前に「バラッド」のレビューを書いた時にクレしんの方も観たい、と書きましたがようやく観ました。
ていうかこれとオトナ帝国はガチ泣きしちゃうから困る(^ω^`)

* * *

野原一家はある夜、時代劇のような格好をした美しい“おねいさん”の夢を見る。
翌日、シロが庭に大きな穴を掘る。しんのすけはみさえにそれを埋めるように言われるが、シロは頑なに埋めるのを止める。
気になったしんのすけはさらに穴を掘り進め、やがて古い文箱を見つける。
中には「おらはてんしょうにねんにいるぞ」と読める汚い字とぶりぶりざえもんの描かれた手紙。
しんのすけはこんなものは埋めた覚えはないと訝しむが、「おひめさまはちょーびじん」という一文を見て、昨日見た夢の“おねいさん”を思い出す。
そしてしんのすけは彼女に思いを馳せ目を閉じる。
目を開けるとそこは夢に出てきた泉のほとりだった。
わけもわからず歩いていると、合戦の場に出くわしてしまう。
時代劇の撮影だと思ったしんのすけだが、偶然から一人の侍の命を救う。
井尻又兵衛というその侍は命を救われた恩から、しんのすけを自分たちの城の春日城へと招待する。
そこには夢に現れた“おねいさん”こと、春日城の姫君、廉姫がいた。
しんのすけは二人が想いを寄せあっていることに気がつくが、二人は身分の違いから想いを伝えられずにいた。

一方、現代に残されたみさえとひろしはしんのすけの行方不明で頭を悩ませていた。
警察の捜査も行き詰まる中、ひろしはしんのすけの残した手紙に記された「天正二年」について調べる。
そしてその結果、ひろしはしんのすけは戦国時代にタイムスリップしたのだと確信する。
否定するみさえを説得し自分たちも過去に行こうとするが、行き方がわからない。そこで一家はシロの掘った穴へと車を進める。
その頃しんのすけは、姫からの助言で家族へ手紙を書き、あの泉の前にそれを埋めに来ていた。
すると、突然車に乗ったひろしたちが現れ、一家は再会を果たす。
しかし今度は現代へ戻れない。結局一家はしばらく春日城に滞在することになった。

春日城の殿は未来にはどんな大国も滅び去ってしまうことをひろしから聞き、政略結婚で目先の安定をさせても意味がないと考え、廉姫との結婚を迫る大蔵井高虎の縁談を断る。
しかしそれが大蔵井が戦争を仕掛けてくる引き金となってしまったのだ。
ひろしはこのままでは自分たちも戦争に巻き込まれる、と危惧する。

シリーズ10作目となる作品。
戦術や武器、衣装などが細かく描写された本格的な時代劇となっている。

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(相変わらず長いあらすじだ…。)

クレヨンしんちゃんと言えど侮ってはいけません。
これはそれまでの作品よりも対象年齢を高めに設定して作られた作品のように感じました。
大人の恋愛や戦争、単なる子供向けアニメでは扱わないであろうテーマです。
しかしその分どの世代もすんなりこの映画の世界に入ることが出来ると思います。

まず、どのキャラクターも非常に良く出来ており自由に動いている印象を受けました。
野原一家はもちろん、又兵衛、廉姫、高虎、主要なキャラクターを取り巻く人々…。
どれもよく作られており、行動や表情の一つ一つにきちんと意味がありました。

又兵衛は「鬼の井尻」と呼ばれ敵からは恐れられる一方、「青空侍」とからかわれることから、戦に強くとも決して凶暴ではなく、温和で優しい性格であるとわかります。あだなだけでこれがわかるのはすごいです。
それ以外でも殿と話す際は真面目な顔をしたり、女性の前では顔をすぐ赤らめたりと様々な表情を見せ、人間味溢れるキャラクターとなっています。
また、廉姫も武家の娘としての強い覚悟を持ちながらその束縛に盲従するわけではなく、自分の信念を貫く強さを持つ女性として描かれています。
又兵衛に突然抱きついたり、彼の身を案じて矢面に飛び出すなど、大胆な一面もあり、ただの箱入り娘ではないことがわかります。
高虎もあらすじだけだとずるくて乱暴な男に見えますが、指揮の上手い、戦乱の世で力を伸ばしていくタイプの武将として描かれています。

あとは風景が非常にきれいです!!
夕陽に照らされる春日城、城から見下ろす風景、又兵衛の見上げる空…色がすごく綺麗です。
DVDだと特典で背景などをみることが出来るのでじっくり見たい方はどうぞ^^

ていうかひろし好きだ。
ひろしは名ゼリフが多すぎると思います。
今回もタイムスリップしようとし、みさえが「戻れなかったらどうするの」と言うのに対し、
「しんのすけのいない世界に未練なんてあるか!?」
と説得します。
いい父親過ぎだろ…!!ベストファーザーかあの足臭オヤジ!!
あと作中一番の名ゼリフは
「ぶつかっても保険おりねーぞ!!」
だと私は信じている←
みさえもしんのすけが斬られそうになった時に刀を手に取り、身を挺して我が子を守ったところがすごくかっこよかったです。母は強しだね!!
あとはしんのすけが高虎に向かって
「全部お前のせいだ!!」
と言うところが大好きです。
子供ながらに戦とは多くの命が失われるものだということ、この時代はそれは当たり前だというのがわかった上での正義感溢れる言葉です。

前作の「オトナ帝国」のヒットを受け、若干大人へのウケを狙ったような感じもしましたが、非常に素晴らしい作品です。
名シーン・名ゼリフが多いのはもちろん、小道具や人々の生活もきちんと描かれていて、時代劇としても楽しめます。
アニメだから、と躊躇せず様々な世代に観てもらいたい作品です。

それから、原作者の臼井儀人さんが亡くなられてもうしばらく経ちますが、非常に惜しい人を亡くしたと思います。
自分はアニメもマンガも小さい頃から触れていてこの作品が大好きだったので、残念でなりません。
心より哀悼の意を表します。

嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦(2002)
声の出演:矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治
監督:原恵一