美しい丘と書いてミオカ
それがきみの名前だった。




美しい丘というよりも、嵐の丘という感じだ。


ミオカ、きみは雨のなかをずぶ濡れで走った。


空に一番近い場所を笑いながら歩いた。


夜明けの光のなか、ちぎれるように踊った。


ぼくは世界を旅して、
きみにたくさんの景色を見せてあげよう。


おいしいものをたくさんたべて、
きみにその味をわけてあげよう。


おしゃれだってうんとして、
毎年新しいモードをきみに見せてあげよう。


今はできないけれど、いつか恋をしたら、
男の胸の痛みとときめきを教えてあげよう。


ミオカ、
これからはすべてをぼくたちふたりでするのだ。


ぼくよりずっと濃厚だったはずのきみの人生まで生きるのは、ちょっとむずかしいかもしれない。


けれど、ぼくはどこまでも生きる。


最後の心臓のひと打ちがとまるまで、
力を尽くして生きる。


それがきみといっしょにすごした
十三ヵ月の結論だ。





と、結論から始まったこの本に、
またまた泣かされました。




「美丘」石田衣良






美丘と太一の出会いは、大学の屋上だった。


美丘という名前とは対照的で、
まるで嵐のような性格の美丘。


最初はちょっと変わった女性くらいにしか思っていなかった太一は、徐々にその女性に心を奪われていく。


身近にいる綺麗で、頭も良くて、スタイルのよい女性ではなく、ちょっとトゲのある、アクの強い女性に魅かれていく太一。


二人は付き合うようになり、やがて体を交わすことになる。その後、美丘の口から発せられた言葉に、太一は動揺を隠せなかった…。





と、この物語は展開していきます。







感動しました。
ただ、徐々に感動したという方が適切かもしれません。前半の男女6人の絡みの部分と、後半の太一と美丘が付き合ってからの部分でかなり受け取ったイメージが違いました。
後半に入り、徐々に涙がこらえきれなくなります。




濃厚だけど、差し迫る、鬼気迫る感じが
ページをどんどんめくらせました。



命と命、心と心、身体と身体、運命と運命、弱さと弱さ、強さと強さ、交わり、無力さ、
内側から外側から揺さぶり、訴えかける、
読者に考える課題を与えてくれる本でした。