まるでつぶれた果実のように、
赤黒く飛び散った血の中に、
横たわってる大切な友人だったその人は、
触れても既に温もりはない。
数時間前までは、あんなに暖かかったのに。
それは、まるで…
悪夢のような景色……。
…し。
…ろし?ひろし!!
「おーい!!!脳味噌野郎!!!!」
大きな声で目を覚ますと、
そこは毎日のように見ている教室と、
しっかりと形のある、友人(たけしくん)が手を腰に当てて、立っていた。
「大丈夫か?お前が居眠りなんて珍しいよな?うなされてたみたいだし、具合でも悪いのか?」
心配そうにこちらを除き混む瞳には、確かに光が宿っていた。
生きている…。
そうか、私は夢を見ていたに違いない。
「いえ、大丈夫です。」
「そっか!ならよかった。」
ニッコリと笑みを浮かべるその姿を見て、私もつられて微笑む。
「大丈夫なら次は移動教室だから、早く行こうぜ!卓郎と美香は先に行っちまったぞ!」
そう言って小走りで去ってしまう君の姿に、何故だか私の胸は、不安を覚え、
走って追いかけた。
「たけしくん!待ってください!!」
あれ?…ここは。学校じゃない。
さっきまで確かに教室だったはずなのに、一歩教室から外へ出たら、そこは…
見覚えのある洋館だった。
「たけしくん!!たけしくん!!!」
私は必死で追いかけた。
嫌な予感に胸がざわつく。
小走りで逃げ続けるたけしくんを、まるで鬼ごっこのように私は追いかけ続けたが、たけしくんを捕まえることはできず、
突き当たりにある扉を開き、
部屋の中に入ると、ようやくたけしくんが立ち止まる。
…あれ?この景色は。見たことが…
たけしくんは部屋の中央に置かれた椅子の上に登り、私の方を見下ろす。
不自然にぶら下がる縄は、輪っかに括られていた。
たけしくんが輪の中へと顔を近づける。
何をしようとしているか、私は知っていたが、
どういうわけか、体は動かず、声も出ず、只見ていることしかできなかった。
「なぁ、ひろし。」
やめてください!!!
「俺のせいでごめんな。」
やめてください!!!!!!!
「さよなら。」
そう言って微笑むと、彼は首をつった。
これは、悪夢なのでしょうか?
それとも、
現実?
「ひろし!大丈夫か!?」
再び目を覚ますと、
保健室の天井と、
心配そうに除き混む、卓郎くんと美香さんの姿が映った。
「ひろし?覚えてる?あなた体育の授業中に突然倒れたのよ?」
そうか、全て思い出した。
「ひろし、お前ちゃんと飯食ってるか?保健室の先生も心配してたぞ。」
これが、現実なんですね。
「はい。大丈夫です。私としたことが、みなさんに迷惑をかけてしまいましたね。すみません。とりあえずもう一時間休んで、次の授業には出ますよ。」
私は数ヵ月前、卓郎くん達に誘われ、町外れにある洋館へと、肝試しで忍び込み、そこで青い化け物に遭遇した。
己の頭脳や推理力を駆使し、なんとか卓郎くんと美香さんを助け出すことができた。
ですが、たけしくんを助け出すことはできなかった。
失ってしまった。誰よりも大切だった君を。
それ以来私は変わってしまった。
ふと、教室で君のいない席をぼんやりと見つめては、君が生きていた頃の記憶と、君が死んでしまったあの景色とが混ざりあって混乱した。
食事も喉を通らなかった。
体育の授業中に倒れることが増えた。
なぜ。君がいなくなってしまったことが、こんなに苦しい?
こんなに悲しい?
こんなに忘れられないのでしょうか?
胸の痛みで可笑しくなりそうだった。
私が今さまよっているのは、夢なのでしょうか?
それとも現実なのでしょうか?
もう、私にはわからなかった。
どちらにせよ、
君に二度と会えないのなら、
それはまるで、
一生、
覚めない悪夢のよう。
END.
*グダグタと意味不で申し訳ありません!!
たけしだけが死んでしまった世界線で、ひろしが自分の中にある謎の感情に苦しんでる様子が書きたかったんです。
.