とても良い本に出会いました。

桜庭一樹さんの
「ほんとうの花を見せにきた」という本です。



厳しい掟の中で生きる、竹の匂いのする吸血鬼。
まとう空気は冷たく、鏡には映らない。
彼らの名は、バンブー。


あの日、人間のぼくの命を救ったのはバンブーの
ムスタァ。それ以来、同じくバンブーの洋治と3人で暮らしてきた。


これからも、ずっとずっと一緒にいようね。
ムスタァ、ぼくの、ぼくだけのバンブー。
彼らにとって特別な火、「ぼく」の物語。



そして、
片腕の少女のバンブーの「その後」の物語。



最後に、
バンブーたちの昔々、「はじまり」の物語。



3つのお話が収められています。




哀しい予感の漂う幸せほど残酷なものはありません。ここ最近読んだ本の中で一番酷い
(グロいという意味ではなく)。


一話目のあるシーンがあまりにつらくて、
思わず「あっ」と小さく叫びそうになりました。


そんな話なのにシリアス一色にはならなくて、
この本を色で例えるなら黒ではなく白です。


銀色の光を放つ、雪のような白。
悲しくって、きらきら眩しく美しい。


生きることが忘れることや失うことだけであるならそれは絶望的です。
しかしおそらく、それだけではない。


命の火は希望の火、消えるまで生きなくてはなりません。火が消えたら、平和の空でまた逢えるのです。


上手く表現できませんが、
温かく優しく強く切ない物語です。

私は、この本が大好きになりました。