スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

どんな動物だって獲物になるけど、人の肉とは比べものにならない

…というわけで、今日はこの本を読了しました



以前感想を書いた『襲撃者の夜』の前編です。
知らずに買って続編から読了してしまったので結末わかってしまってたんですが、それでもおもしろかった。充実した時間でした。

意外なことに、ケッチャム作品というのはホラーであり、ミステリーでありながら育児書なんだね。その事実に気付いて驚きました。
怖さを楽しみながら、一方で人生の肥やしになる学びもある。こういう作品を手軽に楽しめるっていうのは、ほんとにありがたいことだね。


地下室の箱』、『襲撃者の夜』に続く三作目の金子氏翻訳ケッチャム作品なんですが、この『オフシーズン』にはこれまで読了した作品にあったうるささ(説明の多さとか)がなくて、テンポ良く読めました。それに、他作品では目に付いた誤字もなかった(これは気付かなかっただけかも?)。
これは原文のムードの違いなのかな?私は英語が読めないので比較できないんですが、『オフシーズン』のような翻訳の方が読み易くてありがたいです。


それにしてもなんだか不思議な本でした。本のちょうど半ばくらいかな。それまで(食人族含む)登場人物の背景を描いていたストーリーが、ことの始まりから坂道を転げるように加速するんですよ。それでもう最後は落下するような感じでエンディングにぽーんって放り込まれるんです。
それがね、後味のいいストーリーではないけど爽快なんです。ページをめくる手が止まらないあの感覚。ケッチャム作品は麻薬みたいです。一度ハマったら止められない。
だけど、麻薬と圧倒的に違うことがある。それは味わうことで、これからの人生を何倍も豊かにできること。
本当に素晴らしい作家です。ピーターズが酒場でのリディアの行動に対して抱く見解。「犬を溺れさせるよう“育てた”連中が善人とは思えないんだよ」。私たち大人が後続の世代に大きな責任を持っていることを気付かせて、襟を正させてくれる。
ストーリーは元よりホラー小説でこれができてしまうことに感動しました。俗には教育に悪いとされているジャンルなのにね。本当に驚きます。

ケッチャムの後書きもおもしろかった。
私の予想が当たってたら、この“大人の事情”は『襲撃者の夜』でも発動してるんじゃないかな?
序盤のフラグや話の展開を見ると、ケッチャムとしてはその方向で話を進めてたっぽく思うんですよ。それが違ったので「あれ?」って思ったんですよね。
読者を楽しませるための演出だったのかもしれないけど、ケッチャム作品であそこまで演出してのラストとなると、ちょっと不自然な感じだよね。



話題:オススメ本

襲撃者の夜



読み終わりました〜。
いや〜あっと言う間だった!おもしろかった。

ケッチャム作品を『ロード・キル』→『地下室の箱』→『オンリー・チャイルド』と読んできましたが、金子氏と有沢氏では物語から受ける印象が全然違いますね。ケッチャム作品をどう見てるかの違いだろうな。

金子氏の翻訳ではケッチャム作品はサイコホラーの様相が強くなり、娯楽性も高いです。なので、わかりやすい死亡フラグに突っ込みながら楽しく読めます。金子氏はケッチャム作品をホラー映画に近いものとして見てるんでしょうね。
対して有沢氏の翻訳では、ケッチャムの描く残虐性の向こうにあるドラマが際立ち、読み進めるほど気分が重くなります。悲しくなり、深く考え込んでしまう。唯一『ロード・キル』のラストがテラカオスで娯楽的だったけど、それぐらいです。

大衆的なのは金子氏の翻訳なんですよね。楽しみながら読めるというのはホラー小説では長所だと思うし。
でも、ケッチャムの魅力を引き出せているのは有沢氏の翻訳だと思う。
前者ではS・キングの絶賛は納得できないけど、後者では納得できる。金子氏の翻訳だと、おもしろいけどそこまでになってしまうんですよ。名作とは違うの。

金子氏の翻訳では“ひとつの話題についてこんなに喋るキャンベル”の言葉が唐突で説教臭くなってしまう。キャンベルのセリフはケッチャム作品を通じて、根底に寝そべっているもので、そのことに読者が気付けないのはもったいない。
ケッチャムは私たちが目を背けたがる事実を、芸術家として目を背けずに描いてくれている。黒澤の言葉はきっとケッチャムにとっても種になった。ケッチャムが芽吹かせたものを、英語が読めない私たちにもより良い形で届けてほしい。
その意味で、ケッチャム作品において金子氏の翻訳はもったいないと思う。


ものすごいストーリーだけど、クレアが種を芽吹かせるシーンには感動した。いい本でした。

印象深かったのは作中で“邪悪”と称される人々が、それほど悪とは思えないこと。
確かにおぞましく、いやらしく、自分がされたら絶対に嫌だけど、民族の習慣としてはありえないことではないと思える。(そのようにケッチャムが書いてます)
宗教や教育で、何が善で何が悪かなんて変わるよね。善悪がないとは思わないけど、同一のものではあると思う。だから人はいつも善悪について葛藤するんだろうね。



話題:本の感想

キングは非現実を描いて現実を語るけど、

ケッチャムはとことん現実を描いて現実を語る。
だから前者はホラー作家で、後者はミステリー作家なのだ。



ニューハンプシャーで育ったアーサーとリディアは出会い、結婚し、子供を持った。
しかし順調だった結婚生活もいつしか変わっていく。子供のために、と離婚をせず耐えたリディアだが―…。
愛し、信じることの根本を歪められた子供たち。負の連鎖を描いたサスペンス。


良い本だし、サスペンスとしておもしろいし、夢中になって読めたけど、万人に勧められる本じゃないね。
ケッチャムは「何もそこまで描写しなくても…」と思うほど、克明に描写するので(精神面にしても肉体面にしても)、耐えられない人も多いと思う。
それでも読む価値があると思うけど、「これは厳しい」と思ったら、読むのをやめてもいい。仕方ない。
それぐらい人を選ぶ作家だ。でもそれが彼の個性だと思う。

キングは死の予兆を描くのが好きだけど、ケッチャムは死の余韻を描くのが好きだね。
読みかけの本や冷蔵庫の残り物(これは『ロード・キル』でも見られた)や、『ロード・キル』で殺された大学生のばらばらになった漫画本とか。
いくつか著書を読んでいくと、そんな特徴が見えてくるのも楽しい。

本書のラストで「女性が殺人を犯す理由」をテーマに取材する女性リポーターが登場するけれど、これはそのままケッチャムの一貫したテーマみたい。
『ロード・キル』でも『地下室の箱』でも、思い返してみれば同じテーマが描かれていた。


かなりきつい話だけど、良い。
最後のページの“皮むきした細い木の枝”。その意味を知る時、あなたは何を思うだろうか。

“いわゆる性根の腐った種”も、“なるべくして悪党になった男”も、私は今でもいないと信じているけど、実際はどうだろうな。



話題:オススメ本

ディズニーは絶対にケッチャムの小説を映画化しない



不倫相手との子供を身籠り、話し合いの末中絶を決意した女性・サラ。しかし彼女は、中絶手術のためクリニックへ向かう道すがら、何者かに誘拐されてしまう。目が覚めた時、彼女は箱の中にいた―…。
実話を元に描かれたサイコサスペンス。

S・キングが絶賛する作家、ということで手に取ってみました。
これと「ロード・キラー」も読んだのですが、これは翻訳のせいもあるかもしれないけど、思ったほどではなかったな。悪くはないけど、めちゃくちゃいい!ってわけでもなく、でもグロいのが平気な人なら、ラストまで充分楽しめると思う。
若干説明が多くてリズムが悪い。これが原文に忠実なのか、翻訳の時点で付け加えられているのかわからないけど、もったいないと感じた。でも的確に情景を描写しているし、必要な修飾でもある。

プリミアノ警部補はもっと出てくるかと思ったけど、そうでもなかった。

マッキャンとのやり取りが良かったな。中絶は彼らにとっては悪だけれど、そのために何をしてもいいのか?そういう葛藤は、思うより身近に溢れている。
私は中絶容認派だけれど、マッキャンは嫌いじゃないです。話し合うにはややこしい相手だけど、彼の考えは共感できるよ。

この作品は「ロード・キラー」に比べるとまだ、グロさは弱い。だからこそ、人にJ・ケッチャムを勧めるならこの本からだね。
私としては「ロード・キラー」の方が好きだけれど、ケッチャムの作風を手始めに知ってもらうならこの作品を勧める。
最後ああなるとは…。「ロード・キラー」のようにカオスな最後を期待していた身としては、拍子抜けだった。でもこっちの方が一般受けしそう。

ところでこの作品は映画『コード』とは関係ないんですかね?



原作というわけではなさそうだし(設定や描写などかなり違う)、どちらかがどちらかをオマージュしているとか?
ヴィンセント・ギャロの印象は薄かったのでスティーブンのビジョンは自分で作ったのですが、サラとキャスは映画の役者そのままのビジョンでした。
『コード』のジェニファー・ティリーはハマり役だったよ。怖かったw

おしまい。



話題:本の感想
prev next
カレンダー
<< 2024年04月 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最近のコメント
鮭レシピ
晒されてるよ⇒htt
鮭レシピ
こんなとこ書いても無
鮭レシピ
こんなとこ書いても無
最近
こんばんは。初めまし
最近
いきなりお邪魔します
おもしれぇwwww
管理人も更新しなくな
プロフィール
涙まゆ(旧:ナミ)さんのプロフィール
性 別 女性
誕生日 1月1日
系 統 キレイ目系
血液型 O型