとする。

みっともない。

俯いてしまう浜田に、泉は更に溜息をついて、


「19日は何も予定入れてないっつっても?」


「へ?」


「ま、予定入れてないって言っても、ミーティングはあるけど」

「それって……」



「悪ぃ、おまたせー!」
「お、また、せ!」

タイミング悪く田島と三橋が戻ってきたところで、話が打ち切られる。

それでも浜田は話を続けようとしたが、
泉の意識は目の前の弁当に向いてしまっていて、

今度は浜田が小さく溜息をついた。






放課後、24日の話をするために浜田は三橋を呼び止めた。

「24日のことだけど」

「あ、あのね、泉くんなんだ、よ」

「え?」


相変わらず三橋との会話は掴み所がない。
唐突すぎる。

一瞬ポカンとすると、
三橋は言葉を続けた。


「ハマちゃんも、誘っていいか、って、泉くんが言ったんだよ」


話も唐突なら、内容も唐突だ。

だから、来るよ、ね!という三橋の言葉に、浜田は思わず頷いていた。




素直じゃないっていうか、なんというか……

誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを一緒に貰ったような気がして、
浜田は周りにはわからないように小さく、幸せそうに笑った。
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戦略。(花田?)

昼過ぎから降り出したのは雨だった。
雪になりきれなかった冷たい雨。


筋力トレーニングだけで終わった部活。
野球ができないのはつまらないが、
久しぶりの早い帰宅が嫌なはずもなく。


私服に着替えず、ユニフォーム姿のまま部室を飛び出そうとする田島を、
花井は少し声を荒げて呼び止めた。

「なに?」
「ちゃんと着替えろよ」

「えー?いいよ、俺ん家すぐだし、どーせ濡れるし」
「濡れるって…傘は?」

「忘れた!」

朝は降ってなかったじゃん!と俺は悪くないと言いたげな物言いに、
花井は小さくため息をついた。

「…送ってってやっから、着替えろ」

オフシーズンとはいえ、
チームの主軸に風邪を引かれて休まれるわけにはいかない。

花井の言葉と意図を受け取って、
田島は満面の笑みを浮かべた。








「じゃあな。次はちゃんと傘持ってこいよ」

本当にすぐそこの田島家に彼を送り届けるという役目を終えて、
花井は踵を返そうとする。

「寄ってけば?」

その腕を掴んで、
田島がニヤリと笑う。

「は?」

「夜には止むって。朝の天気予報で言ってたぞ」


そしたら、自転車で帰れるじゃん。と笑う田島。

「おまっ……天気予報みたんなら、なんで傘持ってこねーんだよ」



「そしたら、一緒に帰れねーじゃん」



悪びれも、恥ずかしげもなく投げられた言葉に、
花井は体温が上がるのを自覚する。

目を逸らして、
手で口元を覆えば、


たたみかけるように、


「寄ってくの?寄ってかねーの?」



「お邪魔します…」


そんなこと言われて帰れるかよっ。


花井の心の声を知ってか、知らずか、
田島は本当に嬉しそうに笑った。
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Snow Smile(浜泉)

埼玉にしては、珍しいことに雪が積もった。
雪国では大したことのない積雪も、慣れない町は麻痺しつつあった。


グラウンドは、積もった雪に少しの苛立ちと大きな楽しみに湧いていた。
練習をするために始めた雪かきも、今は雪合戦へと姿を変えている。
はしゃぐ西浦ナインの表情に、自然と百枝の表情も緩む。

「遊ぶのもいいけど、怪我したり風邪引いたら許さないからね!じゃあ、あとは各自で解散にするよ!」

「「はーい!お疲れっした!」」



正式な監督の許可も出て、雪合戦は更に白熱する。


行き交う雪玉の向こうに、自分を迎えにきた人物が見えて、
泉は近くにいた栄口に帰宅することを告げると、その場を離れた。


「もういいの?」
「だって寒ぃし。この雪じゃ自転車も無理だしな」

まだいいよ?と言いたげな浜田の視線に首を左右に振って、帰宅を促す。


「そ?じゃ、早く帰ろうか」

泉の手を取って、そのまま自分のジャケットのポケットに入れる。


「なっ…!やめろって!」


慌てて引き抜かれそうになる腕を押さえて、
浜田はヘラリと笑ってみせる。
その笑みにウッと言葉に詰まって、
泉は悔しそうに視線をそらした。


「冬が寒くてホントによかったなぁ」
「うっさい、バカ。あの歌と一緒にすんなよ」
「なんでだよ?」

憧れるじゃん。と続いた浜田の言葉に、
泉は大きくため息を吐いて。


「あれは別れの歌だろーが」




END
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共犯者(浜泉)

階段下の小さな勝負。
昼ご飯が賭けられた真剣勝負。


夏も本番。
自然と薄着になる女の子たち。
今年の流行はホットパンツとか言う短いのズボンのようで、
男としては少し残念に感じる部分もなきにしもあらず。

とはいえ、ミニスカートの支持率も下がっちゃいない。


「ピンクのフリル」
「水玉」
「青のボーダー」


階段下で話す振りをしながら、
浜田、梅原、梶の3名は、
軽い足取りで階段を昇る1人の女の子に狙いを定めて、
各々の予想を主張した。


3人のことは気に留めず、階段を駆けのぼる。
その無防備な様子にあやかって、
チラッと見上げたその先に……

「しゃっ!俺の勝ち!」
「「ちっ」」


水玉と言った浜田が小さくガッツポーズをする。

浜田の一人勝に2人は小さく舌打ちをすると、
先ほど購買で買ってきてパンとジュースを浜田に渡す。

3つになったパンとジュースをみて勝ち誇った笑みを浮かべた。


「おい、浜田…」
「ん?」


大漁、大漁。と思っていると、
梅原に服の裾を引っ張られ、示された方へ視線を向ける。


「い、泉……」


一部始終を見ていたのか、
あの大きな瞳に強い怒りの色をにじませている泉の姿。

硬派な彼にとっては、
少々衝撃な光景だったようで、


「…バカ浜田」


投げられた言葉は絶対零度。


それだけ言って、
その場を早足に去っていく泉。


「ま、待てよ!」


その背中を慌てて追い掛ける。


「このゲームは明日からねぇな」
「そーだな」

その場に取り残された梶と梅原は2人の背中を見送って、
小さくため息をついた。







「泉!」

待てって。と肩を掴んで彼を捕まえると、
再び軽蔑の視線が投げられる。

それを受けて、ウッと言葉に詰まった。


「……いつも、」
「え?」

「いつもあんなことしてんのかよ?」


「え…あ、えっと…昼飯賭ける時は」


後ろめたさが押し寄せて、口籠もってしまう。

ため息が聞こえて、さらに畏縮。



「…お前さ、あんなことしてどっかから苦情きたらどーすんの?」
「ごめん…」

「今度はチアの人も入るんだろ?それなのに援団できなくなってもいいわけ?」


普段とは違う冷ややかな声。
かなり怒っている証拠。
滅多に見たことのない姿だ。

返す言葉もない。



「…俺は、嫌だからなっ!」


「え?」


「俺は、テメェが悪く言われんのも、援団出来なくなるのも、許さねぇから!」


必要だと証明する言葉。
早口に投げられた言葉に、浜田は愛しさが込み上げた。


「……ごめん、ありがとう」

校内なので、抱き締めたい衝動を自制する。


「じゃあ、それ1コよこせ」

「は?」


代償は、手の中に3つあるパンとジュースのうちから1セット。



「今回だけなってやるよ、共犯者」


一瞬ほうけた浜田の表情を見て、
泉はニヤリと悪戯っぽく笑った。




END
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